第18話
最後まで残しておいたウルトを使用し、ショットガンを持っていないことを願いつつ、2人の待ち構える建物内に突っ込む。さあ、2対1でのフィジカル勝負だ。
まさか単身で突っ込んでくるとは思っていなかったらしく、準備が出来ていない間に一人に大ダメージを与えることに成功した。
しかしノックダウンとはいかなかった。反撃にかなりのダメージを浴びてしまう。
不味いな。このままじゃ一人倒せるかも怪しいぞ。
俺は室内の柱を利用して射線を切り、隙を探る。
「今だ!」
体力が少なかった方がリロードに入ったため、その隙を突きノックダウンさせた。
俺はそのまま蘇生をされないように敵に急接近し、近接戦に持ち込んだ。
相手は後衛特化のキャラであるエイドライン。
HPでかなりのディスアドバンテージがあるものの、かなり有利に戦いを進められた。
しかし、
「すまん、相打ちだ」
倒す直前で投げられた手りゅう弾を貰ってしまい、ノックダウンしてしまった。
だが、そのタイミングで二人が到着し、ながめが蘇生をしてくれる。
これで五分だ——
そう思った矢先に、最後のパーティが突っ込んできた。
「一旦引いてくれ!」
そのため俺の蘇生は叶わず、2人には逃げてもらうことに。
そうなると、俺はフィニッシャーを食らう。これで完全に戦線離脱だ。
「すまん、後は任せた」
「うん!」
「任せて!」
意気込んでくれたながめとアスカは2人をノックダウンさせる所まで行ったが、惜しくも敗北してしまった。
そして、俺達に勝ったのが1位を走っていたチームだった。
「ごめん!勝てなかった!」
俺達の敗北が確定した瞬間、アスカが謝った。
「いや、アスカは悪くない。あそこで生き残れなかった俺のミスだ」
このチームの実質的なリーダーを張って、俺がながめの代わりにメインを使って負けたのだ。
「まあまあ。最初の順位からすると大躍進だし、2位の人と1ポイント差だったから最終順位は2位でしょ?私達かなり対策されていたのにここまでこれたのは本当に凄いよ!」
と明るくフォローするながめ。本当は悔しいだろうに……
「ながめの言う通りだな、俺たちは間違いなく強かった。それに、あのチームが最後まで残っていた時点でどうあがいても準優勝止まりだったしな」
「そうなの?」
「ああ、1試合目からずっと5位以内を取り続けていたらしいからな。2人には正しい計算を言っていなかったが、あのチームが10位とかに転落しない限りは優勝不可能だったぞ」
「私の涙は一体何の為に……悲しくなった。今から泣いてくる」
それを聞くと優勝させられなかったことが本当に悔しいな。
「おい。そろそろインタビューだからそんな暇はないぞ」
「そうだったそうだった。そのまま配信閉じちゃうところだったよ」
「呼ばれたみたいだよ」
「じゃあ行くか」
俺たちはインタビューを受けるべく、主催の目黒秋が居るボイスチャットのサーバーに飛んだ。
「こんにちは~!!」
「いえーい!!」
「やってきましたね。はい、こちらが準優勝した雛菊アスカさん、水晶ながめさん、九重ヤイバくんの三人です。おめでとうございます!!」
「ありがとうございます!!」
「ありがとう!!!!」
「ありがとう」
「どうですか準優勝の感想は。ではリーダーのアスカ選手!」
「私がリーダー?」
目黒秋にリーダーと呼ばれて何故か困惑するアスカ。
「そりゃそうだろ」
「そうだよ」
軍師が俺なだけでこのチームを作って色々していたのはアスカだからな。
「そうですね。やっぱりめちゃくちゃカッコいいヤイバちゃんとめちゃくちゃ可愛いながめちゃんと一緒にVALPEXを沢山できて、それでここまでいい結果が出せたので最高に今幸せです。二人とも、大好きだぞ。愛してる!!」
「そうか」
「ありがとう」
「非常に素敵な愛の言葉をありがとうございました。それでは、少し気になっていたのですが、4戦目からながめ選手とヤイバ選手のキャラが入れ替わっていましたよね。あれには何か意図があったのですか?ながめ選手」
「あれは対策封じの為ですね。どうやら他の方々が私たちの対策を入念に練ってきていたので、このままじゃ勝つのは難しいと思ったんです。だから私とヤイバ君のキャラを入れ替えることでチームの雰囲気を変えて、対策を封じてしまうのはどうかなって」
「なるほど。確かにチームのエースの使用するキャラが変わればそれは全くの別チームになりますもんね。実際それが上手く嵌ってここまで来れていましたし、見ていてすごく楽しかったです。ただ、このチームの場合全員メインキャラがブラドというチームでしたよね。そんな中エースがブラドを使うというのは中々に重圧がかかることだと思うのですが。4試合目以降、キャラを変えてからはどうでしたか?」
「ただいつも通り、全力を出すことに集中していたから特に緊張とかは無かった。ながめとアスカの二人が俺の実力をただ信頼して任せてくれたのだから、不安とか重圧とかは感じなかった。だからただメインキャラを使った俺よりも、一度も組んだことが無い俺のブラドと完璧に合わせてくれた二人の方が凄い」
一応二人は俺の配信を熱心に見てくれているからというのもあるのだろうが、それでもここまで合わせられる人は居ないだろう。
「なるほど。信頼してくれたから大丈夫、ですか。すごくいい信頼関係ですね。だからここまで好成績を残してきたんだって分かります。今後も3人での活躍を見てみたいですね」
「では最後になりますが、何か宣伝とか、これはどうしても言っておきたいこととかありますか?」
それから俺たちは今後の配信やボイス、歌ってみた等の告知をして、インタビューを終了した。
そして3人用のボイスチャットに戻った後、後夜祭が開催されるまでしばらく雑談をして過ごした。
後夜祭というのは恒例行事と化している大会終了後のおふざけカスタムで、奇妙なルールでの試合を三試合した後、大会参加者から主催者の独断と偏見で選ばれた組み合わせによる通常ルールでのカスタムが行われることになっている。
この情報に関しては主催者以外誰にも知らされないので、視聴者だけでなく配信者側としても非常に楽しみなイベントだ。
『では今回の後夜祭のルールは!』
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