第41話 爵位継承……です
火災から半月が過ぎた頃、国内では異例となる女侯爵が生まれた。
そう、爵位を引き継いだのはリリィルアだ。
ただし、領地管理者、資産管理者を置き、成人するまでは資産を自由に使えない様に縛られた。
成人、つまり16歳になる年に公式の場で
爵位を名乗る事は許されているし生活に必要なお金は支払われるので、無いのは裁量権だけだった。
そして
本来の在学期間は12歳からの四年間、特例として10歳で入学するように命じられた。
それは婚約者と同じ学年にするという配慮だったのと、卒業後から成人までは実地を含めて引継ぎが行われる。
それは本人の意思とは関係のない所で物事が決まっていた。
当の本人は、精神的立ち直れず、碌に口もきけなくなっているというのにだ。
火災事故からリリィルアは教会に併設された小さな病院に預けられていた。
葬儀には形だけの参加となり、その際も虚ろな表情であったという。
それは精神的な病とされたが、リリィルア自身は祈りをささげる日々を送っていると言う。
そして、それは新たな不幸を呼び寄せた。
エレンラントがリリィルアに面会している時の事だ。
彼女が話せない事を良い事に保護者と名乗る者が現れる。
法的には本来爵位を継承する筈だった、いや、本人も先日まで継承するつもりだったジェイラス・ファーネスト。
そう、リリィルアの叔父だ。
叔父は先の事件を放火だと断定した。
その上で、犯人が誰かも分からない状態で、一人にさせれない。
だから、血筋が一番近い自分が保護者になるという主張だ。
教会としてはそれは有難い話だった。
仲が良い親戚であれば回復飲み込みがあるかもしれないと考えるからだ。
それに対してエレンは疑惑の目を向けた。
そもそも、叔父は半月も経っている上に、これまで一度も教会に足を運んだことは無い。
その上、エレンは放火の犯人を叔母を疑っていたからだ。
だが、その場では何も言えない。
それどころか逆にエレンに対して面会謝絶を突きつける。
それは叔父がエレンを疑っていたからだ。
その根拠に叔母の証言を取り上げた。
エレンの部下が屋敷の周りをうろついていた、それは犯行のタイミングを計った物だという主張だ。
勿論エレンは反論した。
「俺がそんな事をするハズはない!この俺を愚弄すると言うのか!」
「おや、なにも殿下がやったとは言っていません。ですが部下がやってないと誰が証明できるのです?」
問題は当時、警備が一人だった事だ。
警備していた当人は当時、消火を手伝わずに殿下の元に駆け付けたという。
手傷を負っていたのは誰と戦ったのか明白ではない。
もしかすると、侯爵と
だが、それを反論するにしても、その者は受けた毒により死んでしまっていた。
結果、反論も出来ず、思わず暴力を振るいそうになる所を我慢するエレンだった。
その後、叔父の娘、オリアーナがエレンに接触してきた。
「婚約者と会えなくなるのは辛いですよね。安心してください私は味方です。こっそり会える様に手配します、つきましては─」
叔父の屋敷は駐屯地と同じ町にあった。
日に一度、娘が駐屯地に足を運び、会えそうな時間を教えると言う。
その際、30分でもいいからエレンとの交流の場が欲しいという交換条件だった。
叔父の屋敷に引き取られてからリリィルアの生活は悪化した。
初日ですら食事は一人で食べる事になっていた。
主な理由は、リリィルアが火事の不幸から立ち直れていない事が上げられた。
暗い、話さない、辛気臭い、飯が不味くなると言われ、世話をメイド一人に押し付ける。
普段着、着替え、ドレスと言った何着もの贈り物が来た事があった。
それは、3人の王子や陛下、ルルゥルアやレニーノが競う様に送った物だった。
すぐにクローゼットはいっぱいになると思われたが、後日、アレクが様子を見に行くと、ドレスは1着しか持っていなかった。
エレンがメイド経由で聞いた話では、そもそもリリィルアに渡されておらず、叔母に装飾品は自分らの物に、ドレスは売り払われていた。
そして、そのお金で娘のドレスや装飾品を買っていると言う。
メイドの情報はさらに続いた。
領地経営学の教育や淑女教育と称して、虐待が始まったという。
「貴女は最早、立派な貴族なのですよ?そんな事でファーネスト家に泥を掛けるつもりですか!」
学園の領地経営者コースの卒業者ですら難解な問題を解かせては、間違えていると鞭打った。
通常の計算であれば尋常じゃない速さで解いてしまう為、わざわざ取り寄せたらしい。
娘は娘でリリィルアの部屋に落としていったブローチを、盗まれたと騒ぎ、それを聞いた叔母が見つけては体罰を与えてた。当然ながらそんな日は食事抜きだ。
さらに、貴族間ではいつの間にか、リリィルアについての悪い噂が広まり始めていた。
「あの年齢で、既に肉体関係を持っている」とか「複数の王子を手玉に取って喜んでる」と言った物。
挙句に「花街で客引きをしていた」とい噂まであった。
爵位を持っているからと上から目線、親戚を奴隷の様に扱う、アクセサリーを奪った等、噂は留まる事を知らなかった。
それは、特例で爵位を継承した者に対する嫉妬も含まれていただろう。
何にせよ、貴族の間では、悪目立ちしすぎていた事が問題だった。
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