アイドルの追っかけしてたら幼馴染が物凄いヤキモチ妬いているんだが、もしかして陰キャヲタクな俺のこと好きとか!?

雲川はるさめ

第1話


アイドルの推し活してたら幼馴染が物凄いヤキモチ妬いているんだが、もしかして陰キャヲタクな俺のこと好きとか!?




「うおおおお!!ヒロちゃん今日も可愛いぜ!!」


日曜日。俺は大好きなアイドルグループ、

【CANDLE/キャンドル】の生ライブに来ていた。

新曲のお披露目会。

今日、この時のためにチケットを予約し、

俺は「ヒロちゃん」なる文字の書かれたうちわをファンに紛れて振ってた。

むさ苦しい男連中に取り囲まれ、息が詰まりそうになるのもなんのその。

俺は単独で会場に乗り込み、

ヒロちゃんへの愛を額に汗して必死に叫んでいたんだ。



やがて。

一時間半ほどのライブが幕を閉じ、

俺は帰路についた。

疲れたけど、ヒロちゃんを生で見ることができたし、満足だった。


さて。


俺が涼を求めて本屋やCDショップに寄り、

だらだらしながら家に帰ると、

来客がいた。


「おーそーい!シンジ!

あんたどこに行っていたのよ!?」


「ん?なんだ、マヒロ。

俺の家に来てたのか?なんか用か?」


彼女の名前は真島マヒロ。

俺とは幼稚園時代からの幼馴染だ。

美少女ではあるが、俺の恋愛対象外。

なんでかって?

ギャル過ぎてついていけねぇ。

俺は地味なインキャヲタク。

こんな金髪派手派手な女とは一緒に歩けないだろ。


「なんか用かじゃないわよ!

ほら、これね、クッキーね。私が焼いてあげたのを、あんたにあげようと思って持ってきてあげたの。私ね、30分も前から待っていたんだからね!」


「俺に毒味させようと...?」


「な!?失礼ね。違うわよ!」


マヒロが料理苦手なのは周知の事実。

何を思ったか、きっと誰かにあげるまえに、

俺に味を見させようって魂胆だろ。


とまあ。このあと、

クッキーを食べろと言われて食べたのだが、

そこそこ美味かった。


翌日。俺はアイドルヲタク仲間と

推しについて語っていた。


「俺の推し!?そんなん決まってんだろ。

キャンドルのヒロちゃんだよ、ヒロちゃん!!」


昼休みに好きなアイドルを聞かれたから正直に答えた俺。


今や人気絶頂のアイドルグループのセンターポジの女の子の名前をヲタク仲間の前で言い切った。


「んだよ。俺もだよ。

シンジもかよ。。推しが被ってるな。。」


「俺はアキちゃん。やっぱりツインテは正義だと思ってる!」


人それぞれ、好きなタイプがあって

推しが被ることもあれば被らないこともあった。


俺的には、被らない方がよかった。

何故かって?だって推しを独り占めできそうだからさ。


「ヒロちゃんのポスター何枚持ってる?俺は4枚だかんな」


「俺は、まだ一枚も持ってないけど、、」


「なぁんだ。ファンとしてありえないな。

ファンならグッズを集めなきゃ」


「そうかな、、」


「そうさ。金をかけなきゃだめだろ。

で、握手会でここぞとばかりに言うんだ。

ヒロちゃんのグッズ、めっちゃ持ってるよって」


「そっか。。俺はそれ、できそうもないな」


貧乏だった。

母子家庭ゆえ、そんな金をかけられなかった。テレビで見るのが精一杯だった。


「ねぇ、シンジ。

あんた最近、ヒロちゃんヒロちゃん言ってるけどさ、もしかして、アイドルに目覚めちゃったとか?馬鹿じゃない?」


「るせー、俺に構うな。

俺が誰を推そうとおまえには関係ないことだろ?」


「う、、。ま、まぁそうね」



次の日の放課後。

幼馴染のマヒロが俺にチョコをくれた。

たまたま、この日は2/14日だった。


「義理チョコじゃないよ!

本命だかんね!大事に食べなさいっ」




「うん、わかった。それにしても、マヒロ。おまえ、いま、なんて?」


「本命チョコだって言ってんの!

良かったら食べなさいっ」


「お、おう。。どうしちまったんだ。俺に本命チョコなんてくれたことないのに」


「別に、細かいことは気にしないで。今日は途中まで一緒に帰ろう、シンジ。で、ヒロちゃんの

どこが好きなわけ?」


「うーん。まぁ、元気がいいところ。

それと、ダンスをミスっても笑顔を絶やさないところ。。」


「ふむ」


「あとはポニテが好きだな」


「ふむ。私もポニテにしようかしら」


「おまえとは違うよ。ヒロちゃんは

清楚系美少女なんだから。根本的にギャルのおまえとは違う」


「ふーん。言ったわね」


「俺は、黒髪清楚な子が好きなんだ。

ヒロちゃんみたいな。ヒロちゃんはまさに

俺の理想。やまとなでしこ、的な」


「ふーん。なるほどね。シンジの好みが分かったわ」


「...おまえ。目がマジだけど、

どした?」


「明日、シンジの憧れのヒロちゃんに会わせてあげようか?実はわたし、あ、の、ヒロちゃんと知り合いなのよ」


「は?」


「PARCO前の花時計公園前に10:30。

いい?10:30だかんね」


「え、ちょっと...!?マジ!?いやった!

あ、ありがと...!」


ありがとうまでいいかけたところで。


マヒロはぱたぱたと走り去って俺の前からいなくなった。


翌日。


半信半疑でヒロちゃんを待った。

来るわけないだろ。会えるわけないだろ、

と思いながら。




10:30きっかり。


真島マヒロが現れた。


「...なんだ。おまえだけかよ...やっぱし、嘘だったんだな。

ヒロちゃんが来るわけがないよな...」


「な、なによ!ちゃんと連れてきてるわよ!

ちょっと待ってなさい!今、PARCOの中に待機してんだから!変装して!」


「おおお。そうか!会えるなんて、夢みたいだな!」


「待ってなさない!いま、呼びに行ってくるんだから!」


「お、おう!」


「なによ、目キラキラさせちゃって!

ほんとむかつく!」



10分後。

ヒロちゃんが現れた。


「うぉう!?」


「ひ、ヒロちゃん!?」


「しっ。声が大きいわ」


ヒロちゃんの右手が。

俺の口を塞ぐ。

や、やばい。俺、興奮して卒倒しそう。


やがて。

その手がはなされる。


「で、マヒロは?」


「マヒロは、急用だとかで帰っちゃった」


「そ、そうか。。もしかしたら、マヒロは俺に気を遣ってくれたのかもな。二人だけにしようと思ってくれたのかもな...」


「そーかもね」


「喫茶店行こう。私、喉かわいちゃった」


「お、俺も...喉かわいてる!!」


変装はしているが、アイドルと対面でお茶して。

まるで。

夢のような時間だった。

一時間くらい、新曲について語って、

俺はヒロちゃんのどこが魅力的で、それで、

俺、めちゃくちゃ大好きなんだよ、と伝えてから、時が過ぎて、やがてヒロちゃんとのお別れの時間がきたんだ。


「今日は楽しかった。ありがとう」


「いやいやいや、俺も、めちゃくちゃ楽しかったよ!」


徒歩で帰宅後。


マヒロがまた、俺の家にいた。


「マヒロ、今日はありがと...!

俺、ヒロちゃんに会えて夢見心地だったよ!で、おまえ、急用ってなんだったんだ?

てか、またなんで俺の家にいるんだ?」


「フン。それはよかったね。

ほら、これ。今日はおいしいって有名なケーキ屋のケーキをわざわざ買ってきてあげたのよ。

急用って、それよ。予約しておいたの、

急に思い出して取りに行ったの」




差し出された白い箱。

箱を持つ右手の人差し指に俺は眼をとめた。


「ふーん。て、おまえ、その、

絆創膏...怪我したのか?」


「う、うん、まぁね。ただの擦り傷」


「...そういえば、ヒロちゃんも右手の人差し指のとこに絆創膏巻いてたぞ」


「....たまたまじゃないの!!」


「いや、ちょっと見せてみろ」


俺はマヒロの右手を掴む。


「シンジ、この箱!ケーキ入ってんだからね!

ちょっと乱暴な真似はやめてよ...」


「まさかな...。ヒロちゃんがおまえとか

ないよな??」


「うううっ...」


マヒロの様子がおかしい。

突如として、慌て出した。

俺の顔を見ずに。

顔を真っ赤にしていうことには。


「ま、まぁ、わたしだからいいけど、清楚系アイドルのヒロに嫉妬しちゃったじゃない!!」


「え、なんだって?」


「ヒロちゃんは、わたし!!」



俺はびっくりして、へなへなと

その場にへたりこんだ。




「マジか...。マヒロがヒロちゃん?ギャルのマヒロが、

清楚系アイドルなわけ...!?」


「ほら、ウイッグ取ってあげるから!

よく見なさいよ!!」


マヒロが金髪から黒髪になった瞬間だった。

俺は。


幼馴染がアイドルだったことに、

漸く気が付いたのだった。


「な、なにがなんだか...」


「シンジ、あんたヒロちゃん推しなんでしょ?

今、正体明かしたけど、私がヒロちゃんなんだからね。そういえば、さっき喫茶店で

大好きだって、告白してくれたじゃない?」


「お、おう...!」


「今を以て、シンジの幼馴染である、私がヒロちゃんだと気付いたわけだから、さっきの告白は私に対しても有効よね??」


「そ、そそ、そ、そーゆーことになるな」


ぎゅっとマヒロのやつにハグされた。


「推し変したら許さないからね?シンジ!」


「バカやろう。俺はアイドルグループ、

キャンドル発足時の約一年まえからずうっと

ヒロちゃん一筋できてるんだからな!

お、おまえこそ、清楚系路線をやめるんじゃねぇぞ!」


「オッケー、シンジ。

学校では変装のため、金髪ギャルでいなきゃ

いけないけどさ。今後、暇を見てシンジとデートしなきゃいけないときは黒髪清楚な

ヒロちゃんでいてあげるわよ!

ただし、周りにバレない程度にね」


「お、おう。よろしく頼む...!」


こうして。


俺は幼馴染であり、アイドルグループ、キャンドルのセンターポジションのヒロちゃんでもある

真島マヒロと付き合うことになったのでした。








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