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一陽さんも言ってたけど、わかってくれさえすればそれ以上怒るようなことじゃない。
「あ、でもよかったら、長瀬さんには連絡入れておいて。心配してたから」
「わかってる」
「お詫びに、ちょっと恋の応援をしてあげるといいかも」
「あー……あれね。応援必要か? もう結果出てんだろ」
――僕もそう思う。もうすでに両思いだもんな。本人たちが気づいてないだけで。
「必要ない。必要ない。誰かに助けてもらわなきゃ告白できねぇなら、そもそもそこまで好きじゃねぇんだよ」
ヒラヒラと手を振って、藤堂が目を細める。
「だから、颯太は大丈夫だ。俺が応援なんかしてやらなくても、自分でちゃんとするよ。アイツって今どき珍しく真っすぐなヤツだから。俺みたいにひねくれてねぇから。むしろ腹芸はできねぇし、駆け引きなんかも苦手すぎて、いつでも馬鹿正直に直球勝負するから、みんな心配なぐらいで。『アイツ、社会に出てやっていけるのか?』って」
「そうなんだ」
じゃあ、四ノ宮さんから嬉しい報告が聞けるのを楽しみにしてようかな。
「あ、そうだ。今度お袋さんとランチデートにでも来てよ。今度はまかないじゃなくて、一陽さんの本気の料理を食べてほしい。本当に美味いからさ」
もちろん『お袋さんの次に』だけど。
それでもお袋さんと一緒に楽しめば、それはそれで格別だと――胸に響くと思うから。
大事なお袋さんと、『稲成り』で特別なひとときを過ごしてほしい。
二度と、お袋さんが自分の価値を見失わないように。
「……たしかに、お前って『イケメン』だわ」
僕の言葉にやれやれとばかりに息をついて、藤堂は笑った。
それは、昨日も今日もずっと不満げにムスッとしていた彼がはじめて見せた、優しくて柔らかくて心温まる笑顔だった。
「わかった。約束する」
もう大丈夫だと僕らに確信させる――とても晴れやかな。
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