第29話 新たな世界の情勢

    晃司は帰国後、先ず軍令部の永野の所に行き、アメリカに

    おける、日米英ソ豪加首脳会談の可能性の大きさを説明した。

    そして永野はこれに肯定的になり晃司を連れて、

    伊藤の執務室へ行った。


永野修身「伊藤次長、折り入って話がある」


伊藤整一「なんでしょうか、総長」


永野「実は岡本君が密かに、ハーバード・フーヴァーに会い、

   日米英ソ豪加首脳会談の開催を、促したのだ」


伊藤「なんと、日米英ソ豪加首脳会談ですか。してその成果はいかほどに?」


永野「どうやらフーヴァーはこれに肯定的で、アイゼンハワー大統領を

   説得してアメリカの連合国の参加と、軍事面での参入に合意

   しているのだ」


伊藤「これはまた、しかしその様なこと、アメリカも相応の条件が

   ないと応じないかと思いますが、そこはどうしたんですか?」


永野「ここからは、岡本君が説明する。岡本君頼む」


岡本晃司「はい、伊藤次長、私たちに分かることで未来の世界で一つ二つ

     言えば、アメリカはこの後、2年程で原子爆弾というものの

     実戦投入に踏み込みます。

     細かい理論等は置いておいて、我々の世界の日本では、

     これは広島と長崎に、投下されています。

     広島の投下例を見ても、一発で10万人以上の人が広島で、

     数か月のうちに亡くなります。

     爆発したのちに放射性物質というもので、50万人以上の人が、

     被爆します。」


伊藤「なんと、一発でそんなにもの人の死傷者がでるのか?」


晃司「はい、先ほど言ったように、史実ではもう2年もすればアメリカで

   実戦投入段階にはいり、恐らく数年後にもドイツ、イタリアを始め、

   世界各国でそうなると思います。

   こうなれば世界は、核戦争状態に陥り、過去最大の死傷者がでると

   思います。

   すこし触れると、原子爆弾とは原子核反応のうち、核分裂反応を

   兵器利用したものであり、私たちの時代から見れば、この時代でも

   更にもうしばらくすれば、今度は核融合反応を兵器利用した、

   水素爆弾と言うものが、実戦投入段階にはいります。

   世界大戦の状態でこうなれば、もうこの世界は最悪の事態を、

   避けられません。

   以前フーヴァー所長に、ミサイルと言う物も含め、少々時系列を

   細工しましたが、これを説き交渉しましました。

   その時、彼もこれを危惧されまして、今回もこれを促し、

   日米英ソ豪加首脳会談を提案したところ、フーヴァー所長は、

   説得に応じてくれました」


伊藤「そんなものが未来には・・確かにフーヴァーは、それらしきことを

   以前アメリカで、説いていたな。

   それと日米英ソ豪加首脳会談で、フーヴァーは承知したのだな」


晃司「はい、ですからこちらでも軍令部の方から、改めてこれを

   吉田茂首相に説いて、是非とも日米英ソ豪加首脳会談の開催、

   出来れば、斡旋をするように、軍令部のほうからお願い

   出来ればと、お頼みしているのですが」


伊藤「うーん。総長はいかがですか?」


永野「ワシは承知した後だよ、次長」


伊藤「分かりました。では総長と私の方から吉田首相に、この件を

   具申してみましょう」


永野「もちろんそのつもりだよ」 


    永野と伊藤は軍令部を代表して、吉田茂にこの核戦争の危機を、

    改めて促し、日米英ソ豪加首脳会談をもちかけ吉田はこれに合意した。

    アメリカではフーヴァーが、アイゼンハワーに核戦争の危機を、

    また訴えかけ、日米英ソ豪加首脳会談ももちかけ、説得に成功した。

    かくして日本とアメリカの呼びかけにより、日米英ソ豪加首脳会談が

    開催されたのであった。 

    

    そんな中、アメリカでは、突然時を見て、影を潜めていた、

    トルーマンが立ち上がった。

    彼は世界をこんな風にしたのは、この合衆国を変えてしまった、

    フーヴァー始め、停戦論者に責任があるとし、アメリカ世論を

    味方につけ、アイゼンハワーの失脚をこころみ、次第にアメリカは

    政治的に、内戦状態にもつれ込んだ。

    これによりアメリカでは、軍もアイゼンハワー派とトルーマン派の

    両派に分かれ、武力的にも内戦の危機に直面し、海外出兵

    どころではなくなった。

    

    だがアイゼンハワーは吉田茂の説得により枢軸国に、

    特に中国に対して、兵器、武器、弾薬等の軍事的輸出の、

    完全撤廃を行った。

    これにより中国の軍事兵器、特に海軍兵器は完全に

    ドイツ、イタリアに依存した為、中国の海軍力は激減し

    日本への当面の脅威はなくなった。

    このため日本は世界大戦を終わらせる為に、イギリスと共同で

    ヨーロッパに艦隊を派遣し、ドイツ、イタリアの海軍に、

    打撃を与える方針を行った。

    これには吉田とチャーチル、更にはスターリンとの談合の

    裏づけの成果もあったのであった。


    晃司は軍令部にいた。


伊藤「岡本少佐、この連合軍の情勢、これも何もかも、元は君の功績だよ。

   君にはまた、助けられたようだな」


晃司「もったいないお言葉です、次長」


永野「素直に喜んでおきなさい」


晃司「では、ありがとうございます。しかし直接吉田首相を説得された

   のは永野総長や伊藤次長ですし、その吉田首相にも、大変な

   ご苦労をおかけ致しました」


伊藤「確かに今回の事は吉田首相や、アイゼンハワー大統領、まあ裏で

   フーヴァーが動いてくれたおかげだな」


永野「そうだな。まあなにもかも皆が、協力し合い、動いてくれたおかげだな」


伊藤「そうですね、総長。岡本少佐、他に提案すること等ないかね」


晃司「いえ、今のところは、それはないです」


伊藤「そうか。こちらからも、もちろん指示は出すが、近いうちに

   山本長官や連合艦隊の司令官等も、動いてもらうことになると

   思うからその点、色々と伝言頼むよ、岡本少佐」


晃司「はい、私に出来る事なら、色々と事にあたります。

   では永野総長、伊藤次長、私はこの辺で失礼致します」


永野「うむ、再三になるが、山本長官に宜しくな」


晃司「はい、それでは失礼します」


    晃司は軍令部を後にして、また大和に戻っていったのであった。


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