妻とおつまみと作者 ~グルメルポシリーズPART3~

小林勤務

第1話 Más vale pájaro en mano que cien volando

 異世界ファンタジー


 俗に「なーろっぱ」と呼ばれる、剣と魔法が当たり前に存在する中世ヨーロッパ風の世界を舞台にした、日本人風の主人公たちの、愛と笑いのファンタジー。

 WEB小説と言えば、このジャンルと定義されるほど人気がある。


 では、「なーろっぱ」とはどういう意味か。

 それは――


 カクヨムと同じWEB小説サイト、「小説家になろう」で産まれたジャンルという意味だ。


 なろう小説+ヨーロッパ=なーろっぱ。


 私(作者)も最近、この言葉を知った。普段、異世界ファンタジーは読まないし、カクヨムに登録してから初めて知ったジャンルでもある。


 ここで、ふと疑問が。


「なーろっぱ」はあるけど、「かくよーろっぱ」はない。


 つまり、カクヨム+ヨーロッパ=かくよーろっぱ。この世界はない。

 ここで、一つ定義しよう。「かくよーろっぱ」とは、どのような世界か……



 ここはとある異世界の片隅――



 デスクを前に、書類に追われる一人の日本人風の主人公がいる。デスクも日本風の仕事机。そのデスクが置かれた場所も、日本風のオフィスであり、その日本風のオフィスが居を構える場所も日本風のオフィス街。


「ああ、書類が山積みで終わらない。やべ、報告書が誤字だらけだ。多分、やり直しだから、また修正しないと。あ! しまった! あの企画書の稟議書をまだ提出してなかった。急いで申請しないと。でも、どうやって言い訳しようか。……まあ、いいや、どっちにしろ遅れている。うわっ、もう2時かよ。まだ昼飯も食べてない。これから行きたくもない、ゴルフに付き合わなくちゃならない。ん? なんでオフィスで書類作ってるのに、しかもこんな昼時からゴルフなんだ? いかんいかん、考えてる時間はない。適当に昼飯食べて、急いで先発しているチームに追いつかないと。ラーメン、いや、カレーでいいや。ゴルフ場の飯はどうせ定番のカレーだし。がふがふがふがふ、ぶはっ! カレーを急いで食べて噴き出してしまった。やばい、早くしろと俺を呼んでいる。いや、でもまだカレーが……っ!」


 カレーが。


 カレーが……


 カレーがあああっ!



 うわああああああああ――――!(>_<)



 ……


 ………はっ。


 夢か。


 よかったよかった。夢で。久しぶりに悪夢を見た……。


 ちゅんちゅん、スズメの鳴き声が聞こえるAM7時。

 カーテンから朝の光が射す。今日も世界は美しい。


 そう――



 これこそが、「かくよーろっぱ」だ。

 


 楽しい異世界い? 特別なスキルで最強う?

 そんなもの大人の社会にはない。


 つまり、現実世界に根差した悪夢(異世界)こそが、真の異世界ファンタジー。


 そして、そこで食べるカレーこそが、異世界グルメに他ならない。現実社会にドラゴンはいないし、食べることもない。むしろ、私はカレーが食べたい。この悪夢のようなカレーこそが異世界グルメ。


 そして、

「料理研究家リュウジ×角川食堂×カクヨム グルメ小説コンテスト」において、主催者が暗に求めている正解――

 異世界グルメを募集してるよ~、

 皆は気付くかな~、

 結構フラグ出してるよ~(^^)v

 ――が、


「仕事に追われる異世界(悪夢)カレー」なのだ……っ!


 ……


 ……


「そんなくら~い異世界グルメで、入賞するわけないでしょ」


 妻のつっこみはリアル(現実世界)。


 

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