ショート作品集
@kuwagatasann
味噌汁
味噌汁の甘い香りが好きだ。
沸々と柔らかくに煮えた鍋に味噌を溶かす。
その瞬間に香り立つ匂いが甘く香ばしい。
具は大根の細切り。細く切りサッとひを通すくらいがいい。
それと油揚げこれも細かく切って浮かべる。
そんな理想を毎朝描きながら昨日の残りの味噌汁を温める直也
上京して十三年、恋人が居た短い期間を除いてずっと一人暮らしだった。
そんな彼でも味噌汁だけはなぜか自炊で作っていた。誰に教えてもらったわけでもなくなんとなく作っている。
と言っても、一人だけなので消費量は高が知れている。一度作れば2日分にお釣りが出る。
今日は豚汁の残りだった。
昨日は金曜日だったから、気持ちが乗って豚汁でビールを飲んだ。
アサヒビールは味噌汁と相性が良いことに気がついた。
ホップの苦味と味噌の塩気と玉ねぎのほんのりとした甘みが程よく合う、大人になって久しぶりの発見、この時は興奮した。随分と食が進んだ。
そのためなのか、今朝鍋のガラスぶたから残りを見たときには随分と具が少なくなっていた。
そのまま火にかけた。
ほとんど汁だけの鍋には、沈んだ味噌が沸々と沸き起こる様子が見えた。
暫くすると昨日とは少しちが幾分劣化した味噌の匂いがしてくる。
昨日とは違う。それでも連続した匂いだ。
直也はその朝食を手早く済ませて外に出た。
空は高く晴れていた。
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