推し活ってお題、難産すぎる。

霧ヶ原 悠

推し活ってお題、難産すぎる。

 推し活とはすなわち愛だ。そして情熱だ。


 その表現方法は人それぞれだろうが、もっとも分かりやすいのが金だ。小説、マンガ、円盤、音源、雑誌、観劇、ファンミーティング、ライブ、コラボ企画、そして忘れてはならぬ種々様々なグッズたち。この世のありとあらゆる普通名詞を制覇するかの如く供給されるグッズは、もはや手の伸ばしどころも分からない魔境と呼んでいい。これらに注ぎ込んだ額がそのまま推しへの愛の大きさとなり、いつどこで誰が見てもその大きさは変わらないゆえに分かりやすい。しかし、さらなる猛者は言う。公式からの供給に注ぎ込むだけでは足りん、と。たとえば食べ物の擬人化を推す人は、その食べ物自体を買うという。公式とコラボしていなくてもいい。リンゴならリンゴを、サケならサケを、米なら米を買うのだ。天晴れ。次なる表現方法としては、二次創作が挙げられるだろう。あちらが魔境ならこちらは何が潜むか分からない魔窟かもしれない。性癖は人の数だけあり、妄想は刻一刻と広がりゆくのだから。その性癖と妄想を自分の中に留めるというのはなかなかに骨が折れる。パッションあるいはクソデカ感情と呼ばれるものは、吐き出してなんぼ。声に出して語るか、Twitterに呟き続けるか、筆をとってPixivにアップするか、あるいは他の手段でもいい。そこに道徳はあってほしいが理性はない、だって感情だもの。人気があるかないか、同意を得られるか得られないかではない(もちろんあればあるほど踊り出すぐらい嬉しいけれども)。感情の高まりをただ思いっきりぶつけること、それが情熱であり、愛であり、推し活の最たるものだ。


 そんな私の推し活の最高傑作は、KindleとBOOTHで発売中の『謎本・細音ワールド大全』。生涯推すと決めた細音啓さんの50冊以上ある作品を読み返すこと半年、さらに数ヶ月かけて考察を重ねて書き上げた、私の私による私のための考察本です。

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