@taisei_natume

第1話

「これで君も愛を知ることが出来る。」

鳴り響くサイレンの音を背に男はこう言い残したー。




やり手の営業マンとして働く、小林拓海(28歳)。

日頃から仕事に対して情熱的で、なおかつ真面目で気さくな性格から、上司からの期待はもちろん、部下からも熱い信頼を寄せられるエリート営業マンだ。


大学を卒業し東京の大手不動産会社に就職。

大学時代からの恋人、遥と5年前に結婚し、4歳の娘、真夏、そして8月には第2子が出産予定だ。


充実した仕事に愛する家族。

そんな幸せに溢れた拓海の生活は、初夏のある日に終わりを告げる。


7月に入り世間は夏休みモード

ひと足早い夏休みを取った拓海は家族とショッピングモールへ出かけていた。


「今年の夏はとくに暑いな」

拓海はそんな小言を言いながらショッピングモールへ車を走らせた。


ショッピングモールに着くと1階のメインホールで娘が最近ハマっている戦隊モノのイベントがやっていた。


「女の子なのに戦隊モノが好きなのは誰に似たんだか」


「なにいってんの、今は男女関係なく好きなの!」


妻の遥は生粋の戦隊モノマニアだった


「悪い人がきたらね、真夏がママとお腹の子を守ってあげる!」


「おい、パパは守ってくれないのか…」


娘の言葉に拓海と遥は目を合わせ笑いあった。


買い物をしていると、子供服売り場で真夏が1着の白いワンピースが欲しいと言い始めた。


「もう、お洋服ならこの間買ったでしょ。」


「そうゆう年頃なんだよ。もう1着くらいいいだろう。」


「だーめ。もうすぐ誕生日なんだからそれまで我慢しなさい。」


真夏は名前の通り8月生まれでもうすぐ誕生日を迎える。


ワンピースを買って貰えずあからさまに落ち込む真夏。


拓海は心を痛めながらも、アイスを買い与えなんとか機嫌を直すことに成功した。


そうして、ひとしきり買い物を終え帰るところだった。


「ちょっとトイレ行ってくるから2人は先に車に戻ってて!」


分かりやすい拓海の嘘に、「仕方ないなあ」といった顔で頷く遥。


普段仕事で忙しく、あまり構ってあげられない真夏にやはりワンピースをプレゼントしてあげようと拓海は再び子供服売り場へ戻った。


ワンピースを購入し、車へ向かおうとした時、メインホールの方がやけに騒がしくなっているのが分かった。

明らかに先程のイベントの盛り上がりとは違う雰囲気に、拓海はザワつく感情を抑えメインホールへと走った。


人だかりを抜け目の前に広がる光景に拓海叫んだ。


「遥!真夏!」


遥の腕の中に真夏の小さな体が抱きしめられていた。


「拓海。真夏がね、守ってくれたの。」


「でもね、真夏がね、動かないの。」


拓海は真夏を抱き抱えた。


「ほら、真夏。ワンピースだぞ。さっき欲しがってたやつ。これを着て一緒に出かけよう。」


「真夏、、、真夏!」


腹部から滲む鮮血に真っ白のワンピースは真っ赤に染った

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