第17話 属性魔法
「平和だなぁ……」
僕は青い空を見上げながらのんびりと呟いた。
父上とクリスに、というかクリスに全投げした帝都での商品献上の件。
今頃、大変だろうなぁ。
父上やガルンに帝都での様子を今後の対策を考えて聞いた時のことだ。
その時の父上は珍しく上機嫌になり色々と話し始めたのだ。
誰かに聞いて欲しかったのだろう。
主にローラン伯爵というのが父上に絡んでくるらしい。
貴族の位に関しては父上が辺境伯なので、伯爵より上だ。
だけど、公爵達の覚えが良く、小細工がうまいので関わるとろくなことにならない。
だから、出来る限り関与しないようにしているらしい。
あと、意外に顔が広いそうで、「人望はないが人脈はある。金で繋がっている金脈だな」と父上は「うまいだろ?」と話していた。
スルーしたけど。
まぁ、そんな感じで父上に化粧品類と商売の状況を説明しにいくと、帝都でのやりとりについて話されることも多かった。
「今のうちに知っておけ」と言っていたが愚痴りたかったのだと思う。
「……あれだけ、愚痴られたら絶対行きたくないよ。うん」
だが、それを抜きにしても今回はクリスを行かせるべきだった。
化粧品の説明には、使ったからこそわかる女性の目線と意見が必ず必要になる。
だからこそ、父上も僕を置いてクリスと二人で帝都に行ったのだ。
「無事に帰ってくることを祈ろう」
帰ってきたら、クリスに何かお礼しようかな。
お菓子とか好きかな? もし、作れるものがあれば、作ってあげようかな。
そんなことを思っていたが気を切り替えて魔法修練を始めた。
今日はサンドラが修練を教えに来る日じゃない。
というか、今からすることは出来るだけ誰にも見られたくないので、あまり人が来ない屋敷の裏に来ている。
「さて、リッド君の属性素質。ゲーム通りか試してみようかな」
僕がいま「リッド」として存在している、この世界は前世の「ときレラ!」という乙女ゲームの世界に酷似している。
「酷似」という言い方にしたのは、感覚の問題だが決してこの世界は「ゲームの中」ということではないと感じているからだ。
恐らく、ゲームのストーリーに近い展開は発生するかも知れないが、それは絶対ではない。
俺が転生したリッドはゲーム本編にほとんど関わらず、おまけ要素で日の目をみるぐらいのキャラだった。
それが、俺が転生して行動したことにより少しずつ、その存在感が変わってきている。
真っ当に生きるための資金集めの為とはいえ化粧品類の開発を行い、それが帝国の皇族に献上するという動きまでおきた。
これは絶対にゲームでは起こりえなかった流れになっているはず。
つまり、俺自身、この世界を自分の人生として生きれば自ずと道は開ける。
それが、今回の件で認識出来たわけなので、モチベーションはかなり高いのだ。
「火は確認出来ているから、水と氷からいくか」
ちなみに、「ときレラ!」で出てくる属性は全部で10種類だ。
10種類=火、水、氷、風、土、樹、雷、光、闇、無
あとはサンドラ先生に教えてもらった特殊魔法があるが、これは追々研究していこうと思う。
それから、俺は魔法発動に必要な魔力変換と「明確なイメージ」を練り始めた。
「おお~、思った以上にリッド君はハイスペックだなぁ」
属性素質を確認した結果、俺はすべての属性に関して魔法を発動することができた。
魔法のイメージを10通り考えるのは意外と大変だったけど。
でも、明確なイメージが必要というのを考えると魔法に名前をつけるのはありかもしれない。
何せ、10通りもあるので、氷魔法を発動しようと思った時に、名前を付けていればすぐイメージできる。
名前がないと都度イメージをしてから発動しないといけない。
発動時に名前は叫ぶ必要ないけど「魔法名」は考えておこう。誰にも言わずに。
その後、色々試したが名前を考えるのが大変だった。
とりあえず攻撃魔法用に「槍」のイメージをまとめてオリジナルの「型」とした。
安直だが、「属性名+槍」で考えた。
火属性の魔法なら「火槍」、「雷」なら「雷槍」と言った具合だ。
とりあえず、槍が狙いに向かって飛んでいく感じの魔法にした。
「よし、通しでやってみよう」
僕は全属性の魔法を1個ずつ、確認を含めて行った。
全種類の魔法を試すとへとへとになり、仰向けで大の字にその場で寝転がってしまった。
「はぁはぁ、とりあえず合格ライン、目標達成かな」
心地よい、疲労感と満足感を感じていると「ザク」と足音がした。
びっくりして起き上がると、そこには何故か目をキラキラさせているメルがいた。
「……にーちゃま、にーちゃま、すごーい‼ もう一回やって~‼」
「メ、メル‼ いつからそこに?」
「うーんと、火をてからだしてるときから」
それじゃあ、最初から全部見ていたことになる。
うーん、困った。全属性が使える事実は当分隠しておきたい。
今後のことを考えて悪目立ちはしたくない。
そう考えた僕は、メルのご機嫌を取ることにした。
「メル、いまにーちゃまが使った魔法は色んな種類。色があっただろう?」
「うん、すっごいきれいでかっこよかった‼」
「ありがとう、でもこれはメルとにーちゃまの秘密にしてほしい」
「ええ~、すっごくきれいでかっこいいのに?」
メルは魔法がもう一度みたかったようでと凄く残念そうにしょんぼりしてしまった。
「ああ~、秘密する代わりに絵本を今日は好きなだけ読んであげるから、ね?」
「う~ん、きょうだけじゃなくて、あしたもえほんよんでくれるなら、いいよ?」
おお‼ まさか、交渉されるとは思わなかった。
メルは賢くて可愛いなぁ。
「うん、わかった。約束する」
僕が約束の返事をするとメルはとても喜んでくれた。
その日、メルが寝付くまで絵本を読んだ。
だが、翌日なぜメルが「あしたも」と言ったのかがわかった。
なんと、メルが母上とガルンにお願いして注文していた絵本が山のように届いたのである。
声色を要求されながら絵本を一日中読んだ僕の声はガラガラに、カラオケで熱唱したあとのようになってしまった。
メルは僕のガラガラ声を聞くと「4匹のガラガラどん」というどこかで聞いたことのあるような絵本を持ってきて「そのこえならこれがいいとおもう‼」と目を爛々とさせていた。
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