#5「私のドッペルゲンガー」
ニコニコ:https://www.nicovideo.jp/watch/sm38941010
YouTube:https://www.youtube.com/watch?v=QggCIx9mHwc
作詞:DIVELA
作曲:DIVELA
編曲:DIVELA
歌唱:可不
今回紹介したいのはこちら、『私のドッペルゲンガー』だ。製作者のDIVELAは『METHOR』『ぼかろころしあむ』『天使のクローバー』などで知られるボカロPであり、力強いサウンドと表現力豊かな調声で人気を集めている。また「DIVELA REMIX」の名で知られるアレンジカバー楽曲も多く投稿しており、そちらでもファンを虜にしてきた。そのDIVELAが今回、可不のデモソングを担当した。
可不とは、CeVIO AIのライブラリの一つであり、正式名称は「音楽的同位体 可不(KAFU)」となっている。声の元となった人物は、バーチャルアーティストの花譜である。花譜の「音楽的同位体」として生み出されたのが、CeVIO AIの可不ということだ。そのリアルな歌声によって多くのボカロP、ファンを魅了し、ツミキの『フォニィ』や、いよわの『きゅうくらりん』などの楽曲に見られるように、発売から一年足らずでソフトウェアシンガー界を大きく動かした。
そして、この可不のデモソングとして制作された楽曲の一つが『私のドッペルゲンガー』となっている。しかし、この楽曲はデモソングという枠には留まらない。可不の持つ特徴を全て引き出している。言うなれば、可不のイメージソングだろう。初音ミクにとっての『みくみくにしてあげる♪』と同列の楽曲であると私は捉えている。『METEOR』や『ビビッドヒーロー』を作り上げたDIVELAだからこそ生み出せる名曲だと感じる。
この楽曲でもDIVELAお馴染みの重厚感あるサウンドが響く。サビの手前まではまるでリングインをするかのように静かに溜め、サビで爆発するかのようにギターが鳴り響く。緩急が付けられることで、サビの力強さが際立つ。
そして強烈なのが歌詞だ。
「形振り構わず私だけ見ていてよ
『本物』なんて今更遅いんだよ
君の脳天めがけて一直線
沸いちゃう大喝采
これは最後の最後の警告です」
「『声を返して!』」
これは最後のサビの歌詞である。実際のシンガーである花譜からのメッセージとも、音楽的同位体である可不からのメッセージとも取れる。明確に「中の人」を意識させることのできる可不だからこそ歌うことのできる歌詞ではないだろうか。そして「声を返して」と叫ぶ自分に対してもう一人の自分はこう返す。
「吠える太陽に逆らって嘲笑っても
暗闇でたった独り泣いていたんでしょう?
告げる最終列車の警笛で崩れる境界線
睨むそっくりさんに手を振って」
「『歌はあげないから。』」
歌うことで自らのアイデンティティを確立するシンガー、そしてCeVIOだからこそ、歌だけは手放すことはできない。そんな風に私には聞こえた。また、二番の歌詞にはこんなフレーズもある。
「歌ってない私ぜんぜん価値なんてない!」
歌うことが自らの価値であることをここでも認めているのだ。可不と花譜、どちらの言葉かは明確になっていないが、どちらから見てもきっと同じことを歌うだろう。
「音楽的同位体」という存在である可不を「ドッペルゲンガー」と捉えたDIVELAのセンスにただただ脱帽である。ぜひ花譜にもカバーをしてもらいたい一曲である。
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