6
木花纏には恋人がいた。
同級生の恋人で、名前を堀川誉くんと言った。
二人がお付き合いをしたのは、高校一年生の夏休みのことで、告白は誉くんからだったらしい。
それは誉くんの一目惚れで、誉くんに好きです。僕と付き合ってください、と言われた纏は目を大きく見開いたまま、(え、私? と人差し指で自分の顔をさしながら)その顔を真っ赤にしていたそうだ。
その話を二人から聞いたとき、乙女はすごく感動した。
二人はとてもお似合いの恋人同士だった。
今、誉くんは陸上部のマネージャーをしながら、纏と一緒に陸上に打ち込んでいる。
二人の夢は県大会を抜けて、全国大会で優勝をすることだった。
二人はいつも(楽しそうな顔をしながら)そんな話をしている。
二人はいつも、同じ方向を見ている。
お互いの顔を見ながら、同じ風景を眺め、その場所を目指している。
そんな二人は本当に羨ましかった。
「ねえ、纏。誉くんのこと好き?」
学校帰りになんとなく乙女がいう。
「え?」
そんな乙女の言葉を聞いて、纏はその顔を真っ赤にする。
「もちろん。大好きだよ、って、なに言わせるのよ、乙女!」ちょっとだけ怒った顔をして、纏は言う。(誉くんは数少ない纏の弱点の一つだった)
二人の歩いている土色の山道には、雪が溶けることなく降り積もっている。
周囲にある山々の色も真っ白だった。(鳥が飛んでいる風景が見える)
吐く息も白い。
ここからは海が見えない。
そんなことを乙女は思う。
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