第5話 群雄割拠
今日に起こった僅か15分の会見は日本の歴史上を揺るがす大事件であった。記者として初めてキーボードを動かすことが出来なくなっていた。他記者もみんな唖然としていて、その後本当は質疑応答の時間があるのだが時間の関係上省略された。質問すらできない会見だと皆暴れ出すのだが、そんな状況ではない。はっきり言って思考停止してしまったのだ。そしてそれが動き始めるのは聞き慣れた機械音であった。
「プルプルプル、、、、は!、ガチャ」
「おい、記者会見はとっくに終わったぞ!早く本社に戻れ。こっちは号外を作るのに忙しいんだ!」
「すいません、課長。直ぐに戻ります。」
「、、俺だって困惑してるんだ、、、
まさかこんなことになるなんて、、、、
だが、我々はジャーナリストだ。全国民にこの出来事を伝えるのが我々の義務である。今は私情をなくせ。目の前の職務に集中せよ。以上!」
「、、、部長の言う通りだ。俺としたことが、、直ぐに戻ろなければ。」
そうして私は走って官邸から去っていった。
1時間後、渋谷スクランブル交差点
「号外ー!、号外だよーー!政府が遂に日本解体法案が可決されたよ」
「号外だよーーー!、、、、」
私は本社に戻った後、すぐに号外を作成した。本当はそれで終わりなんだと思っていたが今回はあまりにも人手が必要のため私も協力してここにある大量の紙切れを配れという残業命令が出された。そして驚いたことにその紙切れは僅か数分で消えていった。普段こういう事は無視する若者、サラリーマンに高齢者さらには学生も我先にそれを求めていた。息を呑んでいる人がほとんどだが、その紙を天にかがけ雄叫びをあげている人やなんなら胸ぐらを掴まれて激怒している人もいる程であった。どちらにせよこれは徹夜のボランティア確定が決まりそうだ。
首相官邸
「、、、あのジャーナリストどもは仕事が早いな。こんな短時間で号外を出すなんてな、、TVなんてバラエティー番組がいきなり終わって今回の報道を取り上げてやがる。」
「まぁ、無理もない。今回の事を考えたらな、、。それよりもジャーナリストどもは本当に我らの発言を切り取るのが上手いな。あたかも政府が独断で決断した風に書かれてやがる。」
「チィ、本当にこいつらはいつか必ず殺してやる!ハニートラップを仕掛けられそうになったときも、、、」
「それよりも官房長官。これからの動向について意見を求めたい。」
「あぁ、そうだな。冷静に対処しなければ、、。まず、市場は会見終了後一瞬で円は大暴落。僅か5秒で為替取引が停止となった。詳しいことは省き端的に申し上げますがもはや取引が再開する見込みもなく円の価値ももって一週間弱でしょう。それ以降はただの紙切れです。」
「すぐに今まで貯めてきた外貨をフル活用して市場を安定化させろ。それと諸外国の反応は。」
「今のところ、どの国も声明は出しておりません。やはりこれからの動向を見守っているようです。」
「よし、それなら良い。後何か問題はあるか。」
「はい、今後の46都道府県に行政の委託の準備を進めているのですがもう少し時間がかかりそうです。」
「そうか。まぁ、いきなりのことだ。そこのところは迅速な行動を頼む。」
「かしこまりました。総理。では、私も少し席を外したいと思います。失礼します。」
そして扉が閉まり、さっきまでのは全く異なる静寂がこの部屋を支配していた。私はそれに耐えきれなくなり胸ポケットにあった紙箱からタバコを一本取り出して、火をつけた。そのまま口で咥え、できる限り大きく煙を吸った。お陰でさっきまで色々あった思惑が綺麗さっぱりなくなった。もう、どうでもよかった。ここまできたら現実逃避が私の唯一の職務となっていた。そしてその煙を眺めながら、私はぼーーーとしていた。長い時間を。そして、そこで私は笑いながら、こうおもっ
た。
「、、、、さぁこれからこの国そして俺たちはどうなっちまうのかね。」と。
その後今回の騒動において、日本いや世界中が大混乱となり、まず世界各国はこれを深く憂慮して大きく外交方針を変更。世界のパワーバランスが崩壊することになる。次に日本全国ではこれらの事態に対して嵐のような速さで預金をおろす人が大量に出現する。そのまま取り付け騒ぎとなり多くの銀行が廃業に追い込まれてしまう。それらのせいで日本企業のおよそ70%以上が倒産する事態となり
全国各地が"無法地帯"となってしまう。さらに最悪なことに品不足の影響により略奪、強盗、殺人が続出。だが、警察は機能していないため多くの都道府県は新たに自警団を組織させ、治安維持に努めていた。
以下が原因で東京政府の権威が失墜、旧政府を中心とする秩序はあっさりと崩壊することになる。
まず、会見後僅か1ヶ月後、
元々東京と強く対立していた"大阪"が独立宣言を行う。
そのままの勢いで"京都"や"兵庫"、"滋賀県"などの関西全地域で独立を宣言。
さらには近畿の独立により西日本の独立も加速。
"中国地方"や"四国"、そして"九州、沖縄"も独立することになる。
それだけではなく西日本だけに留まらず、
かつて南海トラフで一番被害を食らった
"名古屋"や"静岡"、さらに中部地帯の
"岐阜"、"長野"、など
そして北陸地域一帯や、"新潟"、"宮城"を筆頭とし東北地方もドミノ倒しのように独立。
そんな中、"北海道"も独立する内に、最後の旧政府の砦だった関東地域も東京の政府からの離反を発表。これを止めることができなかった政府はこれを容認。
これにより日本各地の47の都道府県は完全に"分裂"したのである。
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