第2話 幼馴染とデート


今までの人生で、こんなにも緊張したことがあっただろうか?


高校受験でも大した緊張も感じなかったが、心臓が飛び出そうなほど、拍動を感じる。自分が自分でないような感覚だ。


いつもであれば、周りの視線が気になったりするのだが、そんなことは全く気にならなかった。待ち合わせ場所に現れるであろう人のことで頭がいっぱいだ。


俺は仕切りに時計を確認する。

待ち合わせは、駅前に10時。今の時間は9時30分。


いつも通りなら、そろそろ来るはずだ。


「ハルくん、お待たせ」


聴き慣れた声に、俺は引かれるように振り向いた。


「おはよう、香織。今日の服も可愛いね」


「えへへ、ありがと」


服装を褒めてあげると、素直に喜んでくれる香織。

あぁ、やっぱり可愛い。シンプルだが、白のワンピースにカーディガン、少し大きめの帽子。誰も清楚なイメージな香織にはぴったりだった。


「ハルくんも格好いいよ。いつも格好いいけどね。それより、ハルくんから誘ってくれるなんて久しぶりだね」


「ありがとう、香織。そういえば、そうか。なんだか香織と出かけたい気分なんだ」


「そうなんだ、嬉しいな。じゃあ早速行こうか。なんだか注目されてるしね」


「確かに、じゃあ行こう」


俺は、なるべくスムーズに香織へと手をささしだした。すると、躊躇うことなく俺の手を取ってくれた。


確かに周囲の視線が集まっていたので、早めに退散することにした。それにしても見られてるなぁ。


しばらく俺は、視線が気になって香織とのデートにいまいち集中できていなかった。



ーーーーーーーーーー


私は今、非常に緊張しています。


何故ならば、ハルくんとデートだからです。

ただのデートなら何度もしてるからそこまで緊張しないんだけど。


なんと!!

今日はハルくんからのお誘いなのです!!


ハルくんから誘われるなんて何年振りでしょう?嬉しくてたまりません。


きっと、昨日のが効いたのかもしれません。

今まで私は幾度となく、牽制を入れてきましたが、なかなか上手くいきませんでした。


しかし、今回は期待しかありません。

それにしても、やっぱりハルくんは目立ちますね。


デートの時は、服装も髪型もビシッと決めてくる彼に、周囲の女性達は見惚れている。


『ねぇ、あの人格好良くない?』


『やばいよね!』


『話しかけてみようよ』


『私達じゃ無理だって』


むむむ。もっと眺めていたいが、変な虫が寄ってくる前に合流しましょうかね。


「ハルくん、お待たせ」


私の声に、大好きな彼が振り返る。


「おはよう、香織。今日の服も可愛いね」


「えへへ、ありがと」


彼はいつも褒めてくれる。それが本当に嬉しい。


「ハルくんも格好いいよ。いつも格好いいけどね。それより、ハルくんから誘ってくれるなんて久しぶりだね」


「ありがとう、香織。そういえば、そうか。なんだか香織と出かけたい気分なんだ」


「そうなんだ、嬉しいな。じゃあ早速行こうか。なんだか注目されてるしね」


「確かに、じゃあ行こう」


さり気なく差し出された手に、私は戸惑うことなく手を重ねた。さり気なくできるところが最高。


こんな人、他の人にはあげられません。

変な虫が寄り付かないように見張ってないと。



ーーーーーーーーーー


今日は、以前から香織がみたがっていた映画を見に来ていた。世間でもかなり話題となっている恋愛映画だ。


結婚を約束した2人。しかし、結婚式を控えた新郎新婦に悲劇が襲いかかる。新婦に病気が見つかるのだ。余命宣告を受けた夫婦の生き様を描いた物語。


何年も前に話題になった小説が原作となっている。ありきたりな設定ではあるが、楽曲や演者の演技が良かったようで、人気に火がついたようだ。


「じゃ飲み物買っていこうか」


「うん、ポップコーンも!」


「はいはい、キャラメルでいいか?」


「さすがハルくんわかってるぅ」


香織はキャラメル味があれば、だいたいキャラメルを選ぶ。わかりやすいな。


俺たちは、飲み物とポップコーンを購入し、座席へと向かった。



ーーーーーーーーーー


「んー、結構良かったね、ハルくん」


「そうだな、思ったり良かったかも」


まぁ、原作通りだったらもっと良かったんだろうな。

原作と違う点としては、一夫多妻が認められたため、こういう映画ではヒロインが多数登場するのが基本となったのだ。


最愛の女性の死。それを乗り越えようと絶望から立ち上がる男性。このままならよかった。なのに。


「なんで、違う女が出て来ちゃうかなぁ」


「そうだよなぁ」


やっぱり、香織もそこに引っかかったようだ。

一夫多妻制がこんなところでも猛威を振るうとは誰も思ってなかっただろう。


「さて、いい時間だしご飯でも食べるか?」


「いいねぇ、パフェ食べたい!」


「はいよ、確か美味しいパフェの店があったよ」


「ハルくんサイコー!」


俺達は美味しいパフェを求めて、近くの喫茶店へと向かった。まさか、そこで知り合いに会うなんて、この時は思っていなかった。

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