第61話 レナルーテ・リッドの次撃(3)

「さて、何故リッド殿の負けなのかな?」


僕が挙手をして負けを認めたことで、御前試合を縁側で見ていた華族達からどよめきが起こった。


レイシスは「認めないぞ‼ こんなの終わり方‼」と怒っていた。


でも、実力差を認めて引くことも時には必要だ。


あのまま、続けても彼の自己満足で終わってしまう。


それに、ザックと話した彼の改心の問題もある。


多少は響いた気はするが、まだまだ足りない。


僕達はいま本丸御殿の中で最初に案内された表書院にいる。


他の華族はいない。


いるのは僕とレイシス、エリアス王とリーゼル王妃、そして父上だ。


僕達二人はエリアスの前にレイシスと二人で並んで片膝をつけて頭を垂れている。


父上は僕の横にいるが厳格というより今日は、疲れたような顔をしている。


それより、王になんて答えるかな。


僕は思案してからおもむろに言葉を紡いだ。


「……それは、エリアス陛下が一番おわかりかと存じます。レイシス王子と私の試合を見て、どう思われたか是非お伺いしたいです」


「……クッ」


隣にいるレイシスが悔しそうな声をだした。


エリアスはその様子を鋭い眼光でみる。


そして、そのまま僕を見てから吐き捨てるように言った。


「レイシスの完敗だ。最初は諦めずに戦うさまも良かったが、途中からはただ負けたくないと意固地になっているだけであったな。リッド殿が恐らく何度か敗北を認めるように進言したはずだ。レイシスどうだ? リッド殿からあったのではないか?」


エリアスの指摘はレイシスの心に鋭く突き刺さる。


確かに最初は挑戦だった。


だが、途中からは負けを認めたくないだけだった。


リッドが致命的な攻撃をしてこないことがわかっていたからだ。


それを、恐らくここにいた誰もがわかっていたのだ。


レイシスは理解して体を小刻みに震わせながら顔をあげエリアスに返事をした。


「……父上の仰る通りです。リッド…殿に勝てないとわかり、最初は挑戦をしていました。ですが、途中からは自らのプライドを守るために戦っておりました。リッド殿は……手加減をして下さっていたので、それを気づかぬうちに……利用していたのだと思います」


言い終えるとレイシスは力なく頭を下げた。


その様子を見たエリアスは大きなため息をついた。


「はぁ……お前はもう少し聡明であったと思うが、何故そこまで意固地になったのだ?」


「……そうです。前のあなたはもっと、人の意見を聞いておりました。試合前にいきなり、自分が挑戦すると言い始め、リッド殿を待たせた挙句に自分だけ稽古着で挑むとは何事ですか?」


エリアスの言葉に続くように、王妃のリーゼルもレイシスを案じて思わず口を出したようだ。


そうか、試合前にリーゼル王妃が揉めていたのはレイシスが急に僕の相手を名乗り出たからか。


僕は試合前の光景を思い出して納得した。


でも、そうなると王妃はノリスの影響を息子が受けていることを知らないことになる。


そして、レイシスも伝えていないのだろう。


両親の言葉にレイシスはただ、俯いて黙っているままだ。


このまま黙秘するつもりだろうか。


すると、エリアスが僕に鋭い眼光を向けてから質問をしてきた。


「しかし、リッド殿は何故あのような試合をしたのだ? 貴殿の実力であればレイシスを気絶させることはたやすいはずだ。それを、見方によってはまるで何かを教え、諭すような試合であった。どういう意図があったのだ?」


エリアスの言葉にリーゼルは目を丸くした。


父上は首を横に振るだけ。


レイシスは苦虫を噛み潰したような顔をしている。


恐らく、本人は理由がわかっているのだろう。


でも、本人からは言うつもりはないらしい。


ならば、子の不始末は親の不始末になることを教えよう。


僕はエリアスの顔を見て言葉を紡いだ。


「……僭越ですが、人払いをお願いしてもよろしいでしょうか。父上も席を外してください。私とエリアス陛下、レイシス王子、リーゼル王妃の四名だけで話したいことがございます」


父上は僕の言葉を聞くとスッと立ち上がり、僕に近づくと耳元で小さく呟いた。


「中途半端にするぐらいなら徹底的にやれ」


それだけ、僕に聞こえるように言うと襖をあけて部屋の外に出て行った。


父上も何か知っているのかな? 


僕がそんなことを考えている間に、エリアスは兵士を呼び人払いするように命じた。


これにより、誰からも邪魔もされない。


「これで、よいか? では、理由を聞かせてもらおう」


僕自身から言う前に、レイシスに最後の機会を与える意味であえて無言の時間を作った。


横目で彼の様子を見ると、下唇を噛みしめ震えているようだった。


少し、静寂の時間が流れる。


だが、レイシスは言葉を言い出せなかった。


言いだそうとした雰囲気はあったが、結局、下唇を噛みしめ黙秘をしている。


わかっているだろうに。


僕はこの時、レイシスが年相応の子供にしか見えなくなった。


そして、そんなレイシスの心を弄んだノリスに嫌悪感を抱くのを感じた。


だが、彼の今後の為にもいまは心を鬼にすべきだろう。


「……では、申し上げます。彼は試合開始の前に私にあることを言いました」


「あることだと?」


エリアスの雰囲気が変わる、それは王として威圧感、貫禄というべきか部屋の雰囲気も合わせて厳格なものになった。


僕はその威圧感に気圧されず、物申した。


「はい。レイシス王子はまず『尻尾を巻いてマグノリアの田舎に帰るのだな』と私に仰いました」


彼の言った言葉を伝えた時に、エリアスの顔の眉間に皺がよった。


そして、リーゼル王妃は目を丸くしている。


レイシス王子は俯きながら震えているだけだ。


僕はさらに続けた。


「いま、お伝えした言葉はまだ、子供同士の言い合いであると理解しました。ですが次に王子の言った言葉は看過できませんでした」


「レイシスは……レイシスはなんといったのですか……?」


意外なことに僕の言葉を聞きたがったのは王妃のリーゼルだった。


それは、自分の子供を愛する目。


僕の母上と同じで我が子を案じている目だった。


リーゼルの雰囲気に、心苦しい気持ちもあるが父上の言った通り、中途半端にするぐらいなら徹底的にすべきだ。


と、心を鬼にして容赦はしない。


「レイシス王子が言った言葉をお伝え致します。『お前の母親は長い期間、病に伏せっているそうではないか? そもそも、病気の一つも治せない病弱な母親を持つお前に剣など握れるのか? 剣を持つより、母親のおっぱいでもしゃぶっているのがお前にはお似合いだぞ?』とこのように仰いました」


僕の言葉を聞いた王妃は驚愕した顔をした後、嗚咽を出して涙を流し始めた。


エリアスは僕の言葉を聞いても冷静な様子を崩さない。


彼はレイシスに目をやると、重々しく問い正した。


「レイシス、いまリッド殿が言ったことは本当か?」


「……」


エリアスの問いにレイシスは黙ったまま、俯いている。


だが、それはこの場に置いて相手の怒りを買うだけだった。


その姿を見た時、リーゼルとエリアスは僕の言ったことが事実であると理解した。


そして、エリアスが声を発した。


「この、痴れ者が‼ レイシス、貴様はこの国の王子であり、言動には責任が伴うと以前から教えていたはずだ‼ それがなんだ、同盟国の貴族の息子であり、妹の婚姻候補者に向かいなんたる口の訊き方か‼ 恥を痴れ‼」


その怒号は恐らく本丸御殿の中に響いたと思うほどの大きさである。


僕は冷静に人払いの意味は? 


と、思ってしまったがここは成り行きを見守ることにした。


「……」


それでも、レイシスは沈黙をしている。


彼の何がそこまで沈黙を守らせるのか? 


だが、その態度は先ほど同様にさらにエリアスの怒りを買った。


「そうか、口もきけぬと申すのだな……ならば、その首はいらんと見える‼」


エリアスはそう言うと、彼が座っていた後ろに飾ってある「刀」らしき物、というか刀を手に取った。


そして、勢いそのままに刀を抜いて刃先をレイシスの俯いた顔先にゆっくり向けた。


すると、レイシスはようやく顔を上げて口を開いた。


「……申し訳ありません。リッド殿が言いましたこと、すべて事実でございます」


「ようやく、口を開いたか。では何故そのような世迷言を申した‼」


王妃のリーゼルは顔を隠し嗚咽を漏らしている。


レイシスは刀の刃先を顔の前にもって来られているが、エリアスの目を見据えて話し始めた。


「父上、ファラはまだ6歳でございます。そのような幼き子供を婚姻させるべきではありません。それにさせるにしても、マグノリアの皇族とさせるべきです。それこそがレナルーテの未来と妹が幸せになる道なのです……‼」


レイシスの言った言葉は恐らくノリスが刷り込んだことだろう。


ひょっとすると、レイシスの性格からこうなることまで見越していたのでは? 


と、思うほどレイシスはノリスに心酔していたのだろう。


おそらく、今の言葉でエリアスも気付いた様子だ。


だが、王としての立場がレイシスを許すわけにはいかない。


「この、痴れ者が‼ 貴様はその言葉の意味を真に理解して言っているのか‼ 王族とは人ではない‼ 国を回す歯車になるべき存在だ‼ それが王族に生まれた者の務めだ‼ 貴様は妹の為といっているが、皇族との婚姻が本当に妹の為になるとおもっているのか⁉」


「皇族はマグノリアで最高位の位でございます。王女であればその位を頂くべきでございます」


エリアスの迫力に負けず、レイシスははっきりと言葉を紡いだ。


しかし、その言葉を聞いたエリアスは、首を横に振ってから吐き捨てた。


「浅はかだ‼ 貴様は何も自分で考えておらん‼ マグノリア帝国はわが国より国土が大きく、国として強かだ‼ そこに妹を送るだと? 貴様は妹が可哀想だといいながら、権力欲の為に、レナルーテ以上の伏魔殿、歯車とならねばならない世界に妹を送り込もうとしているのだぞ‼」


「そ、そんな……嘘です、マグノリア帝国の皇族に嫁ぐことこそ、妹の幸せに繋がるはずだと……」


「貴様は自分で何も考えておらん‼ その証拠に我が言葉に返せる、言葉を持っておらぬではないか‼ どこぞの、受け売り言葉など王子が使うべき言葉ではない‼」


「……」


レイシスはエリアスに指摘されたことで自分が妹のためと言いつつ、結果は権力欲に繋がっている矛盾に気付いたのだろう。


その瞬間、レイシスは泣き始め、自分の愚かさを真に自覚した。


そして、エリアスの刀を避けながら僕に姿勢を向けると、畳に頭を付けながら謝罪の言葉を並べた。


土下座である。


「リッド殿、大変申し訳ありませんでした。私が、私が浅はかでありました。他人の言葉に踊らされ貴殿に言ってはならない言葉を浴びせました。本当に申し訳ございません‼」


僕はあまりの修羅場に呆気に取られていたが、レイシスの謝罪の言葉で一瞬だけ我に返った。


「いや、そこまでしなくても……」


僕の前で土下座しているレイシスに優しく声をかけようとするが、王にさえぎられた。


「レイシス、これはもはや貴様の謝罪ですむ問題ではない、わかっているな?」


「はい、承知しております……」


僕の言葉を聞かずに話を進める二人に、僕はまた呆気に取られた。


何をするつもりだろうか? 


そう思って怪訝な目でレイシスを見る。


すると、僕に対して彼は優しく言った。


「リッド殿であれば、妹をきっと幸せにして頂けると思います。どうか、妹をよろしくお願いいたします……‼」


「……へ? は、はい」


いきなりの優しいレイシスでびっくりしながら僕は返事をした。


すると、彼は微笑み、その場で正座をして姿勢を正した。


そして目を瞑り、何やら覚悟の雰囲気が流れている。


「……父上、ご迷惑をおかけしました」


「痴れ者が……‼」


エリアスはレイシスの横に立ち、刀を上段に構えている。


やばい、これはあれだ。


時代劇で見る切腹的なやつだ。


僕が咄嗟に声を出そうとすると、先に王妃のリーゼルがエリアスの足にしがみついた。


「エリアス陛下‼ レイシスはまだ子供でございます‼ 間違いを起こして当然でございます‼ どうか、どうかご慈悲をお願い致します……‼」


リーゼル王妃は言葉を並べながら、レイシスを守る様に彼らの間に入り土下座をして、エリアスを必死に止めようとしている。


レイシスはその母親の姿をみて、涙を流して嗚咽を漏らす。


そして震える声で、リーゼルに言った。


「母上、良いのです。私はそれだけのことを致しました。その罰は受けねばなりません」


「レイシス……」


覚悟を決めたレイシスは母であるリーゼルを抱きしめる。


そして、お互いに涙を流して今生の別れというべき雰囲気となっていた。


その後、レイシスはエリアスを見据え、言った。


「父上、最期のお願いがございます」


「……なんだ」


「母上のことをよろしくお願いいたします。エルティア様と同様に大切にするように、心からお願い致します……」


レイシスの言葉を聞いたリーゼルは驚愕を隠せず、また嗚咽をこぼして泣き始めた。


エリアスはすべてを理解した。


そして、忌々し気に「……あの老獪め」と小さく呟くと、レイシスに向かって言った。


「リーゼルもエルティアも大切な妻だ。一度たりともどちらかに傾斜したことはない。レイシス、貴様は……踊らされたのだ」


レイシスもエリアスの言葉で察したのだろう。


だがその顔は死を覚悟しているせいか、涼しいもので、エリアスの言葉にも優しく返事をした。


「さようでございましたか。ですが、そうだったとしても、私のしたことが帳消しになることはありません」


「その意気やよし。では、いくぞ……‼」


エリアスは刀を振り上げ集中し始める。


レイシスは覚悟を決め姿勢を正している。


リーゼルは嗚咽を漏らしてしゃがみ込み泣いている。


いま、まさにレイシスに断罪の時が訪れようとしていた……‼






その時、修羅場の雰囲気に飲まれていた僕はハッとした。


違うこれは僕が思っていた状況と違う‼ 


咄嗟に大声で叫んだ。


「エリアス陛下、お待ちください‼ 僕はレイシス王子にそのような処罰は求めておりません‼」


僕の言葉にエリアス、レイシス、リーゼルの動きが止まった。


この場を収拾するためにどうすべきか考えながら急いで言葉を紡いだ。


「そ、そもそも、僕がレイシス様にあのような試合をしたのは悔い改めてもらう為であり、決してこのような断罪を求めていたわけではありません‼ それに、レイシス王子はファラ王女の兄上です。つまり、ご縁を頂いた折には我が兄となるお方です。そのような方をこんなことで失いたくはありません‼」


僕の言葉を聞いて、三人とも雰囲気が少し変わった。僕はさらに言葉を続けた。


「それに、レイシス様とのやりとりは私とこの場にいる皆様しか知りません。だからこそ、父上にも席を外して頂いたのです」


僕の言葉を聞いたエリアスの表情に少し迷いが見て取れる。


僕はさらに畳みかける。


「そ、そうです。今回の件を不問とする条件として何点かお願いがございます。それを聞いてからレイシス様の罰を決めて良いのではないでしょうか? 僕としては将来の兄となる方の命より、これからの繋がりを大切にしたいのです」


エリアスは僕の言葉を聞きニヤリと笑みを浮かべる。


そして、刀を鞘に納めて最初に居た場所に戻り、椅子に腰をおろすと言った。


「よかろう。条件とやらを申してみよ」


良かった、恐らくエリアスも落としどころを探していたのだろう。


というか、ひょっとして僕が言い出すのを待っていたのかな? まさかね。


僕は少し思案してから、条件を言った。


①ファラ王女との婚姻を認めて欲しい


②商流の後ろ盾


③レイシスの罪を不問


とりあえず、いま思いつくのはこんなものだった。


実際、現時点でレナルーテに求めることなんてない。


ただ、現状の問題解決の案としては良いだろう。


僕の条件を聞いたエリアスは、怪訝な顔をした。


残りの二人は驚愕していた感じだ。


特に③を言った時にリーゼル王妃が泣いていたのが印象的だった。


するとエリアスが僕を見て言った。


「……商流と言うのは、バルディア領で有名になっている、クリスティ商会のことだな?」


「はい。その通りです。商流はお互いの発展に必ず繋がります。ですが、レナルーテでは新参の商会に厳しい部分があると伺ったので、エリアス陛下に後ろ盾になって頂きたいのです」


エリアスは「ふむ」と頷くと僕に鋭い眼光を向けて言った。


「わかった。商流の件は任せてもらおう。今度、商会の代表を連れてきなさい」


「ありがとうございます‼」


僕は一礼をしてお礼をいった。


そして、次の質問がエリアスから投げかけられる。


「レイシスの罪を不問というのはどういう意図かな?」


「意図などありません。ただ、自分の兄弟になるかも知れない方を失いたくないだけです。それに、レイシス様は悪い影響を受けただけです。先ほどの皆様のやりとりをみればレイシス様が聡明であることは明らかです」


これは本心だ。


レイシスはゲームの攻略対象なのでそもそも失うわけにはいかない。


でも、彼自身優秀であることは確かだと思う。


思い込みに囚われなければ。


「ふむ。レイシス、貴様はどう思う」


レイシスは先ほどのやりとりで僕に土下座してからは、畳の上でずっと正座している。


すると、姿勢はそのままに体をエリアスに向けるとレイシスはおもむろに言った。


「……はい。このような過ちを犯した私に、このような恩赦を与えて頂き、感服致しました。私は剣術だけでなく思慮深さ、そして人としての大きさもリッド様には敵いません。もし、機会を頂けるのであれば、一からやり直したい所存です」


エリアスはレイシスの言った発言の内容や言い方などに、今までとは違う目つき。


言うなら父上に近い目をしてレイシスを見て言った。


「ようやく、憑き物が落ちたようだな。今のお前であれば、もう大丈夫だろう」


「……父上」


「よし。リッド殿たっての願いでもある。この件は不問と致す。だが口外は当然禁止だ。よいな?」


僕を含めたエリアス以外の三人はその言葉を聞いて、一礼して意志表示をした。


「うむ。では、娘との婚姻の件だが、リッド殿はこの条件で良いのか?」


「はい。エリアス陛下、リーゼル王妃、レイシス様に認めてもらえれば、今回の婚姻は決まったも同然と思っております」


僕の言葉を聞いても、何か釈然としない様子のエリアス陛下に僕はある言葉を言うことにした。


「エリアス陛下、お耳をよろしいでしょうか?」


「うん? よかろう、くるしゅうない、近う寄れ」


僕はエリアス陛下に近づき、耳元である言葉を言った。


すると、エリアス陛下の目が丸くなり、厳格な表情が崩れ大笑いを始めた。


その様子を見ていたレイシスとリーゼル王妃は呆気に取られていた。


エリアスは笑いが落ち着いてくると言った。


「クックク、そうか、そうであったか。それであればそうだろうな。よし、娘との婚姻を認めよう。だが、今すぐ発表はできん。これも、この場にいる者だけの話とする」


エリアスの言葉に一礼で意思表示をするが、僕は父上にだけは伝えたいと話して了承をもらった。


これで、御前試合は終わった。


僕はそう思っていた。


だが、僕たちの話が終わって外に出ると、ファラ王女と護衛の少女が待ち構えていた。


そして、僕とエリアス陛下の二人に向けてファラ王女は言った。


「リッド様、どうか私の護衛である「アスナ・ランマーク」と一試合して頂けないでしょうか⁉」


「へ……?」


レナルーテでの御前試合はまだ終わっていなかったらしい。

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