38
のぞみさんは白いロングのスカートに肩の出ている淡いブルーのシャツを着ていた。その長い黒髪は艶やかで、ストレートにしている。
赤い口紅をつけて、なんだかとてもいい匂いがした。
肩から小さな白いバックを下げていて、その手には紙袋を持っている。
のぞみさんはお父さんのそばにいるさなぎを見て、にっこりと笑うと小さく手を振ってくれた。
「これ、つまらないものですけど、どうぞ」
と言って、のぞみさんはその紙袋(中身はどら焼きだった)をお父さんに手渡した。
「あ、これは、ご丁寧に。どうもすみません。ありがとうございます」とにっこりと笑いながらお父さんは言った。
それからお父さんはのぞみさんに自分の名刺を一枚手渡した。
そこには『桜島小学校 国語教師 木登静』という文字が(こざるの絵と一緒に)書いてあった。
「木登、……しずかさん」のぞみさんは名刺を見ながらいう。
「はい。しずかです。小学校で教師の仕事をしながら、みらいとさなぎという二人の娘を育てています。これからもよろしくお願いします」としずかは言う。
「小学校の先生なんですね。すごいです」
とのぞみさんはいう。
「お父さん。立ち話もなんだし、上がってもらったら?」とみらいが言った。
「うん。そうだね。どうですか? のぞみさん。こうして出会ったのも、なにかの縁だと思いますし、少しだけ家によって行きませんか?」しずかはいう。
「ええっと、そうですね」と困った顔をしてのぞみさんはいう。
でものぞみさんはさなぎの「よってほしい」と言いたそうな、そんな顔を見て、「じゃあ、少しだけ」と言って、木登家に上がっていくことにした。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます