第415話 カーティスと第二騎士団2

カーティスは、第二騎士団の子達が向かって来る姿を遠目に見ると、「ほほう」と感心したような声を発する。


「こちらに歩いて来る姿が自信に溢れており、頼もしそうな子達ですな」


「はい。これからのバルディアを背負ってくれる子達ですからね」


程なくして、第二騎士団で隊長格の皆はディアナとカペラの指示に従って横並びに整列する。


今回の集合理由は、カペラから既に説明済みだ。


でも、そのせいか、この場に集まった皆はカーティス達を好奇心に満ちた瞳で見つめている。


その中、「さて……」と呟きおもむろに口火を切った。


「今日、この場で皆に集まった理由はカペラから説明があったと思う。でも、改めて僕からも伝えさせてもらうね」


カーティスを一瞥すると、再び第二騎士団の皆に視線を戻す。


「第二騎士団の存在価値はこの場にいない皆も含め、君達の活躍で領内に示されたと言って良い。でも、僕はそれで満足する気はない。むしろ、これからが重要なんだ。そこで、既に聞いているだろうけれど、第二騎士団をさらに飛躍させる為、優秀で経験豊富な指揮官を迎えることにした。それが、彼ことカーティス・ランマーク殿なんだ」


「へぇ……」と興味深そうな声が騎士団の皆から漏れ聞こえる中、カーティスは一歩前に踏み出した。


「只今、リッド様にご紹介預かったカーティス・ランマークだ。よろしく頼む」


彼はそう言うと、白い歯を見せて豪快な笑顔を浮かべた。


すると、狼人族のシェリルが「よろしいでしょうか?」と手を挙げる。


「うん。どうしたの?」


聞き返すと、彼女はアスナとカーティスを交互に目をやった。


「あの、『ランマーク』という苗字があるということは、カーティス様はアスナ様の御父上なんでしょうか?」


カーティスはきょとんとすると、楽しそうに大声で笑い出した。


突然のことに騎士団の子達がギョッとする。


「ハハハッ! 儂が『父』か。そりゃ傑作だわい。まだまだ、儂も捨てたものではないのう、アスナ?」


ニンマリ笑顔でカーティスがアスナに振り向くと、彼女はやれやれと首を横に振る。


そして、「はぁ……あまり茶化さないで下さい」と呟くと、騎士団の皆を見渡した。


「カーティス・ランマークは私の祖父だ。それと、剣の師匠でもある。祖父上と比べると、私の剣など未熟そのものだ」


「アスナ様の剣が……未熟⁉」


質問をしたシェリルが目を丸くすると、ファラが補足した。


「それと、ランマーク家はレナルーテ有数の武家です。リッド様や第二騎士団の皆さんの力になってくれるはずです」


「なるほど……それはまた、凄い方が来たと言うことですね」


シェリルがそう呟くと、この場の視線がカーティスに注がれた。


ちなみに、アスナの実力を第二騎士団の皆は良く知っている。


騎士団の訓練に、アスナがファラと共に参加したことが何度もあるからだ。


訓練に参加した際のアスナは、容赦なく第二騎士団の子達を二刀の木刀で何度も返り討ちにしているのは言うまでもないけどね。


加えて言うなら、第二騎士団の中でも身体能力の高い兎人族のオヴェリア、狼人族のシェリル、猫人族のミア、熊人族のカルア。


彼等が獣化と身体強化を併用して挑んでも、アスナと一対一で対峙した場合は勝てたことがない。


それだけの実力を持つアスナですら、カーティスの前では未熟であるという。


その言葉に反応してか、第二騎士団の皆の目つきと顔色が何だか好戦的なものに変わった気がした。


雰囲気が変わって間もなく、カペラがわざとらしく咳払いをして注目を集める。


「リッド様。そろそろ、第二騎士団の皆に自己紹介をさせてもよろしいでしょうか?」


「そうだね。じゃあ、皆。陸上の第一分隊から初めて、次いで航空隊、最後に特務機関で行こうか。所属している部隊、種族、名前。それから主な任務内容もお願いね」


「畏まりました」


皆が一礼すると、横並びに整列している中から一人が声を発した。


「陸上隊第一分隊所属、分隊長をしている熊人族のカルアです。主な任務は、土の属性魔法による土木作業と道路整備。部隊は主に熊人族で構成されています……以上でよろしいでしょうか?」


「うん、ありがとう。今の感じでどんどんお願い」


そう言うと、カルアは一歩下がった。


なお、熊人族で構成された第一分隊の総合力は、第二騎士団でも上位であることは言うまでもない。


カルアの実力も折り紙付きだけど、副隊長を務めている熊人族のアレッドという子も中々の実力を持っている。


まぁ、アレッドは戦うより歌や音楽が好きな優しい子だけどね。


それから間もなく、次の子が前に出た。


「陸上隊第二分隊所属、分隊長、馬人族のゲディング。主な任務は第一分隊と同じですが、第二分隊は馬人族で構成されております。従いまして、馬人族の移動速度を活かして領内でも遠方の任務を受け持つ事が多いです」


ゲディングはあまり感情が籠っていない声で淡々と告げる。


彼は少し褐色の肌に加えて、黒い長髪と鋭い黒い瞳をしている馬人族の男の子だ。


バルディアにやって来た時の彼は、病に侵されていたから鉢巻戦には参加していない。


そして、病から回復して訓練に参加するとその頭角を直ぐに現した子でもある。


当初は無口で暗い子だったんだけどね。


同じ馬人族のマリスというちょっとぼんやりした不思議な女の子と接する内、大分明るくなって実力も申し分ないから分隊長に抜擢したというわけだ。


なお、第二分隊の副隊長はそのマリスが勤めている。


彼女は不思議な子だけど、意外にも潜在能力だけならここに居る馬人族の中で一番という評価を下されているんだよね。


ただ、性格的な問題から副隊長に収まっている感じだ。


あと、総じて馬人族の子達は他の獣人族の子達と比べて足が速く、加えて持久力がある子が多い。


瞬発力や加速力だけなら、馬人族に負けない子が他の部族でもちらほらいるんだけどね。


部族全体を通して一定以上の足の速さと持久力を兼ね備えているのは、馬人族が群を抜いていた。


その為、ゲディングの言う通り、第二分隊の主な任務値は領内の端や領外で受注した道路整備などになるわけだ。


程なくして、彼が一歩下がると次の子が前に出る。





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