第12話―リア充は遊びに多くを費やする5―
近年はアレルギー疾患を抱えている人は過去と比較して増えていること。
(もしかして変に気遣わないよう返答?
いや考えすぎだな。さて冷蔵庫と相談でもするか)
まず何があるかで献立を決めよう。
期待していないといえば嘘になるが、さすがに野菜ぐらいはあるだろうと楽観してした。
だがそれは手料理を常に意識している人種での常識であることを知る。
「……おいおい、マジかよ。
こんな寂しい冷蔵庫があるものなのかよ」
悲惨だった。
確認しようとして開けてみれば中は空っぽだったのだ。なにを置いているかはジュースとアイス、それと何故かエンドウ豆である。
野菜類と肉類がないことに俺は軽くショックを受けた。とはいえ長く凍りつくほどの衝撃ではなく立ち直るのは早い。
こんなのリーマンショックやコロナショックと比べれば大したことじゃない。逆に言えばそれと比較したくなるほど衝撃があった。
とはいえ経済には詳しくないからリーマンショックというのを無知であるけど。
「数は少ないけど……ウインナーと卵だけあるからチャーハンにするか」
おそらく炊事をまったくしない須津の冷蔵庫でそれがあることは焼くだけという理由で置いてあったのだろう。
全部を使うのを俺でもためらうけど二人分ならそこまで使わないだろうから怒らないだろう。
――数分後が経つと須津が居室に入ってきた。
「ほら湯上りのお茶をテーブルに置いてあるぞ」
「おぉー、気が利くじゃん。サンキューありがたく飲ませてもらおうかな」
入念に掃除してやったテーブルの前で歩み向かい椅子を引き腰を下ろす。氷をわずかばかりにいれた茶を須津は口に運んで飲む。
「プゥハァー、かんろ、かんろ」
甘露、と二回もセリフされた須津は世辞とかではなく心からそう思ったことを口にした。そんなふうに感じた。
そのあとリモコンを手にしてテレビをつけると奴は肩越しから振り返った。
「ねぇ、それでなにを作るわけ?」
「チャーハン」
「チャーハンか。インスタントなら食べたこと何度もあるけど手作りはないかも」
「はは、つまらない冗談を」
「いやいや、ホントーに食べてない。たぶん」
「……そ、そうか。なんか悪いな」
あっけらかんとした態度でいるけど聞いていると哀れむ気持ちが起きる。
気を取り直し、ウインナーを食べやすいサイズに切って油を注いだフライパンに炒める。
(そのあとは溶いた卵で加熱をしてと……)
「ねぇ、卵を先に入れるのが王道なの?」
須津がいるダイニングテーブルからでも調理している台所が見える位置と距離にある。
そのためテレビ観ながら時々とチラ見していたんだろう。
「ああ、ご飯と一緒にいれれば固まってしまうし
まず溶き卵を温めてからのご飯」
よく一緒に入れて失敗した経験がある。
思い出を懐かしんでいると卵は十分に温めたところで俺は炊いたばかりのご飯をサラダ油で少量かけてコーティングさせる。
これでムラなく混ぜる。
そのあと米が一粒一粒とくっつきベタベタと固まってしまう。パラパラするためには水をちょっと垂らし入れる。するとデンプンで
ご飯をフライパンに入れせてと。ここからは時間との勝負。にはならない。
家庭のチャーハンでは中華店のような炒め方ができないので強火にせず弱火で時間をかけて炒めていく。そのあいだにエンドウ豆も少々と投入して食材として炒める。
加熱をして炒めたと判断したら火を止めて塩コショウをかける。塩コショウは最後に作る過程ではいいと有名な料理人の本でそう書かれていた。
さて、これでチャーハンの完成である。
「よし、夕食にするぞ。
やや味が薄いかもしれないがチャーハンの出来上がりだ!」
「わぁー、待ってました」
オーバーなり反応ではあったが作った側からすれば、この大げさな喜びの方が達成感が湧いてしまうものらしい。
須津は食器を運んできて俺はそれを受け取りチャーハンを盛ると、またも渡す。
そうした連携を取ると交友関係が深めているなと不思議と思うところ。
ではコップとチャーハンレンゲを持ってテーブルに座る。対面するような位置に。
須津は両手を合わせ目を閉じる。
「いただきます」
「ッ――!?」
心に響くものがあった。俺が試行錯誤を経て自信作で作った料理。テーブルに並べて
食べるために手を合わせて食事の前にする
「おやおや、もしかしなくとも泣いているのかな。意外と涙もろいんだよねキミって」
「はぁっ!?違うからな。いただきます!」
クスクスと笑われ心を読まれたことが恥ずかしくて威勢よく返すが軽くあしらわれる程度。
どうやっても照れ隠しと思われてしまう。そう思うなら思っておけと開き直るように俺は茶碗をむさぼるように食べるのだった。
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