第5話 動き 主人公編2

    晃司と忠和は、時枝に食事に呼ばれていた。  


岡本時枝「お腹すいたやろね二人とも、こんなもんしかないけど、

     食べなさいな」


岡本晃司「いっつも面倒かけるね、ほんとにありがとね、ひい婆ちゃん」


渋野忠和「本当にご面倒をおかけして、ご飯まで頂いてしまって、

     ありがとうございます、岡本さん」


時枝「よかよか、またこの時代の金銭がなかったとかでしょ?」


晃司「よくわかったね、また前と同じような、はめになってしまったんよ」


時枝「そんなとこやろうと思ったよ」


晃司「それにしても、今昭和18年の1月なんやね。僕らが元の時代に戻って

   半年位たつんやね」


時枝「そうよ、あんたたちの時代でも、同じように半年経ったんやないの?」


晃司「僕らの時代では、僕が元の世界に戻ってから、

   1か月もたってないんよ」


時枝「あらこれは不思議やね、どうなってんのかね」


晃司「それがどうにも、僕にもようわからんくて。あそやひい婆ちゃん、一花が

   この時代に来て、ひい婆ちゃんを訪ねてきた、ってことないやんね?」


時枝「一花って、名前呼びで、しかも呼び捨てなんて、あんた達、いい仲に

   なったんやね」


晃司「まあその、なんつうか、まあそんなとこ」


時枝「そうかい、そりゃよかったことやけど、一花さんは来とらんよ。

   今回は一緒やなかったんやね」


晃司「一緒やないよ、来てないならいいけど、もし彼女もこの時代に

   今回タイムスリップしてたら、ここ訪ねてくるかもしれんから、

   そんときは宜しく世話してやってくれんかな、ひい婆ちゃん」


時枝「よかよ、喜んで世話させてもらうよ」


晃司「ありがとうひい婆ちゃん。それで僕らなんやけど、いつまでもここに

   いる訳には行かんし、前来た時と時代が繋がってるとなれば、まず

   ひい爺ちゃんを、訪ねたいと思ってるんやけど、ひい爺ちゃん僕の事

   覚えてるよね」


時枝「もちろん覚えてるよ。自慢のひ孫やって、言ってたし」


晃司「それはそれは光栄なことで、でひい婆ちゃん僕は、ひい爺ちゃんを

   頼っていきたいんやけど、この服装やし危ないから、どうにか

   出来んか、手紙を書いて欲しいんよ」


時枝「そうやね、うち電話買ったから、なんやったら親族として、電話かけて

   みようか」


晃司「あ電話があるの?今回は情報や暗号やら気にせんで、ええことやし

   電話かけてくれたら助かるよ、僕の階級は少佐って言ってくれれば

   分かると思うよ」


時枝「えっあんた少佐さんになったの?その年で本当に?これは驚いた」


忠和「お前この時代で少佐にまで上り詰めたのかよ、すげえなそれ」


晃司「まあ俺の場合、史実を知っていたからだけの話なんやけどな、

   それも一花が詳細を提供してくれて」


忠和「そういえば、史実というか、情報さえあれば、俺たちでもアメリカ軍

   将官とやり合えるかも、とか言ってたのそれでかよ」


晃司「まあそう言うあんばいやねんけどな。一花は女性ながらこの時代の

   軍隊で、中尉にまでなったぞ」


時枝「まあ一花さんは女ながら軍人に?それも中尉さんにまで?」


忠和「お前らすごすぎるんだよ、ほんとにそんなに出来る連中だったのかよ」


晃司「そやから俺らは、戦史にかなり通じてる一花のおかげとかで、ここまで

   なれただけやって、ひい婆ちゃんも、これは僕らが未来人の知識と

   知恵をもってった、おかげなだけなんよ」


忠和「それにしてもなあ」


時枝「ほんと、それにしてもよねえ」


晃司「まあとにかく、ひい婆ちゃんそういうことで、ひい爺ちゃんに連絡

   とってみてくれる?」


時枝「わかったよ、連絡とってみるね、少佐さん」


晃司「もう、ひい婆ちゃんからかわんでよー」


時枝「ふふふ」


    時枝は江田島の海軍兵学校に、親族として電話をかけ夫の誠吉と

    この件について話をした。

    そしてしばらくしてから段取りはまとまった。


晃司「どうやった?ひい婆ちゃん」


時枝「晃司君が来て、少佐になったって言ったら、それはしらんかったって

   驚いとったよ」


晃司「そうやないでしょ、ひい婆ちゃん」


時枝「そうやったね、うふふ。えっとね、事情を話したら流石に

   ひい爺ちゃんはこっちへ戻ってくるの、無理やから兵学校生二人を

   迎えに行かせるって。

   その折に軍服も、二着用意してもって行かすって」


晃司「そういうとこになったのかあ、ありがと、ひい婆ちゃん。

   軍服も用意してくれるって、助かるなあ」


忠和「二着って、僕の分もってことですよね」


時枝「多分そういう事だろうね。渋野さんのことも、ちゃんと報告

   しといたからね」


忠和「岡本さん、何から何までお手をわずらわせます、本当に感謝致します」


時枝「私はたいしたことはしとらんよね、まあそれよりあんたら、迎えが

   来るまで、この家で泊まっていきなさい。食事も貧粗なものかも

   しれんけど、出来る限りのことはするよね」


晃司「ありがとねひい婆ちゃん、ほんといつも世話になるよ」


忠和「ほんとに、どう感謝の形を表現したらいいか、とにかくほんとに

   ありがとうございます。岡本さん」


    そして少し日が経って海軍兵学校から、二人の兵学校生が

    岡本宅を訪れた。


兵学校生「こんにちは、こちら岡本教官のご自宅で宜しいでしょうか?」


時枝「はい、私は岡本誠吉の妻、岡本時枝と申します」


兵学校生「そうでありましたか。私ども岡本教官の命を受け、こちらに

     参った海軍兵学校生ですが、こちらに岡本晃司少佐と、

     渋野さんと言われるお連れの方が、おいでになって

     いると伺いましたが」


時枝「はーい、そうでしたか、すぐ二人をお呼びしますね。

   どうぞ中に入ってお待ちくださいな」


兵学校生「それでは失礼して、上がらせて頂きます」


    時枝は晃司と忠和を、兵学校生の所に連れてきた。


時枝「こちらが連絡した二人です」


晃司「岡本晃司少佐です」


忠和「渋野忠和と申します」


兵学校生「お初にお目にかかります。どうぞお二方軍服に

     お着換え下さい」


忠和「おい晃司、俺まで将校の軍服だぞ」


晃司「そら少佐の連れが最低でも、将校でもないと、恰好つかんやろうしな」


忠和「そりゃそうだけどなあ、この時代、俺なんか何の階級もない

   ぺーぺーだからな、気が引けるよ」


晃司「どの道、防大出たらちょっとして、昔の軍隊で言う将校なんやから

   もっと自覚もてよ」


忠和「それもそうだけどな、よし軍隊とは言え、気後れせず自信もっていこ」


兵学校生「お二方用意出来ましたか?」


晃司「忠和、準備OKか?」


忠和「俺はいつでもいいぞ」


晃司「では二人とも出発の用意出来ましたので、いつでもどうぞ」


兵学校生「では早速出発しましょう」


晃司「ひい婆ちゃん色々ありがとね」


忠和「岡本さん、大変お世話になりました。いつかこのお礼は

   させて頂きます」


時枝「そんなに義理堅くせんでええがね、こっちが緊張するよね。

   二人とも何か世界を動かすために、この時代に呼ばれたに違い

   ないから、そっちの方頑張ってくれたらええよね」


晃司「それじゃひい婆ちゃん、行ってくるね」


忠和「では行って参ります」


時枝「二人とも頑張ってね」


兵学校生「それでは早速出発しましょう」


    こうして晃司と忠和は海軍兵学校生に同行する形で

    2人は、江田島の海軍兵学校へ向かったのであった。

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