CIRCLE

@asas4869

第1話

〇パーティルーム


  部屋に入って来る、秀人、凛、弘毅、忍、健志


秀人「へえ、思ったより広いな」


凛「本当。結構おしゃれだし」


弘毅「掃除もちゃんとされてるみたいだし、やっぱり借りてよかったな」


忍「本当ね。これでいくらなんだっけ?」


健志「1時間1000円。今回は夜の7時から明日の朝9時まで借りてるから、合計で1万4000円」


弘毅「それに7人分の食べ物と酒代を合わせて2万弱ぐらいか。7人で割れば3000円行かないぐらいだから、居酒屋よりも全然安いな」


凛「これからは居酒屋じゃなくて、こうやってパーティルームをレンタルしようよ」


秀人「確かにその方がいいかもな。それに、二次会で毎回琴子の家借りるのも申し訳ないし」


忍「あの子、優しいから断らないのよね」


健志「まあそうだけど、琴子は別に迷惑じゃないから断ってないだけだと思うけど」


忍「それはもちろん分かってるけど、こっちとしては多少気が引けるじゃない?」


健志「まあ、それもそうだな」


秀人「琴子ちゃん家って、広くて居心地いいから、ついつい甘えちゃうんだよね」


凛「あー分かる。ベッドとかふかふかだもん。あれ絶対高いよ」


秀人「とても俺たち普通の大学生には買える代物じゃないよ」


凛「さすが大病院の娘って感じだよね」


  弘毅、奥の扉を開ける


弘毅「みんな、こっちに小さい部屋があるから、荷物はここに入れとこうか」


忍「そうだね」


秀人「了解。(凛に)持つよ」


凛「(笑顔で)ありがと」


  凛、秀人に鞄を預ける


  一同、奥の部屋に荷物を入れる


秀人「さて、じゃあちょっとゆっくりしますか」


弘毅「そうだな」


健志「あ、じゃあ俺も」


  床に座る秀人、弘毅、健志


忍「じゃあ私、ご飯の準備しとくね。多分、桐江ももうすぐ来るだろうし」


弘毅「ああ、ありがとう」


凛「あ、じゃあ私も手伝うよ」


忍「ありがと」


  凛、忍、奥のキッチンへと消える


秀人「忍ちゃんの料理、美味いんだよなあ。いいよな、弘毅は。毎日あんなの食べられて」


弘毅「夫婦じゃないんだから、毎日なわけないだろ


秀人「でも定期的には食べてるだろ?」


弘毅「まあ、週三ぐらいは」


秀人「羨ましいねえ」


弘毅「凛だって料理得意じゃないか」


秀人「まあそうだけど、忍ちゃんほどじゃないよ。(健志に)ちゃんは料理できたっけ?」


健志「あいつは全然。家で飯食うときはいつも俺が作ってる」


弘毅「そうか。健志は自炊してるもんな」


健志「たいしたことないよ。簡単なものしか作れないし」


秀人「へえ。まあでも、琴子ちゃんの料理も、に比べたらマシだろ?」


健志「当たり前だろ」


秀人「覚えてるか? この前の旅行で桐江が作ったカレー。あれは本当に――」


健志「見た目は美味そうなんだけどな」


秀人「そうそう! カレーなんて誰が作っても大体似たような味になるのに、どうやったらあそこまで不味く作れるのか――」


弘毅「おい。あんまりそういう陰口みたいなのは――」


秀人「別に陰口じゃないよ。酷い味だったなってだけの話。お前もそう思うだろ?」


弘毅「……ま、まあ、確かにあの味は……」


秀人「ほら!」


女の声「悪かったわね、料理が下手で」


  驚く秀人、健志、弘毅


  部屋に入って来る桐江


弘毅「桐江!」


桐江「鍵開いてたわよ。不用心ね」


健志「桐江、さっきの話、どこまで聞いてた?」


桐江「全部聞いてた。私のカレーがゲロ吐くほど不味かったってところから全部」


秀人「そこまで言ってないじゃないですかあ、お嬢さん」


  桐江、秀人を無視する


桐江「荷物はこっちでいいの?」


弘毅「うん」


  桐江、奥の部屋に荷物を入れる


桐江「で? 誰のカレーがクソ不味いって?」


  桐江、床に座る


秀人「やだなあ。クソ不味いなんて……」


健志「そうそう。そんな汚い言葉使わない方が。せっかくの美人が台無し」


桐江「はいはい。別に怒ってるわけじゃないから。自分に料理の才能がないのは認めてる。だから私は、他の武器で勝負するの」


秀人「素晴らしいじゃないですか! 桐江さんほどの美人なら、料理ぐらいできなくたって関係ない! どんな男も放っておきませんよ!」


桐江「分かったから、もう普通に喋ってくれる?」


秀人「分かりました」


弘毅「桐江、琴子は?」


桐江「え? まだ来てないの? 私知らないわよ」


弘毅「そうか。迷ったりしてないといいけど」


  と、健志のスマホが鳴る


健志「あ、琴子からだ。もうすぐ着くって」


弘毅「そうか。よかった」


秀人「よかったな、健志。愛しの彼女がもうすぐご到着だぞ」


健志「茶化すなよ」


秀人「へへへ」


桐江「二人って高校からだっけ?」


健志「うん。高2から付き合ってるから、もう五年かな」


桐江「五年も付き合って未だにラブラブだもんね。羨ましい」


秀人「本当だよ」


桐江「あんただって、凛と仲良いじゃない」


秀人「まあね」


桐江「弘毅と忍も付き合ってだいぶ経つし、このサークルで独り身なの私だけよ?」


弘毅「まあまあ。健志は、琴子ちゃんと結婚とか考えてんの?」


健志「(照れながら)ま、まあな」


秀人「え! そうなの!?」


桐江「秀人うるさい。ちょっと黙ってて」


秀人「すいません」


弘毅「お互いの親も知ってるのか?」


健志「うん。この前向こうの親に会って来た」


桐江「へえ、すごいじゃん」


秀人「どんな話したの?」


健志「別に何てことないよ。食事をご馳走になって、どれくらい付き合ってるんだとか、将来はどうするつもりなんだとか、いろいろ聞かれて」


秀人「へえ」


桐江「それで、なんて答えたの?」


健志「もちろん、全部正直に、将来は医者になって、琴子さんと結婚したいと思ってますって」


桐江「そこまで言ったんだ!」


秀人「それで? 向こうの親は?」


健志「まあ……是非よろしくって」


桐江「すごいじゃん!」


秀人「何だよー。いつの間にそんなに進んでたんだよー」


弘毅「健志、よかったな」


健志「(嬉しそうに)ああ」


秀人「まあでも、当然っちゃ当然だよな。健志は顔はイケメンだし、頭も良くて医学部医学科にトップ合格。そんで将来は医者だぜ? 琴子ちゃんの両親からしたら、こんな優良物件、他にないよ」


健志「(照れながら)やめろよ」


弘毅「じゃあ、将来は琴子ちゃんのとこの病院に?」


健志「まあ、そこまではっきりとは言われなかったけど、うちで面倒見てやるとは言ってもらえたよ」


秀人「それはっきり言われてんじゃん!」


弘毅「おめでとう。幼馴染として嬉しいよ」


健志「ありがとう」


桐江「そっか。三人って幼馴染なんだっけ」


秀人「おう! 幼稚園から一緒なんだぜ!」


  健志、弘毅と肩を組む秀人


桐江「幼稚園から一緒なのに、何であんただけそんなに馬鹿になっちゃったんだろうね」


秀人「おい! 誰が馬鹿だよ! 言っとくけど、成績はお前と変わんないからな!」


桐江「うっさい。それよりさ、三人の昔の話聞かせてよ」


健志「え?」


弘毅「昔の話かあ」


秀人「いいじゃんいいじゃん! まだお前らに話してない面白い話がいっぱいあるんだよ! なんせ俺たち、二十年の付き合いだからな!」


桐江「へえ、面白そう! 聞かせて聞かせて!」


  と、インターホンが鳴る


弘毅「あ、誰か来た」


桐江「琴子じゃない?」


秀人「開いてるよー!」


  琴子、部屋に入って来る


琴子「ごめんね、遅れちゃって」


秀人「全然。俺らも今来たとこ」


弘毅「荷物はあっちの部屋にみんな置いてるよ」


琴子「ありがとう」


  琴子、奥の部屋に荷物を入れる


健志「今日も病院寄ってたのか?」


琴子「うん」


健志「お母さん、まだ体調良くないの?」


琴子「うん。昨日よりはちょっとマシになったんだけど」


健志「そっか……」


弘毅「琴子ちゃんのお母さん、体調良くないの?」


琴子「……うん。何ヶ月か前から入院してて」


桐江「入院?」


秀人「結構重いの?」


琴子「う、うん……。まあ……。この前は意識失くしちゃって」


  驚く弘毅、秀人、桐江


琴子「あ、でもすぐに戻ったんだよ! だけど、あんまり油断はしないようにって」


健志「(複雑な表情)……」


弘毅「……そうか。早く良くなるといいな」


琴子「ありがとう」


桐江「今は琴子んとこの病院にいるの?」


琴子「うん。その方がお父さんもすぐ対応できるからって」


秀人「まあ、お父さん院長さんだもんね」


琴子「ごめんね、こんな話。ほら、もっと明るい話しようよ! さっき何を話してたの?」


桐江「ああ。この三人、幼馴染でしょ? だから、私たちが知らない昔の話を教えてもらおうって話してたの」


琴子「へえ、面白そう。私も聞きたい」


秀人「そうだなあ。やっぱり話題に事欠かないのは健志だろうな」


健志「え、俺?」


秀人「そりゃそうだろ。今でこそ琴子ちゃん一筋だけどさ、高校までは女を取っ替え引っ替え――」


健志「おい、やめろよ、琴子の前で」


琴子「別にいいよ。昔の話だもん」


桐江「心の広い彼女だねえ」


琴子「そう? 若気の至りじゃないけど、そういうのって誰にでもあるじゃない」


  一同、感心の声をあげる


健志「俺、お前のこと惚れ直した気がする」


秀人「何だよ、気持ち悪いな」


健志「何でだよ!」


弘毅「でも、健志が昔からモテてたのは事実だよな」


健志「何だよ、弘毅まで」


弘毅「いや、別に茶化してるわけじゃなくてさ、素直に認めてるんだよ。健志は容姿はもちろんだけど、勉強も運動も得意だし、でもそれは、分かりにくいけど、見えないところでちゃんと努力してるからなんだよ。じゃないと、この大学の医学部医学科に現役合格なんてなかなかできるもんじゃないよ」


健志「な、何か、そんなに真っ直ぐに褒められると、ちょっと照れるな」


秀人「まあ要は、健志はこれまでたくさんの女の子を泣かせてきたけど、根は真面目で、今ではすっかり丸くなって琴子ちゃんとべったりってこと」


桐江「なるほどね」


弘毅「でもモテると言えば、桐江だってそうだろ?」


桐江「え? 私?」


琴子「そうだよ。桐江ちゃん、めちゃくちゃ美人だし、しょっちゅう男の子から告白されてるじゃん」


桐江「別にそんなことは……」


秀人「しかも桐江のとこは、妹もめちゃくちゃ美人なんだよな」


健志「ああ、そうそう。美人姉妹なんだよな」


桐江「あれ? 会ったことあったっけ?」


弘毅「ほら、去年の学園祭に遊びに来てただろ。えっと名前は……」


秀人「綾音ちゃん!」


弘毅「そうそう! 綾音ちゃんだ」


秀人「確か今高三だっけ?」


桐江「よく覚えてるね」


秀人「俺、美人のことは忘れないんだよ」


桐江「はいはい。でも残念ながら、あの子彼氏いるよ」


秀人「えーそうなの?」


桐江「うん。同級生の男の子。中学からって言ってたから、結構長いんじゃないかな」


秀人「そうなんだ。残念……」


桐江「いや、あんたには凛がいるでしょ」


秀人「冗談だよ」


桐江「あ、そういえば綾音、最近ずっと体調悪いから、今日病院行くって言ってたな」


弘毅「そうなの?」


桐江「うん。まあ、ただの夏風邪だとは思うんだけど」


弘毅「そっか」


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