【第31話】魔王の玉座
僕の怒りをぶつけられた
「オリスティン、宗家の掟ゆえにお前には何も話せなかったのだ」
「だったら、せめて母さんには行方をくらます理由を伝えておけば良かったじゃないか!」
「レイリアは知っているよ。彼女と結婚する前に我が宗家の掟を話したんだ」
「ひどいよ! 母さんには話して僕には黙っていたんだね!」
「幼いオリスティンには話せなかった。私も先代の
「オレクサンダー、よく来てくれた。さあ、中へ入ってくれ」
「さあ、オリスティンとその仲間たちも城に入るがよい」
どこからともなく
城内に入った僕は驚いた。城内は魔王の城ならではの暗くて陰湿な印象が全くない。むしろ、内部は明るくて上品な装飾が至る所に見られる。金持ちの邸宅に見られるような豪華さを感じさせない。もちろん、魔物といった存在もいない。
「魔王らしからぬ城ね」
僕の隣で周囲を見渡しながら歩いているアリサが感心しながら呟いた。僕はアリサの言葉を耳にしながらそれに反応することなく黙り込んでいた。
宗家の掟通りに暗黒騎士や魔王にならないといけないのなら、僕もいつかその順番が回ってくるということか······。でも、僕は絶対に暗黒騎士や魔王にはなりたくない! 世界中の人々を恐怖で支配するような人間になりたくないよ!
僕はうつむくと目を閉じた。
「オリスティン、どうしたの?」
アリサが心配そうに訊ねてきた。僕は目を開けた。
「アリサ、僕は暗黒騎士や魔王になりたくない」
僕は下を向いて歩きながら呟くように答えた。そんな僕の手をアリサが優しく握った。
「宗家の掟なんかに従うことはないわ。オリスティンは魔王を倒したら、いつものように好きな絵を描いて過ごせば良いのよ」
「
僕はアリサに顔を向けながら呟くように答えた。アリサは何も言わずに優しい笑みを浮かべながら頷いた。
階段を幾つか上がり、幾つもの扉を抜け、ようやく僕たちは
僕たちが大広間に入ると、玉座に座っていた老人が立ち上がった。老人は上品な白い絹の服を身にまとっており、白くて長い髭を生やしている。背筋はしっかり伸びており、こちらに向かって歩いてくる姿を見る限り老いを感じさせない。
「おお! わしの可愛い孫、オリスティンよ!」
「アリサ、アレンさん、大丈夫だよ」
僕は、僕を守ろうとしてくれた2人の仲間に優しい口調で声をかけた。
再び
なんて優しい顔なんだろう!
僕は祖父の顔を見つめながら、彼が魔王であるはずがない、と心の中で否定したのだった。
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