第39話 勉強合宿②

「ハルくん、大丈夫だった!?」


「晴翔、大人になったのか!?」


「ハル先輩が寝取らーー」


「これ、それ以上は言うんじゃない」


俺は、桃華の頭にチョップをお見舞いする。ていっ!


「うぅ〜、ハル先輩ひどいですよぉ」


「心配するなら、普通に心配してくれる?香織と綾乃もね」


「「はーい」」


それにしても、葛西さんってあんなに胸大きいんだな。普段スーツの時は全然主張していないのに、さっきの破壊力はやばかった。どうやって隠し持ってたんだあんな秘密兵器を。恐ろしい。


「ハルくん、一体何を考えているのかな?」


「えっ、いや、何も」


香織さん、笑顔が怖いっす。俺はなにもしてないですよ?


「ハルくんがどうしてもって言うなら、わ、私が、一緒に入ってあげてもいいんだよ?」


「私も一緒に入る。少しならサービスする」


「私は、えっと、恥ずかしいけど、ハル先輩が望むなら」


あのね、君たち。いつ俺がそんなことを望んだのかな?そもそも、今回のことは葛西さんのせいでしょう。流石に刺激が強すぎて辛いですよ。


「それならいい案がありますよ?」


突然後ろから声がしたため、振り返るとそこには澪がいた。


「あれ、葛西さんは?」


「葛西は反省中ですので、お気になさらず」


ということは、まだ正座中なのだろうか?ちょっと可哀想な気がしてきたな。後で様子を見に行ってみるか。


「澪先輩、ところでいい案てなんですか?」


香織が代表して澪に尋ねた。というか、この人達が考えるいい案は、決していい案ではない。


「ふふふ、それはですね。みんな一緒に入ればいいんですよ♪」


「いやいやいや、んなバカな」


そんなの誰もオッケーしないって。さすがにみんなも驚いて黙ってしまったようだ。


「せ、先輩」


「なんですか、香織さん?」


「ナイスアイデアです!!」


「へっ?」


まさかの香織の発言に俺は変な声が出てしまった。いや、待て。これは聞き間違いだ。そうに違いない。


それに、香織がよくても、綾乃と桃華が反対してくれるはずだ。


「ふむ、先輩はやはり頭が良いな」


「さすが生徒会長です」


えぇぇぇぇ、2人とも何言ってんの!?い、いや流石に本気じゃないはずだ。明日になればきっと忘れてるはず。うん、そうだ。


俺は、明日には皆んなの考えが変わっていることを願って今日は先に寝かせてもらうことにした。


ーーーーーーーーーー


時は少し遡り、晴翔の入浴の時まで遡る。


「そういえば、葛西が遅いですね?」


「葛西さんですか?」


「えぇ、葛西も一緒にお喋りしようと思いまして、入浴後はここに来るように言ってあったのですが」


「あ、そうなんですか」


おかしいですわね。葛西が時間を守らないなんてことは今までなかったのに。なんだか嫌な予感がします。


そんな時、部屋の扉があいた。しかし、やはり葛西ではなく、お手洗いから戻った綾乃と桃華だった。


「いやぁ、お手洗いも広くて落ち着かない」


「ですね。家のトイレが狭いと思ってましたけど、あれで十分でした」


2人はトイレの広さについて話していた。確かにうちのお手洗いは無駄に広い。お爺さまは気に入っているようですが、私も狭い方が良いと思います。


「それにしても、葛西さんどうしたんだろう」


「そうですね。水着なんか持ってましたし、プールでもあるんでしょうか?」


「プールならありますよ?入りたければ、水着を持ってきて頂ければ、いつでも入れますよ」


しかし、私が気になったのは、プールよりも葛西の方です。なんで今水着を?


はっ!?


まさか、抜け駆けしようなんて考えてるんじゃないでしょうね!?


「綾乃さん、桃華さん、葛西はどっちに向かいましたか?玄関の方ですか?それともお手洗いの方ですか?」


「えっと、すれ違ったからトイレの方かな」


「そうですね。すっごく嬉しそうでしたね。そんなにプールが好きなんですね」


やはり、そちらに行きましたか。そちらにプールはありませんよ。そちらにあるのはお風呂だけです。


「皆さんはちょっとここで待っていて下さい。ちょっと晴翔様を救出してきますので」


「えっ、どういうことですか?」


3人は状況がよくわかっていないようですね。一応説明しておきましょうか。


「どうやら葛西が向かったのはお風呂のようです。そして、今お風呂に入っているのは晴翔様だけ」


!?


ここまで言うと、皆さん気がついたようですね。


「そうです。水着を持っていることから、晴翔様と一緒に入るつもりなのでしょうね。なので、これ以上葛西が暴走しないように、捕まえてきます」


私は、使用人を呼び彼女達の世話役に2人置いていき、私と一緒に3人連れて行くことにしました。


脱衣所に入ると、しっかりと葛西の服が畳まれて置いてありました。


!?


というか、なんで水着がここに置いてあるのめすか!?


え、じゃ、じゃあ、葛西は今、は、裸!?


『前も洗いましょうか?』


『い、いや!本当に大丈夫ですから!!』


ま、前って何よ、前って!?


葛西!!


私は勢いよく扉を開きます。早く、お助けせねば晴翔様が危険です!!


ガラガラガラッ!!


「葛西!そこまでですよ!!」


すぐに2人の状態を確認すると、やっぱり葛西はタオルを巻いているだけで、何着ていなかった。


そして、晴翔様のお身体は素晴らしいですね。いっそのこと、私も一緒に。一瞬そんなことを考えましたが3人に申し訳ないので、今回はさっさと回収して帰りましょう。


「行きなさい!」


私が指示を出すと、連れてきた使用人達は、葛西をがっちりと捕まえると、晴翔様から引き離し回収する。


「そんなぁぁぁ、晴翔様ぁ」


葛西は名残惜しそうに晴翔様の名前を呼びますが、もう堪能したでしょ?


「全く、では晴翔様、ごゆっくりどうぞ」


部屋を出た私は、とりあえず着替えの終わった葛西を、廊下に正座させることにしました。


お爺さまがよくやるお仕置きですが、葛西にやるのは初めてですね。葛西はドジっ子ですが、問題を、起こす人ではなかったのですが。


晴翔様にあってから、性格が変わったように思います。仕方ないですね、少しそこで反省していなさい。


その後、戻ってきた晴翔様達と少しの間お話ししていると、晴翔様はお疲れのようです先にお部屋の方は、戻ってしまいました。


夜はまだこれからなのに、残念です。


しかし、明日は学校があるので私達も今日は寝ることにしました。



ーーーーーーーーーー


「はぁ、寝付けない。絶対葛西さんのせいだよな。あんなの刺激が強すぎるって」


何度も寝ようと瞼を閉じるが、その度に葛西さんの姿が浮かびあがる。


あれ?


あの時、水着着てるって言ってたけど、肩紐とかなかったような。いやいや、もう考えるのはやめよう。


俺は、とにかく静かにして、眠くなるのを待った。


そんなことを、しばらく続けていると、不意に俺の部屋の扉が開く。


スゥゥゥゥ


すごく静かに開く扉。もしかして、また葛西さん?どうしよう。澪を呼ぶか?


「あれ?ハルくん?」


か、香織?


「なんで、私の布団にハルくんが?あぁ、きっとこれは夢ね。夢の中なら何しても大丈夫だよね」


そう言って、香織は布団の中に入ってくる。ちょちょちょ、香織さん!?


何してんのぉぉぉぉぉ!?


「はぁ、ハルくんだぁ。やっぱり落ち着く」


香織は後ろから俺に抱きつくと、温もりを確かめるように密着する。


こ、これは、心臓に悪い。香織は寝ぼけているのか?


「最近はハルくんの周りに人が増えたね。昔は嫌だったけど、こうなってみると、そんなに嫌じゃなかったな」


寝たふりするのも悪い気がしてきたな。しかし、香織の独り言は続いた。


「みんなでハルくんの話をするのも楽しい。別に彼女が増えたってもう気にしない。けど、ハルくんの初めては、全部、誰にもあげない」


香織の手が、服の中に入ってくる。いや、これはまずい!寝ぼけてる香織となんてダメだ!


俺は香織の手を掴むと、そっと服から出し、香織の方へ振り返る。


「香織、もちろん俺も香織と、ってあれ?」


香織、寝てる?


振り返ると、そこにはぐっすり寝ている香織の姿があった。全く、心臓に悪いから勘弁してくれ。


さて、どうしたもんか。そうだ、もう一回お風呂入ろうかな?いつでも入れるって言ってたし。


「香織、大好きだぞ」


俺は香織の頬にキスをすると、起こさないようにゆっくり布団から出ると、お風呂へと向かった。


そして、誰も居なくなった部屋では、香織が一人で悶えていた。


「ぐわぁぁぁ!!」


散々ジタバタした香織は、両手で顔を隠す。


「夢じゃなかったよぉぉぉぉ!!」


あまりの恥ずかしさに、しばらく悶えていたが、晴翔がお風呂から戻ってくる前に部屋に戻ることにした。


はぁ、ハルくんが止めてくれてよかったよ。私は真っ赤に茹で上がった顔を冷ますように、手で仰ぎながら部屋と戻った。

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