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「それとお母さん。なんで勝手に一個少なくしているの? もう一つあったでしょ? 私たちが幸せになる方法」

 とのはらがいう。(少し頬を膨らませながら)

「ああ、あれね。あれは別にさなぎちゃんには言わなくてもいいんじゃないかな?」とちょっと照れながらのぞみさんは言う。

「それってなんですか?」

 とさなぎは言う。

「うんとね。どうしようかな?」とちょっと迷った顔をしているのぞみさんが言う。

「五つ目は、自分の大好きな人を見つけること」

 迷っているのぞみさんの隣でのはらが言った。

「あ、もう、のはら」

 とのぞみさんは言う。

「自分の大好きな人を見つけること?」さなぎは言う。

「そうだよ。さなぎちゃん。自分の大好きな人を見つけること。これは幸せになるために絶対に必要なことなんだよ」とのぞみさんの体から身を乗り出すようにしてのはらは言う。

「大好きな人ならもういますよ」

「もちろん、家族以外の人でね」のはらは言う。

 さなぎは「お父さんとお姉ちゃん」と言おうとしていたので黙ってしまった。

「のはらだっていないでしょ?」

 のぞみさんは言う。

「今はね。でもきっとすぐに見つかるよ。もうすぐ見つかる。『そんな予感』がずっとしているんだ。私」とにっこりと笑ってのはらは言った。

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