フルッシィー

SHOW。

好奇心

 ジブンをモンスターとさげすむのは自由じゃ。それでもこの恒星こうせいがきっと嫌いにはなれない。どうしようもなく好奇心に吸い寄せられているからじゃ。


「ねえねえ」

「どうしたの?」

「ここにくるみがあるよ」

「えぇ? 本当だ、でもどうして?」


 ジブンはどうも、縫い包みとやらに間違えられやすい容姿みたいじゃの。


 全長十三センチメートル。多分、彗星色。丸型の体躯たいくの目元以外を満遍まんべんなく覆う軟毛が保護欲を掻き立てる、抱きしめたくなるとも言うらしい。


 四足歩行の概念はあるが、サイズは極端に小さい。空中を浮遊する為に削ぎ落としているから致し方ないが、食事などの不便さが難点な身体じゃ。


「拾って届けようか?」

「いや、ここに置いといたら?」

「……うーん」

「持ち主が戻ってくるかもだし」


 残念ながら持ち主はいないのじゃ。

 意識を失っている間に単身で、この恒星に辿り着いていたから、もう何がなんだか。


 そういえば今、ジブンがどこにいるかも分かっていない。鳴き喚く狂暴生物に追われ、ただただ必死に逃げ惑った。そのせいで色々と見失ったのじゃ。


 ここは、どこ。ジブンはフルッシィー。


「それにしても可愛いね」

「えー、何か変じゃない?」

「……これ、なんの系統だろ」

「……さあ」


 というかこの二人は、いつまでジブンを眺めているつもりなのじゃ?


 幼子の思考はどの世界でも理解不能で、面白くて楽しいものじゃ。年齢を重ねていくにつれ、改めてそう思う。


「「…………」」


 さすれば、この子たちを驚かせるのもまたジブンの役目かもしれない。

 分かりにくいけどジブンは、背中から翼を生やすことが出来る。とくとご覧あれ。


「あれっ! こんなのあったっけ?」

「……段々大きくなってる」


 瞳孔がよく開く。

 確か物珍しいことに触れた場合に、この現象が起こる気がするのじゃ。


 楽しんで貰えたかね? じゃあ幼子たち、またどこかで逢えたら。さよならじゃ。


「おおっ、なんだ!」

「……アイツ多分、この星の生き物じゃないよきっと。あんなの見たことない」


 対照的な反応が逆に可愛らしいのじゃ。

 さて。一度飛ぶと暫く翼をしまえないから、このまま別の星に行こう。


 ——そうだ次は、昔馴染みから聴いたことがある青光の惑星を探すことにするのじゃ。


「いや……この恒星のどこかになら、居るんじゃないの?」

「いや絶対にいない。アルファ星にあんな行動をする生物なんて有り得ないよ!」


 またね。額に付いた触覚が魅惑的な、あどけない子どもたち。立派に生きるのじゃよ。


 大気に突入する。

 ジブンは無重力空間はおろか、どの星々にも適応可能な生命体だから問題ない。


 というより生死の概念がないと云える。

 でも怖いものは怖いし、楽しいものは楽しい。好奇心ある限り尽きないのじゃ。


 そしてジブンが銀河を旅するのには、明確な理由が存在する。


 ジブンの名前、フルッシィー。

 そう名付けた生命体を探すこと。連鎖的に起源まで発見出来たら万々歳じゃ。行く末簡単ではないが、退屈はしないのじゃよ。


「——」


 付け足すと嗜む程度の道楽も必要じゃな。

 無期限の長旅はしんどい。これまでの経験則がジブンに告げてくる気がする。翼を休めるのは、いつになるか。


 ——青光の惑星まで幾光年あるか。こんな風に考える時間も、酔狂かもじゃよ。

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