73 夏休みの終わり

 妖精さんがなにも言わずにさなぎの前から姿を消してしまったのは、さなぎとみらいのお母さんである木登さやかが帰ってきた日のことだった。

 さなぎはずっと「妖精さんがいなくなっちゃった」と言いながら、一日中、泣いていた。

 そんなさなぎにさやかお母さんは「私も、妖精さんに会いたかった」とさなぎのことをぎゅっと抱きしめながら、そういった。


 夏休みの終わり


 長い夏休みが終わって二学期に入ると、さなぎの学校生活に一つの大きな変化があった。

 それは友達ができたことだった。

 さなぎはやよいちゃんと友達になった。

 だからさなぎは小学校に通うことがすごく、すごく楽しくなった。

 のはらとのぞみさんとの関係もそのあともずっと続いていた。

 さなぎのそばからいなくなってしまったのは、妖精さんだけだった。

 さなぎはいつも、どんな場所にいても、ふと、この世界のどこかに妖精さんがいないのかな、と探すようになっていた。(なんとなくきょろきょろと周囲の風景を眺めている癖のようなものがさなぎにはもともとあったのだけど、その癖が以前よりも少し強くなった)

 妖精さん。

 妖精さん、どこ?

 どこにいってしまったの?

 さなぎは見ている夢の中でそんなことを言いながらよく、妖精さんを探していた。それはまるで夏休みに見た、あののぞみさんがのはらを探しているような、そんな不思議で(とても悲しい)夢だった。

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