第2話 パーティーを裏切る勇者



 驚きを通り越して、呆れも通り越し一周して驚愕する仲間達は納得するはずも無い。


 剣士が叫ぶ「バッカ野郎、外道はてめーだボケ! どう見たって女欲しさに人類を裏切った超絶外道野郎だろ!!」


「ちっがぁああう!! どう見ても暴漢三人に全裸にされた可憐な美少女を助けるヒーローの図だろうが!!」

「だいいち、全世界の美少女の味方って、その魔王の軍隊のせいで今まで美少女を含めてどれだけの人間が死んだと思ってるんだ!?」


 と魔法使いが叫ぶがレイドは握り拳を作り、


「死んだ美少女より今を生きているナマの美少女のほうが大事なんだよ!!」


 それに今度は僧侶が、


「そんな、見損ないましたよ、レイドさんはいつもはバカでスケベだけどいざという時は誰よりも命をかけて人類の為に戦ってきたじゃないですか!!」


「てめえは馬鹿か!? どうやら今まで一緒に旅をしてきてまだ俺の本質に気付いて無いみたいだな!」


 レイドは声を大にして言い放つ。


「いいか! 俺は常に美女と美少女の味方で今までは美少女達にいいとこ見せたいとか美女からのお礼があったから頑張ってただけなんだよ!!」


 剣士がまた叫ぶ。


「だからそうやって点稼ぎしてきたならそいつの首持って帰ればお前は大英雄、モテモテハーレム作り放題だろ!」


「数だけいたって意味ねえよ! だけどこいつは違う! こいつの、魔王の乳が、尻が、フトモモが、顔が、つま先から頭のてっぺんまで残らず俺の直球ど真ん中のストライクゾーン貫いてんだよ!!


 ぶっちゃけ俺がいままで会った女の中でブッチギリ一位で俺好み過ぎる!!!

 俺はこいつを嫁にするんだ!!」

 言った。


 魔王の目の前で……今まで艱難(かんなん)辛苦(しんく)を乗り越えてきた仲間達の目の前で、勇者、レイド・ラーシュカフは鬼気迫る顔で完膚なきまでに言い切った。


 魔王エルバディオスは呆気に取られ、これは死ぬ直前の幻か何かかと疑った。

 そしてレイド達の仲間は表情を改め、武器を構える。


「ああそうかい、いつもバカだバカだとは思ってたけどよ、まさかここまでバカだとは思ってもみなかったぜ……」


「でも、いくらお前でも魔王と戦ったフラフラの状態で、僕らに勝てると思っているの?」


「三対一ですよ、おとなしく言う事を聞いてもらいましょう」


 剣士、魔法使い、僧侶の三人が真剣な面持ちで睨むと、だがレイドは少しも慌てる事無く、むしろバカにしたように笑い始める。


「くっくっくっ、フラフラの状態? 三対一で勝てるかって? お前らさあ、もう俺の力を忘れたのか?」


 余裕の笑みを見せて、レイドは振り向くと魔王エルバディオスの全裸姿を凝視した。

 途端に、レイドの傷口から出血が止まり、浅い擦り傷が薄れていく。

 三人の仲間達はハタとして思い出し慌てた。


「マズ!」

「さっさと片付けるぞ!」

「だ、だけどもう……」


 三人が走り出すと、レイドはエルバディオスの肩を掴んだ。


「命を助ける代金だ」

「何?」


 次の瞬間、レイドはエルバディオスの豊かな谷間に顔をうずめた。


「きき、貴様何をやって……やっ……」


 感じた事の無い程強い羞恥と感覚に頬を染めて、エルバディオスは声を漏らし、同時に一ケタしか残っていなかったレイドのMPが一気に回復した。


 迸る力の流れは質量となって周囲の瓦礫すら吹き飛ばす。


 全身から闘気を漲(みなぎ)らせ、レイドはすぐさま立ち上がり、振り返りざまに横薙ぎの一閃を放った。


 光が吼える。

 光が猛る。


 レイドの剣から開放された光の渦は家の一軒や二軒をまるごと飲み込まんばかりの巨大さでかつての仲間達に襲い掛かる。


「ちょ待! お前!!」

「これはいくらなんでも……」

「無理ですよぉおおおお!!」


 轟く爆音、響き渡る破壊の証、広がる余波を背にして、レイドはエルバディオスを小脇に抱えて魔王城の最上階から飛び出した。


 走り出す直前に最大級の肉体強化呪文を使用したレイドの肉体は空を飛んでいると錯覚するほどの跳躍を可能にした。


 空を跳びながら、エルバディオスは瓦解する自分の城の最上階を見て、口をあんぐりと開けたまましばらく思考が止まってから、


「って、いいのか貴様!? あいつら死んだかもしれないぞ!」


 だがレイドはあっけらかんとした態度で、


「大丈夫だって、あの程度で死ぬほどヤワじゃねえし、俺はおにゃのこ以外は死のうと苦しもうと興味ねえからな」


 と返した。


「貴様、それでも勇者か!?」

「当然だ」


 この数分間に起こった事を思い返しながら、魔王エルバディオスは唖然として、ただ一つの事を考えていた。


(これって夢だよね?)

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電撃オンラインにインタビューを載せてもらいました。

https://dengekionline.com/articles/127533/

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