第236話 屋敷に戻って

湯浴みが終わり脱衣所で服を着ていると、ドアの向こう側からディアナの声が聞こえて来た。


「リッド様。ライナー様より、部屋に来る前にサンドラ様の診察を受けるようにとのことです」


「サンドラの……? わかった、もう着替え終わるからもう少し待って」


彼女が屋敷に来たということは父上が会場にからこちらに戻る前に、誰かを通じて指示をだしたのだろう。


でも、どうしてだろう? と疑問抱きつつも着替え終わった僕は脱衣所を出た。


「お待たせ。サンドラは、どこで待っているのかな」


「サンドラ様は、応接室にてお待ちでございます」


「わかった。じゃあ、行こうか」


僕はディアナの答えに頷くと、足早にサンドラが待つ応接室に急ぐのであった。



「ごめん、サンドラお待たせ」


「いえいえ、気にされないで下さい」


応接室にノックして入ると、サンドラが僕に向かって頭をペコリと下げる。


彼女に頭を上げてもらうと僕は問い掛けた。


「それにしても、僕の診察ってどういうこと?」


「ふふ、単純にライナー様が、とてもご心配されているんですよ。ナナリー様のこともありますから、リッド様が魔力を使うことを気にされているみたいです」


「あ……そういうことか。また心配かけちゃったな」


彼女との会話で、レナルーテで気絶してしまった時のことを思い出す。


あの時も、父上は僕の体調をとても心配していた。


あの時とは違い、気絶はしていないがそれなりに魔法を見せていたので心配させてしまったのだろう。


少し俯いた僕を見たサンドラは、笑みを浮かべる。


「さぁ、それでは診察を致しましょう。体で腕や足など違和感や、魔力の流れがおかしいと感じるところはありませんか?」


「うん、大丈夫だよ」


彼女は、僕の体の動きや魔力の流れなど様々な部分を診察してくれる。


しかし、その間に僕は何度も強烈な眠気に襲われて目をこすっていた。


その様子にサンドラが気付き、心配顔を浮かべる。


「リッド様、どうされました? 何か、目に違和感がありますか?」


「いや……何だか、眠気が凄くてね。ちょっと疲れたのかも知れないね……」


こんなに一日で魔法を使い、動き回ったのは初めてかもしれない。


訓練では、ここまで疲れたことはない。


恐らく僕も気付かぬうちに緊張していたのだろう。


眠そうな僕の顔を見たサンドラは、ニコリと微笑む。


「そうでしたか。では、今日は早めにお休みになって下さいね」


「うん。そうするよ」


サンドラの診察が終わり、お礼を言うと僕は応接室を後にする。


そして、父上が待つ執務室にディアナと一緒に移動するのであった。



「父上、よろしいでしょうか?」


「うむ、入れ」


僕は父上の返事を聞いてから、執務室のドアを開けてディアナと共に入室する。


執務室には、父上とガルンの二人がおり、事務作業に勤しんでいたようだ。


父上は僕が部屋に入ると、事務机からおもむろに立ち上がる。


そして、いつものように僕達は机を挟んでソファーに座った。


僕は目を擦りながら、ガルンに話しかける。


「ガルン、ごめん。紅茶を濃いめでもらってもいいかな」


「畏まりました。ライナー様は如何いたしましょう」


「そうだな、私も頼む。リッド、ところでどうした。目でも痛むのか?」


父上の目には少し心配の色が浮かんでおり、僕は首を軽く横に振りながら苦笑しながら答えた。


「いえ、少し眠気が強いんです。でも、父上が呼んでくれたサンドラの診察も受けて異常はないと言われましたから、大丈夫です」


「そうか。なら良いが、あまり無茶はするなよ」


「はい、そうします」


僕が返事をすると、父上は咳払いをしてから面持ちを厳格なものに切り替える。


そして、僕への問いかけを始めた。


「さて、疲れているところ悪いが『鉢巻戦』においてのお前が見せた『魔法』について教えてもらおうか。なんだ、あの様々な魔法は。見た事のないものが多すぎる。あれは、すべてお前が創りあげたものなのか?」


「は、はい。仰る通りです。その……事後報告になり申し訳ないのですが、一つご報告がありまして……」


「ふむ、言ってみろ」


父上は、厳格な面持ちのままに僕を見据えている。


と、その時、ガルンが紅茶を机の上に置いてくれた。


「お話し中失礼致します。リッド様、ご要望の通り、すこし濃く淹れております。お口に合わない時はお申しつけください」


「うん。ガルンありがとう」


早速、淹れてくれた紅茶を口にする。


いつもよりは確かに濃ゆいがこれはこれで美味しい。


僕は、ガルンに視線を向け「美味しいよ、ありがとう」とお礼を伝えた。


ガルンは僕の言葉にニコリと微笑んで、ペコリと頭を下げる。


手にした紅茶を机に置くと、僕は父上を見据えて深呼吸をしてからおもむろに口を開く。


「僕は……属性魔法に必要な全部の属性素質を持っています……‼」


「ほう……」


父上は僕の発言に厳格な面持ちを崩さずまま相槌をする。


特に驚く様子はなく、逆に僕はきょとんとしてしまう。


「あ、あれ……驚かないのですか?」


「はぁ……驚いてはいるぞ。いや、報告の『遅さ』に呆れているというべきかもしれんな」


父上はやれやれと首を横に振って視線をディアナに向ける。


その瞬間、僕はハッとして彼女に振り向いた。


「ひょっとして、報告していたの?」


ディアナは僕の視線に気付き、少し決まりが悪そうに咳払いをする。


「リッド様、差し出がましいことをして申し訳ありません。ですが、魔法に必要な属性素質をすべてお持ちという重要な情報は、ライナー様に御報告をしないわけにはいきませんでした」


彼女は言い終えると同時に頭を僕に向かって深々と下げる。


僕は慌ててディアナに顔を上げるようにお願いすると、話を続けた。


「いやいや、そんなに気にしなくて大丈夫だよ。それに、ディアナの立場を考えれば当然のことだし……むしろ、僕が変な気を遣わせてごめんね」


僕の言葉を聞いた彼女は、少し安堵したような面持ちを浮かべている。


すると、父上が厳しい眼差しを僕に向けた。


「全くだ。主人であるべきお前が、従者であるディアナに気を煩わせてどうする。どうせ、私に報告すれば魔法を制限されると思ったのだろう? だがな……何も知らず、突然報告されるほうが対応に困る、といつも言っているはずだ」


「う……返す言葉もありません」


鋭い指摘に僕はたじろいで気まずい顔を浮かべた。


やれやれと首を横に振った父上は、話しを続ける。


「お前が全属性持ちということは、バルディア家の一部の者。あとは、サンドラにも伝えているぞ。もっとも彼女は心当たりがあったようで、そこまで驚いてはいなかったがな」


「あはは……そ、そうだったのですね。ちなみに、なんで僕に直接お尋ねにならなかったのですか?」


サンドラまで知っていたとは驚愕だ。


彼女の性格から知れば、色々尋ねてきそうものなのに。


それをしなかったということは、父上から固く口留めされていたのだろう。


でも、何故そこまでして僕を泳がせたのだろうか? 気になったので尋ねたのだが、父上はニヤリと意地の悪そうな笑みを浮かべた。


「そんなの決まっているではないか。全属性持ちという稀有な存在であることを知ろうが知るまいが、リッドの行う魔法の探求を、バルディア家発展の為に止めるわけにはいかん。むしろ、私が知ってしまえば公認されたと調子に乗るだろう? ならば、泳がせていたほうがバレないようにと多少は大人しくすると判断したまでだ。それに、いずれ私に話すつもりだったのだろう?」


「それは……そうですけど……僕は、父上の掌で泳がされていたんですね。あー……でも、そうか‼ ということは、これからは父上の公認ということで、大手を振って探求に勤しんでも大丈夫ということですね」


僕は少しシュンとなり俯くが、すぐに表情を切り替えて目を輝かせる。


確かに、父上の言う通りだ。


もっと早い段階で相談すれば、こそこそと魔法の探求をする必要はなかった。


むしろ、早く伝えてその為の簡易的な施設を、鉢巻戦の会場のように作れば良かったのだ。


しかし、僕の好奇心に満ちた顔を見た父上は、眉を顰めた。


「愚か者め……そんなことを言うのが目に見えていたから、泳がされていたというのがわからんのか⁉」


「あう……す、すみません。また、返す言葉もありません」


父上は僕の言動に額に手を添えながら、やれやれとまた首を横に振っている。


そして、ゆっくりと僕に視線を戻した。


「それで、鉢巻戦で使った魔法の数々はなんだ。見たことがない魔法や様々な属性もあったように見えたぞ」


「そうですね。では、説明しますね」


その後、僕は父上に鉢巻戦で使った魔法についての説明を始める。


話の内容に、父上は表情を崩さずに聞いていたが、ガルンやディアナはときおり目を丸くしているようだ。


大体の説明が終わると父上は思案顔を浮かべた。


「ふむ……ちなみに、お前は鉢巻戦で見せた魔法を観客席に者達が理解できると思うか?」


「いえ、魔法を見たことがある者は領民でも少ないと思いますから、僕が全属性持ちであることを理解出来た者はほとんどいないはずです。恐らく、対峙していた獣人族の子達も、僕が全属性持ちであるとは思っていないはずです」


僕が会場で遠慮なく魔法をたくさん使った理由はいくつかあった。


一つは、魔法の可能性を領民に示して理解してもらう為だ。


魔法は現状では広まっておらず、一部の貴族、冒険者や軍、騎士が必要に応じて修練して使う程度。


平民の間では使うことがまずない。


つまり、あの場にいた領民達は、魔法を見たのが恐らく初めての人も多かったはずだ。


そんな状況で、僕がどんな魔法を使ったかなんて理解出来る人は皆無だろう。


でも、魔法でこんなことが出来ると僕が示せば、興味を持ち、自身の子供達には使えるようになってほしいと思うきっかけになるかもしれない。


残念ながら、この世界において平民の子供は労働力と一緒であり、農業や家の手伝いをしていることがほとんどだ。


だけど、そうしなければ人手が足りないのである。


前世の記憶にあるような、電気、水道、ガスなどはこの世界に存在しない。


当然、機械なんてものもなく、あるのは人力だ。


そうなれば、子供も貴重な労働力となるのは当然でもある。


しかし、子供達がいずれ魔法を使えるようになれば、労働状況は改善され様々な文明開化の走りに繋がるはずだ。


その為に教育課程を試作して、獣人族の子達で試すのである。


父上もそれを理解したからこそ、僕が行うことを領主として応援してくれているのだ。


そして、二つ目は単純に一部の子達が使った『獣化』が想定外で想像以上に強力だった。

最早、魔法を使わされたとも言っていいだろう。


獣人族の子達は『力が無い』として売られた子もいれば、金になる、厄介払いなど様々な理由で売られた子がいると聞いている。


それに、彼らはここに来るまでまともな衣食住に在りつけていなかった。


その為、獣人国で捕まった時は体力が落ちていたり、他にも様々な要因でほとんどの子が思うように力を出せなかったのだろう。


しかし、ここ数日の食事や休息によって本来持っている力を出せるほどに、体力が回復していたと思われる。


まぁ、仮にそうだとしてもその回復力には驚かされるけど。


父上は僕の答えにゆっくりと頷いた。


「ふむ、その認識はあながち間違っておらん。貴族である私自身、すべての属性魔法を見たことは無いからな。だが、軽率だったことは否めん。次からはもっと慎重に行動しろ」


「はい……承知しました」


父上は僕の返事を聞くと、呆れ顔を浮かべながら額に手を添えてため息を吐いた。


「はぁ……いつも返事だけは、良いのだがな……何度も同じようなことをしていると、いい加減に理解してほしいものだ」


「あはは……肝に銘じます……」


それからしばらくの間、父上からやんわりとお説教を受けるので僕であった。



「リッド、ちなみに……メ、メルのことだが、護身術とはいえ魔法は程々にな」


「はい。承知しております。属性素質を確認してからになりますが、サンドラとも相談して進めていきますのでご安心ください」


「いや……だからこそ、気掛かりなのだが」


父上が不安顔を浮かべた時、執務室のドアがノックされダナエの声が響く。


「お話し中に大変申し訳ありません。その……メルディ様が、リッド様とご一緒に、ナナリー様のお部屋に行くお約束をしたと、こちらでお待ちなのですがいかがでしょうか?」


「にいさま……まだかかる……?」


ダナエに続き、メルの落ち込んだ声も聞こえてきた。


父上が思わず僕に怪訝な視線を向ける。


「なんだ、リッド。メルと約束をしていたのか?」


「す、すみません。終わり次第、連絡をするとメルには伝えていたのですが……」


僕が困惑した様子を見せると、ガルンがニコリと微笑みながら会話に参加する。


「大変僭越ですが、お二人が話始めてそれなりの時間が経過しております。きっと、メルディ様が待ちきれなかったのでしょう」


「む……そうか、わかった。リッド、ひとまず今日はもう良い。お前も疲れているだろうからな。しっかり休むのだぞ」


「はい、ありがとうございます。では、今日はこれにて失礼致します」


僕は父上に答えながら、立ち上がり一礼するとそのまま執務室をディアナと共に後にする。


執務室の外に出ると、気まずそうな面持ちのダナエと、しょんぼりしたメルがいた。


「リッド様、お話し中とわかっていながら、大変申し訳ございませんでした」


ダナエが突然に深々と頭を下げる。


メルもハッとしてペコリと僕に頭を下げた後、シュンとしたままに話し始めた。


「ダナエはわるくないの。わるいのはわたしなの……ごめんなさい。でも、どうしても、にいさまといっしょに、ははうえのところにいきたかったの。ははうえに、にいさまのかつやくを、おしえてっていわれていたから……」


「そっか、僕こそ父上との話が長くなってごめんね。途中で遅くなるって連絡するべきだったね。ほら、メルもダナエも顔を上げて元気を出して、僕も父上も気にしていないよ。それよりも、ほら元気を出して母上のところに行こう」


「……‼ うん、にいさまだいすき」


メルが明るい声を出して僕に抱きつくと、執務室のドアが開く。


そして、父上が姿を見せて咳払いをした。


「……リッド、ナナリーのところに行くのであれば、後で私も顔を出すと伝えておいてくれ。それから、メル。約束を知らぬとはいえ、リッドを引き留めて悪かったな」


父上の言葉を聞いたメルは、父上に抱きつき「ちちうえもだいすきだからね‼」と上目遣いをしながらパァっと微笑むのであった。



その後、僕とメルは母上の部屋に移動する。


母上は僕達の訪問をとても喜んでくれた。


僕が『鉢巻戦』を行い、参加することは聞いていたようで興味津々と言った様子だ。


僕は、改めて開催するまでの経緯、そして今後の方針などを軽く説明すると、母上はとても感心して褒めてくれた。


隣でその様子を見ていたメルは、僕が褒められたことを喜んでくれたのか、手振り身振りを使って鉢巻戦の様子を楽しそうに話していく。


それはいいのだが、何かがおかしい。


メルは、僕が武舞台上で使った言葉遣いまでしっかりと再現しているのだ。


最初は笑っていた母上だったが、その目は段々と光が消えている気がする。


僕はその様子に戦慄を覚え、冷や汗を掻いていた。


しかし、メルは楽しそうに話を続ける。


「えっと、それでね……そう‼ うさぎのこたちをたおしたあとにね……にいさまはこういっていたの‼」


「ふふ……リッドは、なんて言ったのメル」


母上、口では笑っているけど目が笑ってない。


そんな母上の様子を知ってか、知らずかメルは満面の笑みを浮かべた。


「うん、すっごくこわいかおしてね、『ぶぶたいにいるみんなをじゅうりんしつくす』っていってたの。そしたら、みんなすごくびっくりしていたみたい。でも、ははうえ、『じゅうりんしつくす』ってどういういみなの?」


「ゴホゴホ‼ メ、メル、なんでそんなことを知っているの⁉ 観覧席からじゃ、いくらなんでも聞こえないでしょ‼」


メルは、目を輝かせながら母上にとんでもないことを尋ねてしまい、僕は思わず咳込んでしまう。


しかし、メルはきょとんとした顔をした後にハッとすると、ニコリと笑みを浮かべた。


「あ、それはね。カペラがおしえてくれたの。にいさまが、なにをはなしているかしりたいっていったら、にいさまのくちのうごきでわかるって」


「な……⁉」


カペラ……恐るべし‼ さすが、元レナルーテの暗部なことだけはある。


でもこの時、僕は失念していた。


『聞こえないでしょ‼』と聞き返すということは、言ったことをすなわち認める事である。


その瞬間、何やら悪寒が走り、僕は恐る恐る母上に振り向いた。


すると、母上から見たことも、感じたこともない、冷たい眼差しが向けられているではないか。


僕は顔を引きつらせながら、母上に弁明を始める。


「あ、いえ、その母上、これには深い事情がありまして……」


「ふふ……貴族の子息であり、獣人族の子達を導こうとする、あなたが、そんな言葉遣いをするなんてね……さぞ、深い事情があるのでしょう。では、その事情とやらを、この母にすべて包み隠さずに話して頂きましょう」


「は、はい……承知しました……」


これはダメだ。


母上の目の色は完全に冷え切っている。


僕が観念してズーンと暗くなるのに対して、メルはきょとんとして首を傾げている。


その時、ディアナがわざとらしく咳払いをした。


「メルディ様、ダナエ。私達がこの場にいては、お二人がするお話の邪魔になってしまいます。ここは、部屋の外で待ちましょう」


「え……⁉ あ、そうですね。それにそろそろ良い時間になってきています。メルディ様、続きはまた明日に致しましょう」


「うん、わかった。えへへ、母上また明日ね」


「ええ、メル。また明日、話しましょう」


僕がズーンと俯き暗くなっている間に、気付けばディアナとダナエ、そしてメルは部屋を出ていってしまう。


部屋が僕と母上だけの二人になると、急に室温が下がり始めた気がする。


僕が恐る恐る顔を上げると、そこには冷たい威圧感に包まれた……言うなれば般若のような雰囲気を纏った母上の姿があった。


「さぁ……リッド、貴族の子息として母に話してもらいましょう」


「は、はい……」


こうして僕は、武舞台で行ったことをすべて包み隠さず、洗いざらい母上に伝えることになる。


そして、「如何なる理由があろうとも、貴族の子息の言葉遣いと態度にあらず。調子に乗り過ぎです」と父上以上にお叱りを受けるのであった。



「はぁ……早く元気になって、あなたをもっと近くで見守らねばなりませんね」


「……ははうえ……すみません」


「……⁉ リッド、どうしたのです⁉」

母上からのお叱りを受けていた僕だが、鉢巻戦、父上との話し合い、そしていまと、疲れと眠気が限界に達しつつあった。


その為、だんだんと意識に途絶え始めて、無意識に頭が船をこぎ始めてしまう。


母上からの声が聞こえた気がした僕は、必死に言葉を紡ぐ。


「お話し中なのに……すみません……もう、眠気が限界で……少しだけ……少しだけ、母上の横で寝させてもらっていいですか?」


「え、ええ、いいわよ。こちらにいらっしゃい」


母上に招かれるままに、ベッドに入り込む。


そこはとても心温まる場所であり、僕は気付かぬうちに深い眠りについてしまった。


翌日、母上の横で目を覚ました僕は、気恥ずかしさで顔を真っ赤にしてしまう。


それと同時に、母上の部屋を尋ねてきたメルに寝ていたところを見つかり「にいさまだけははうえといっしょにねるなんて……ずるい‼」と怒られるのであった。






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【お知らせ】

2022年7月8日、第10回ネット小説大賞にて小説賞を受賞致しました。

そして、本作品の書籍化とコミカライズ化がTOブックス様より決定!!


書籍は2022年10月8日に発売致します。

また、TOブックスオンラインストアにて現在予約受付開始中!!

※コミカライズに関しては現在進行中。


近況ノートにて、書籍の表紙と情報を公開しております。

とても魅力的なイラストなので是非ご覧いただければ幸いです!!

※表紙のイラストを見て頂ければ物語がより楽しめますので、是非一度はご覧頂ければ幸いです。


近況ノート

タイトル:書籍化のお知らせ&表紙と情報の公開!!

https://kakuyomu.jp/users/MIZUNA0432/news/16817139557186641164


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