第20話 次女 ウエーブヘアー×巨乳×家庭的 眞由美


 一〇年前、公園のジャングルジムの下で南城(なんじょう)歩人(あゆと)が膝から血を流しながら泣きじゃくっていた。


 不幸な事に周囲に他の子や大人の姿は無い。

 膝の痛み、というよりも怪我をしたという事実と誰もいない不安感で、もう随分前から泣き叫んでいる。

 そこへ……


「あーくん」


 フワフワのウエーブヘアーを揺らし、優しそうな女の子が慌てて駆け寄ってくる。

 歩人の四つ上の姉、南城眞由美だ。

 ランドセルを背負っているところから小学校帰りの途中である事がわかる。


「どうしたのあーくん? おひざケガしたの?」

「゙あっ~~~~!!」


 泣き叫びながら首を縦に振る弟の背後、ジャングルジムの頂上を見上げる。


「もしかして落ちちゃった?」


 涙を流しながら歩人はまた頷く。


「イダイよおでぇ~ぢゃ~~ん!!!」


 眞由美は歩人の頭を撫でながら右手をキュッと握った。


「そっか、いっぱい痛い痛いしちゃったね、じゃ、お姉ちゃんとおウチにもどろっか、お薬ぬってあげるね」


 歩人が小さく「うん」と言うと眞由美は歩人を抱き上げて立たせると手は握り合ったまま、


「おんぶする?」


 と尋ねる。

 それに対して歩人が首を横に振ると、眞由美はまた可愛く笑って頭を撫でながら、


「あーくんおとこの子だもんね、えらいね」


 と言った。

 そのまま手は握りあったままに眞由美は歩人の手を引いて帰路に着く。

 眞由美は姉である。

 まだ小学三年生だ。

 にも関わらず、歩人は母親に抱かれた赤子同然の落ち着きを取り戻し、膝のケガなど忘れて、もう笑っていた。

 幼稚園の頃から、歩人にとって眞由美は小さなお母さんだった。





「朝だよ、あーくん起きて」


 優しく揺らされながら起こされる歩人は違和感を感じた。


「……眞由姉?」


 違和感はベッドにあった。

 いつも必ずと言ってよいほどいた蓮華がいないのだ。


「朝御飯はもうできてるから早く起きてね」


 長いウエーブヘアーとオレンジ色のエプロンをなびかせくるりと回り、ドアに向かう眞由美に歩人が「蓮姉は?」と尋ねた。


「ああ、蓮華姉さんなら自分の部屋で寝てるわ」


 振り返って応える眞由美に歩人がポカンと口を開けた。


「へっ? 蓮姉が自分の部屋で、なんでまた……」

「にぎゃああああ!!」

「ひええええええ!!」


 歩人の言葉は二つの悲鳴に掻き消され、思わず隣の壁に目を向ける。


「い、今のは?」


 歩人の反応に眞由美はフフっと笑う。


「実は昨日蓮華(れんげ)姉さんがだいぶ酔ってるみたいだったから麻香麻(あさがお)ちゃんをあーくんだって言って渡しちゃった」

「渡しちゃったって、身代わりかよ……」


 やや子供っぽい表情を作る姉に呆れながら、歩人はそんな眞由美に見入ってしまう。


 正直に言えば、歩人は眞由美の事をかなり慕っている。

 憧れていると言ってもよかった。

 恋とは違うが、五人もいる姉達に無理矢理順位をつければ、眞由美が一番になるだろう。


 蓮華ほどではないが、歩人よりもやや背が高く、当然に目線もやや上に位置する眞由美は、三人の妹達よりも、特に歩人には強いお母さん口調で接してくる。


 そんな眞由美は一九歳ながらに十分過ぎるほど母性を感じさせる顔をしている。

 蓮華同様、美人度なら日本トップレベルの眞由美だが、蓮華とはタイプが異なり、蓮華が野性味のような荒々しい美しさを持つのに対し、眞由美のは太陽のように優しく、温和な印象を与えるタイプの美しさだった。


 背丈同様、蓮華には劣るが、胸はかなり大きく、お尻は蓮華よりもやや大きな安産型である。


 フワフワのウエーブヘアーは手遊びすると大変気持ちい。


 そして何よりも蓮華と違い、その肉感的な体を使ってエッチな事をしてこないのが歩人にとっては安心できた。


 とは言っても、眞由美にその意志が無くともスタイルがスタイルだけに、抱きしめられたり、膝枕をされたり、または服のシワや襟(えり)を直すといった姉弟のスキンシップだけでも歩人には十分過ぎる刺激が伝わっていたりする。


 とにかく、昔から美人でスタイルが良くて、優しくて温かみのある眞由美に歩人は憧れていた。


 眞由美が部屋を出ると、歩人はベッドから抜け出した。

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