帰還勇者が多すぎると思ったら次々死んでいく件

@lostinthought

第1話「帰還」

 俺の目の前には巨大な骸骨がぶっ倒れている。大剣を手に握り、黒い鎧を着た、50メートルはあろうかという馬鹿でかい骸骨だ。

 その背後にはこれも巨大な玉座が静かに聳えている。魔獣の骨を複雑かつ精緻に組んで作られた玉座。しかしその玉座も二度とその主の巨躯を収めることはない。

 なぜならその主は今、俺の手で永遠に葬られたのだから。

 本当にゲームに出てくるような容貌をした『魔神王』だった。


「では約束通り、あなたを今から元いた世界に返します。それで良いですか、シンよ?」


 振り向くと女神が俺を元いた世界に戻すための儀式の、最後の段階に入っていた。

 もう〈転送の儀式〉を始めてから三分は経っている。

「いいから早くしてくれ」

 俺は苛々いらいらしながら返した。

「良いか」なんて聞く必要はない。そのためだけに俺はこの3年間、突然転移させられたこの異世界でモンスターを屠ってきたのだから。

 そして今日、正確には5分ほど前、俺の背後に横たわる巨躯の骸骨──この世界を支配していた〈魔神王ヴェルヘリオン〉──をついに殺した。

 それもこれも元いた世界、21世紀の日本に帰るためだ。


「あなたのこの世界で獲得したステータス、スキルはどうしますか? リセットして普通の人間に戻りますか、それともこのまま元の世界に帰りますか?」


 その質問にはちょっと驚いた。意外なことを女神は聞いてくる。


 ──こちらの世界に転移した時に与えられた力を持ったまま帰れる?


 思ってもみなかった事なので、俺は予想外の報酬を貰ったような気分で頷いた。

「残せるならそうしてくれ」

 すると女神は、

「分かりました。それではシン、あなたをこのまま元いた世界に戻しましょう。時間の流れは同じ。あなたがこちらの世界に転移した3年と2ヶ月14日後の日本の東京に今から転移させます」


 女神アスタロは言って、俺の足元をあの時──この世界に召喚された時──と同じ回転する光の魔法陣が三重に取り巻いた。

 ダンジョンの最下層『玉座の間』から日本へ。

 俺はこの日が来るのをどれだけ待ち望んでいただろう。


「ではシン、あなたの健闘を祈ります」

 女神アスタロは俺が光に包まれる直前、謎の言葉を告げた。

 ──健闘?

 そう聞き返す間もなく、俺は光の炸裂に包まれた。

 そして・・・・・・


「東京だ・・・・・・!」


 俺は日本の東京に帰ってきた。

 異世界で手に入れた〈力〉のすべてを身に宿したまま。

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