第55話

砦には全速力でミロが飛んでくれたので、1時間もかからずに到着できた。


「フィリス様!」


砦の上空まで来ると、四龍と先輩騎士達が、砦の屋上で出迎えてくれた。フィリスは屋上に着地し、ミロは直ぐに人の姿になる。


「どうでしたか、久しぶりのガデル王国は?」


「うん…騎士を辞めてきた。」


「…え?」


「フィリス、マジか!?」


先輩騎士達が驚いていたが、フィリスは続ける。


「カーマインさん達にも説明したし、逃げ出した連中の処罰も決まりました。直ぐに代わりの人達がここに来ます。それまでは我々もここの警備をします。」


そう言うとフィリスは部屋に向かって行く。


「フィリス…」


「仕方ねぇよな。」


「2年もの間、こんなところで休みも無く頑張ったんだ…」


先輩騎士達もそう言っていた。部屋の片付けをして、その後キッチンで料理をしたり、掃除をしたり、通行人案内などをして3日が過ぎると、代わりの騎士達がやって来た。


「フィリスとやらはいるか?」


その中の隊長がフィリスを探す。フィリスが1歩前に出ると、


「其方が…国王陛下よりこれを渡すようにと。」


そうして袋を渡されて中を開くと、金貨が沢山入っていた。


「これまでの給金と、迷惑料だそうだ。」


「…解りました。では、私達はこれで。」


「フィリス、頑張れよ!」


「俺達もお前みたいに頑張るからよ!」


先輩騎士達に見送られ、フィリス、四龍とミロは砂漠の街へと向かった。



砂漠の街でフィリスは泊まる宿屋を探そうとしていると、


「フィリス様、こっちです。」


四龍達が案内するとおりに進んでいくと、砂漠の街には珍しい、それなりに大きな屋敷に着いた。その玄関には“ギルド エレメントドラゴン“と書かれていた。


「これは…?」


「私達の家です。」


「…お金を貯めて。」


「ミロちゃんが建築方法に詳しかったので…」


「私達で力を合わせて建てました。」


「頑張ったんだよ!」


そういって中へと入っていく。中は更に立派な物だった。


「フィリス様、ここを拠点にして…」


「…私達と冒険者をやりましょう。」


「大丈夫です…」


「冒険者ギルドにも話は通してありますから。」


四龍のその言葉を、フィリスは嬉しく思った。そうしていると、ミロは疲れたと言って、自身の部屋へ眠りに行った。


「取り敢えず、今日は休もう。明日、冒険者ギルドに行って登録する。早く皆のように上位ランクに上がれるように努力するよ。」


「フィリス様なら直ぐですよ!」


「…私達もお手伝いします。」


「ですから今夜…私達に…」


「お情けを下さい…」


そう言うと、四龍は光り輝き、服がいつかの扇情的な衣装に替わる。


「…私で本当に良いのかい?」


「いいえ…」


「…フィリス様だからこそです。」


「我々が愛するのは…」


「フィリス様だけですわ。」


そう言われ、フィリスも嬉しく思い、その夜はフィリスの部屋で5人は眠った。約2年後のまともな外の世界、その中に身を投じる事にフィリスは若干の不安があったが、皆の幸せそうな寝顔を見て、自身も更に頑張る事を誓い、眠りに着いた。


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