第124話 リッド、次なる動きの計画を考える

レナルーテから帰って来た翌日、父上は帝都に出発した。


早速、外交の報告と僕とファラの話をしてくるということだった。


僕は父上が馬車で出発すると、早速、考えを行動に移し始めた。


まず、エレンとアレックスだが、ガルンとクリスに相談して作業場がある物件を探してもらっている。


見つかり次第、あるものを最優先で作って欲しいと伝えた。


二人は「作れないわけではないですが、調べてわかっても意味ないですよ?」と怪訝な顔をしていた。


でも、僕が言うならと二人は作ってくれることになった。


カペラはガルンから執事業務を引き継ぎ中だが、折を見て彼が所属していた組織と使っている魔法について教えてもらうつもりだ。


そして、今日僕がすることはメモリーとの打ち合わせだ。


「メモリー、きこえる?」


「リッド、久しぶり、聞こえているよ」


自室で目を瞑りながら、彼の名前を呼ぶと僕の頭の中で声が響いた。


彼はメモリー、必要に応じて僕の前世の記憶を引っ張り出してくれる僕にとっての、青狸だ。


「……何か失礼なことを考えていないかい、リッド? いま、君の考えていることはなんとなく、わかるのだよ? 僕が青狸なら、君は眼鏡猿かな?」


「ごめん、ごめん、鋭いツッコミをありがとう。さて、以前、お願いしていた情報はわかったかな?」


以前お願いしていた情報というのは僕が前世でやっていたこの世界に酷似しているゲーム、「ときめくシンデレラ!」略して「ときレラ!」に出て来る登場人物の名前だ。


僕は、ゲームをした時におまけ要素を楽しむのが目的だった。


その結果、本編はすべて「未読スキップON」ですっ飛ばしている。


おかげで、リッド以外のキャラ名をほとんど覚えていない。


まぁ、帝国周辺の王族が大体攻略対象だったはずだから、最悪わからなくてもいいのだけどね。


王族で僕と年齢が近いすべてを警戒対象にしておけばいい話だ。


それに、今の僕はバルディア領から離れられないから、わかった所で何も出来ない。


することも変わらないということだ。


でも、情報が得られるならそれに越したことはないので、メモリーに記憶復活作業を頼んでいた。


「はぁ……何とか、国名、キャラクター、種族まではわかったよ。未読スキップONとはいえ、周回で何回も見ているから何とか復活できたよ。でも、1回だけのキャラ個別ルートの詳細は無理だね……」


ため息を吐いた後、メモリーは疲れ果てた様子の声を出した。でも、僕は感激の声を出した。


「おお⁉ それでも、そこまでわかったなら助かるよ。教えてもらってもいい?」


「わかった。じゃあ、リッド、今から伝えるね」


彼が言い終えると、僕の頭の中にメモリーが復活させた記憶が蘇って来た。


主人公(ヒロイン) 

マローネ・ロードピス 人族


マグノリア帝国 悪役令嬢     

ヴァレリ・エラセニーザ 種族・人族


攻略対象


マグノリア帝国 第一皇子

デイビッド・マグノリア 種族・人族


マグノリア帝国 第二皇子

キール・マグノリア 種族・人族


レナルーテ王国 第一王子

レイシス・レナルーテ 種族・ダークエルフ


ズベーラ国 第一王子

ヨハン・ベスティア 種族・獣人


ガルドランド王国 第一王子

ロム・ガルドランド 種族・ドワーフ


アストリア王国 第一王子

エルウェン・アストリア 種族・エルフ


トーガ教国 第一王子 

エリオット・オラシオン 種族・人族


「まぁ、こんな感じかな。どう、リッド? 見覚え、聞き覚えない?」


「うーん、どうだろう? ヨハンとマローネは良く使っていたから何となく覚えているけど、他の面々はあんまり覚えてないかなぁ……レイシスはもう直接会っているけどね」


メモリーにはお願いしたのに悪いが、やっぱりあんまり覚えていない。


「ときレラ!」はダンジョン攻略などするときは4人編成でチームを作る。


その時に、主人公、ヨハン、リッドで組むと回復約、物理アタッカー、補助とサブ火力が揃う。


あとは、攻略に合わせて空いている人枠に誰かを入れれば良い感じだった。


主力の三人以外は固定メンバーではなかったから、僕の中ではちょっと記憶に薄い。


どんなゲームも突き詰めると使うキャラ、編成はどうしても寄ってしまうのはしょうがないと思う。


キャラ愛で時折、色々と挑戦もするけどね。


「……大量の記憶のシュレッダーカスから、記憶を復元させて、その言い方は酷くない? ちなみに、この件の記憶の復元に関しては、これ以上は難しいと思うからそのつもりでいてね‼」


「わかった。ごめんね、本当に助かったよ。メモリー、ありがとう‼」


不機嫌そうな声を出したメモリーに僕は謝りながら早速、次のお願いをしていた。


すると、メモリーは意外そうな、楽しそうな感じの声を出した。


「……まさか、そんな知識を探せと言われると思わなかったよ。わかった。すぐ調べてみるよ」


「うん、お願いね‼」


お願いが終わると、僕は目を開けてメモリーとの通信を終えた。


「うー…ん」と体を伸ばすと、僕は呟いた。


「さて、次はカペラが所属していた組織の件と魔法について教えてもらおうかな」


今回、レナルーテに行って僕がバルディア家に足りていないものを感じていた。


それは、「諜報戦力」だ。


父上も「国でないと持てない」という趣旨のことを言っていたが、要はバレなければ良いと思う。


そもそも、バレたら「諜報機関」の意味がない。


それと、あともう一つは「魔法」だ。


彼らは暗部の為、特殊魔法や攻撃魔法とはまた違う使い方をしていることを知った。


僕は、その方法を取り入れて、新たな魔法も作ろうと思っていた。


「……さぁ、忙しくなるぞ……‼」


次の目標は父上が帝都から帰ってくるまでに、新たな事業計画案を練ることだ。


僕は、決意を新たに頑張り始めるのだった。

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