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乙女はその小指に白い包帯を巻いている。
それは昨日、お皿を割ってしまったときに、できた傷を癒すためのものだった。
天気は雪。
昨日からずっと、世界には真っ白な雪が降り続いている。
そんな世界が真っ白な色に染まる風景を乙女は学校の教室にある(窓際の)自分の席に座ってただじっと見つめていた。
「どうしたの? 乙女。さっきからずっとぼんやりしちゃって」
友達の木花纏が乙女にいう。
纏はいつものように笑顔。
「纏はいつも笑顔だよね。いいな」と乙女はいう。
「いつも元気なのが私の取り柄だからね」
とにっこりと笑って纏はいう。
キーンコーン、と授業の開始を告げるチャイムが鳴る。
その音がしてすぐに、がらっと言う音がして教室のドアが開いて、そこから担任の春山古風先生がみんなのいる教室の中に入ってきた。
「みなさん。おはようございます」
優しい笑顔で古風先生が言う。
その古風先生の顔を見て、乙女はその頬を(誰にも気づかれないように)赤く染める。
それから(いつものように)朝の時間が始まる。
なにも変わらない毎日の風景がそこにはある。
ふと、古風先生が乙女を見る。
古風先生と目があって乙女はすごくどきっとする。
でも、古風先生はにっこりと笑ったまま、(乙女の気持ちに気づかずに)視線をすぐに違う生徒に向けてしまう。
そして、朝の時間が終わると、古風先生はそのままみんなに挨拶をして教室を出て行ってしまった。
乙女はなんとなく自分の包帯の巻かれている小指を見る。
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