3.14

「なぁなぁ、お前の将来の夢なんなんや〜?」

学校の帰り道、突然ナオキが俺に訊いた。

「いや、何だよ、急に。そういうお前こそ将来の夢なんやねん、先に聞いたからには、先に答えてもらうで」

ナオキは、少し渋るように、口を開いた。

「まぁ〜それもそやなぁ〜。僕の将来の夢は、なぁ…」


「ゴクリ…」


「金持ちの社長や!」

「えっ…?!」

想像を遥かに下回る答えに、呆気に取られる俺。

「なんや、どうした?僕のとてつもない夢に驚いてるんか?」

ナオキは、俺の動揺をよそにペラペラと喋り続ける。

そして、今やっと気を取り戻す。

「いやいや、まてまて。高校生にもなって将来の夢が社長?!小学生やん」

「ははははっ」

ナオキが笑い出す。そして、改めるようにまた言った。

「まぁ良い大学行って良い会社に入るわ。そして社長や!

で、君の将来の夢は、なんや〜?」

ナオキがまたニヤニヤと腹の立つ顔で聞いてくる。

俺は、少し考えたふりをした。

「んんん〜〜、小説家かなぁ〜。そして、金持ちになってタワマンに住むわ」


「いや、金持ちになる夢、僕と同じやないかい!」

ナオキがすかさずツッコむ。

「あはははwww」

お互い一緒に笑った。

そしてまた、しょーもない話しをしながらトボトボと道を歩いた。

すると、ふと地面にキラリと光る何かが見えた。

俺は、ナオキとの会話をよそにすかさず地面に、しゃがみ込んだ。

「よっしゃあ!百円ゲット〜!」

俺は、つい大きな声で叫んだ。


「ビックリした〜、ホンマや、百円玉やなぁ。にしても百円で喜び過ぎやろw」

ナオキは、またニヤニヤと笑う。


「いやいや、百円は、デカいな?」

俺は、大事そうに百円玉を丁寧にポケットの中へと入れた。

まるで宝物を拾ったように………。


「バサバサッ」

「うわァッ」

突如、あたまに大量の書類が降りかかる。

「やべっ、寝てたっ、」

ここは、深夜の会社。一人の男が何か慌てた様子でゴソゴソと音を立てている。

「うわ、めっちゃ落ちてるじゃん。」

急いで、床に散らばった紙を拾い集める。

ちらりと時計を見るともう、こんな時間。

「明日までにこの企画書を完成させておかなければらないのに。取りあえず、この残った書類だけでも家に持って帰って完成させよう」

深夜の会社の中、一人の男がまたボソボソと喋っている。

「このプリントは、置いといて、これは、持って帰って…」

机の上にある書類を片付け、夜の会社をあとにした。

「にしても、懐かしい夢、見たなぁ」

夜の街路樹をトボトボと歩く。

「そういや、ナオキ、今何してんだろう。風のうわさで賢い大学入ったとかなんやら…。

まぁでもあいつ普通に頭良かったから今頃大学楽しんでんだろうなぁ」

俺は、右手にある書類が入ったカバンがまた一層、重く感じる。

すると、ふと地面にキラリと光る何かが見えた。

俺は、つまんなそうな顔をしながらゆっくりと拾う。

「なんだ、百円かよ…。できたら、五百円玉が良かったな」

俺は、たった百円をポケットに突っ込み、自販機へ向かった。

「ガチャ、チャリン、ポチ、ガタンッ」

俺は、特に喉は、乾いてなかったがジュースを買った。

「はぁ、今頃どうせあいつは、きっと…」

俺は、また愚痴をこぼしながら夜の街路樹を歩いて行った。







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