創作と事業拡張 ~一点絞りの重要性

 これは、とある実業家の方が、御自身の経営されているチェーン店に加盟を希望される方に申し上げていたと言われる内容。

 確か、ココ壱番屋の創業者の宗次徳治社長(当時)だったかな。

 著作中に、こんなことが書かれていました。


 始めから事業目的での加入はお断りします。最初は、御自身、あるいは夫婦で生業商売としてその店をしっかりと切り盛りして成り立たせていくつもりで、真剣にやっていただきたい。そうしてその店も自身の生活も安定したうえで、事業として多角化の方向に向かわれるのも、複数店舗の運営に持っていかれるのも、そこまで来れば一向に構いません。


 そんな感じの流れでした。

 要はこれ、「一点絞り」ってことね。

 広岡達朗さんが評論家時代、飛込でサンケイスポーツに何とか仕事をもらって、たまたまそこのデスク氏が早稲田大学の大先輩だったとのことで、まあその、厳しく鍛えられたってお話ですが、あるとき、その大先輩、広岡さんが書いてきた原稿を見たところ、こんなことをおっしゃったそうな。


「昨日の試合、5つ、ポイントがあったのか?」

「はい」

「5つもあっては散漫だ。名には一番のポイントだったかわからんぞ。1つに絞れ。1つに絞って書けば、あとは枝葉となって一つの文章としてわかりやすくまとまる」


 さてあの広岡さん、「文字くらい書けらい」なんて毒づきながら、文章を書いておられたそうな。

 そりゃそうよ。野球評論家なら自分の言ったことを誰か記者の人がまとめてくれるものと思っておられたそうで、そういうパターンでお仕事されている人もおられようけど、たまたま飛び込んだ先は大学の先輩がいて、自分で文章を書くなら採用してやるなんて言われたくらいだから、まあ、そんなこと言いたくもなるのはわかるわな。

 でも、この教えがあって後、広岡さんはこれをいろいろなことに応用されて、後に監督として2チームを日本一にされた。その時のチーム改革に、この話はものすごく役に立ったそうですよ。


 というわけでね、まず世に出るためにどんな分野で勝負したらいいかということを真剣に考えて、活躍する分野を絞るのは、大事だってことよ。

 私のこのシリーズの最初の文章がまさに、それね。

 ノムさんこと野村克也さんのエピソードをトレースして、小説という分野に挑戦していくことにしたわけ。そこで何とか書いていけるめども立ち、実際もうすぐ3作目が出せるところまで来たのよ。

 もちろんこれからも小説は書いていきますよ。

 だけど、ある程度軌道に乗ってきたなら、書いていきたかった旅行記や、評論、ゆくゆくはノンフィクションに本気で参入して言ってもいいかなという気持ちも、沸いてきているところです。


 とはいえ、急にあれこれというわけにもいかんわな。

 てなわけで、こんな文章も書いています。

 これは言うなら、「プロセスエコノミー」と言って、要は、迂回生産のようなものなのです。本来書くべきものの周辺のところを書くことで、生産性をあげていくというわけね。

 でも、軸には「小説」というものがあるから、そこをベースに、かれこれ周囲を固めていくというわけです。

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