友人と共に聖女として召喚されたら聖女じゃないと判断されて殺されたけど死ななかった件

うにどん

本編

 いつもの帰り道。

 浜野不二美はまのふじみは乙女ゲー好きの友人、奈留川命なるがわみことと今ハマっているゲームについて喋っていたら。


 信号無視の車に撥ねられそうになった。


 ぶつかる寸前。

 不二美と命、二人は光に包み込まれ、気付いたら目映い神殿のような場所にいた。


「アイタタタ? 不二美、大丈夫?」

「うん、大丈夫だよ。此処は? 車は? みこちゃん、解る?」

「ううん、気付いたら此処に。此処は一体・・・・・・」


「おお! 成功したぞ!」

「聖女様が聖女様がいらしゃったぞ!!」

「ああ、今日は吉日だ・・・・・・」

「これで我々は安泰だ!!」


 自分達以外の声が聞こえて、それでようやく自分達以外に人が、二人を囲むように大勢居ることに気付いた。

 皆、涙を流しながら聖女様と呼んだ。


 その異様さに不二美と命は恐ろしさを感じ、縮こまっていると奥から中心人物と思わしき綺麗な女性がやってきた。

 そして、二人をジッと見つめると。


「この者、黒い髪の少女こそ聖女で間違いない」

「おお! 女神代理様、真でございますか!?」

「ええ、間違いない。女神代理として断言する」

「それなら、この茶髪の娘は・・・・・・?」

「近くに居たのだろう、恐らく召喚に巻き込まれたに違いない」


 女神代理と呼ばれた女性がそう言い放つと茶髪の娘、不二美に皆、冷たい目を向ける。

 殺気に近いそれに不二美は泣きそうになるが命が守るように不二美を抱きしめ、安心させるように大丈夫だよと不二美の耳元で囁く。


「聖女じゃないなら、追い出そう」

「ああ、それが良い」

「我らには聖女様だけが居れば良い」

「そうだ、聖女様以外は排除だ!!」


 聖女と判断された命の行動を余所に周りの人間達は不二美を排除しようと動く。

 兵士と思わしき二人の人間が不二美を捕らえようと手を出そうとしたとき。


「待って!! この子は私の友達!! 大切な友人なの!! 追い出すなんて許せない!! それだったら、この子を、不二美を元の世界に返して!!」


 命が叫んだ。


「みこちゃん・・・・・・」

「いきなり連れてきて聖女とか言われて混乱してる私達を置いてけぼりにして、挙げ句に不二美を追い出そうとするなんて許せない!! もし、約束を破ったなら聖女なんて辞めてやる!!」


 命の叫びに不二美を排除しようと声高らかに言った者達は動揺し、命にそれだけは辞めてくれと懇願し始めた。

 だが、その中でも女神代理である女性は冷静に解ったと告げた。


「了承しました。聖女様がそう言うのであれば彼女を元の世界に戻しましょう」

「本当!?」

「その代り、貴方には聖女としての務めを果たしてもらいます」

「・・・・・・はい」

「みこちゃん、私、一人なんて嫌だよ!」

「不二美、お願いだから今は一人で帰って、勤めを果たしたら帰るから」

「・・・・・・解ったよ、みこちゃん」


 不二美は自分だけ帰ることを躊躇うが命は後から帰るからと言う。

 納得は出来ないが命に強く言われてしまった不二美は渋々頷いた。


 命は女神代理と共に、不二美は自分を捕らえようとした二人の兵士に共にこの場を離れた。


 長い廊下を歩き続ける。

 誰も言葉を発さない、沈黙に不二美は居心地の悪さを感じるが自分から話しかけるのは違う気がすると思い黙って兵士の後を付いて行く。


「此処だ」


 そう言って兵士は立ち止まると、目の前には大きな扉。


「此処を出れば元いた世界に帰れるぞ」

「ほ、本当ですか?」

「ああ、本当だ」


 兵士はさっさと行け、扉は自分で開けろと言い放ち、踵を返す。

 不二美はこんな重そうな扉をせめて開けてから行って欲しいと思いながら、両手を使い、扉を開けた。


「え・・・・・・?」


 扉の先は元いた世界ではなく荒廃した土地だった。


 想像できない光景に目を白黒させていると。


――ザシュッ!!


 背後から何者かに槍で、心臓の辺りを貫かれた。


「すまないな、聖女以外は殺すのは決まりなんだ」

「恨むなら召喚に巻き込まれた自分を恨んでくれ」


 踵を返したはずの兵士二人が淡々と事実を告げると蹴って槍から不二美の体を離した。


「・・・・・・・・・・・・」

「行くぞ、これは決まりなんだ」

「・・・・・・解った」


 兵士の一人が倒れた不二美を何か言いたそうに見つめているのをもう一人の兵士が声をかける。

 声をかけた兵士はさっさとその場を離れ、もう一人はチラリと倒れた不二美を見ながら離れた。


 そして、扉はギィーと音を立てながら閉まった。






 扉が閉まってから、数分後、不二美はゆっくりと起き上がった。


「あれ? 私、生きてる・・・・・・?」


 貫かれた箇所はまだ赤い血で汚れているが痛みはない。

 恐る恐る、其処を触ると怪我は完全に塞がっていた。


「え? どういうこと? 何が・・・・・・」


「あら、珍しい。貴方、異人さん?」


 自分の体の異常な変化に戸惑う不二美の前に黒ずくめの女性は舞い降り、不二美の顔を覗くように見る。


「しかも、不死者になってるなんて益々珍しい」

「え? 不死者?」

「そうよ、貴方は私達と同じ不死者よ、お嬢さん」


 黒ずくめの女性はそう言ってニコリと笑った。

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友人と共に聖女として召喚されたら聖女じゃないと判断されて殺されたけど死ななかった件 うにどん @mhky

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