第197話 移送団・二台目②

「獣人族は個性的な子が多いね」


ある程度の受け入れ作業が終わり、獣人族の子達を見た感想を僕はおもむろに呟いた。


不思議な馬人族の子の後も、最後の荷台からは様々な子達が次々と降りて来たのだ。


狸人族で、美少年の三つ子の男の子。


鼠人族の小気味よい三姉妹。


体格が大きいのが特徴の牛人族の気弱な男の子。


八重歯と尻尾、少し尖った耳をした猿人族の兄妹。


皆それぞれに特徴があって、愉快な子達だったと思う。


「そのようですね。それぞれに色々と鍛えがいがありそうです……特にあの猫人族の『ミア』でしたか……彼女はしっかりと教育せねばなりませんねぇ」


「ディアナ様の仰る通りです。ですが、リッド様ご安心ください。私達で作り上げた『教育課程』で、獣人族は皆しっかりと教育致します」


僕の呟きを両隣で聞いていたディアナとカペラの二人が畏まった様子で答えてくれた。


カペラは淡々としているが、ディアナには少し黒いオーラを感じる。


猫人族の少女に言われた『メイドのおばちゃん』を根に持っているのかもしれない。


そんな二人の様子に思わず苦笑する。


「あはは……優しくしてあげてね」


 二人はニコリと意味深な感じで微笑み、僕の言葉に頷いた。


その時、荷台から獣人族の子を降ろす作業をしている、ルーベンスの声が辺りに響く。


「この子達で最後です‼」


「……‼ わかった‼」


彼の声がするのと合わせて、僕は馬車の荷台にゆっくりと近寄っていく。


すると、今までは騎士に抱えられて降車する子が大半だった。


だけど、いま出て来ている子達は一人ずつ自身の足で、のっしりと降りて来る。


その光景を見て僕は少し驚いた。


「あの子達、大きいね。牛人族の子も体格が良い子が多かったけど、それと同等な感じかな」


「彼等は、熊人族でございます。獣人族において体格は牛人族と同等。戦闘力に関しては、獣人族の中では上位に入る種族と聞き及んでおります」


僕の呟きに答えてくれたカペラは、言い終えると会釈する。


「そうなんだね。説明ありがとう、カペラ」


彼にお礼を言い終えた後、荷台に視線を戻すと少しオドオドした子が降りて来た。


体格は良いけど、顔は年相応な感じかな? そう思っていると、ルーベンスの声がまた轟いた。


「この子で最後です」


おお、これでようやく受け入れ作業の第一段階が終わる。


そう思っていると、最後の子が荷台から、ずっしりと降りて来た。


でかい、それが彼に抱いた最初の僕の感想だ。


いや、熊人族や牛人族の子達は皆体格が良かったけど、最後に降り立った熊人族の子は体格だけじゃない。


すでに体が鍛えられている感じがする。


彼は荷台から降りると、辺りをゆっくりと見渡しているようだ。


そんな彼と僕の目が合った。


僕は彼に対してニコリと微笑むと、彼は目を細めてこちらを見つめている。


そして、ゆっくりと僕に向かって歩き出した。


彼がこちらに向かってくるのに合わせて、カペラとディアナがスッと僕の前に出る。


二人の前に、彼がやって来ると改めてその体格の良さに驚かされた。


その身長は、恐らく小柄な大人をすでに超えている。


僕よりもかなり大きくて、流石にカペラやディアナよりは身長が低いけど、印象的にはあんまり変わらない感じも受けた。


二人の前で立ち止まった彼は、見定めるように真っすぐに僕を見つめている。


「……あんたが、俺達を買ったのか」


「うん、そうだね」


彼の声は見た目通りというか、重く低い。中々に魅力的な声だと思う。前世の記憶にもある、イケボというやつだろうか。






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