君と出逢ったもう一つの世界
桜 実彩
第1話 【日常】
眩しいくらいの光に包まれて、僕は君と出逢った。
君はただ少し微笑むだけ。風鈴のようにどこか、儚い君から目を離せなかった。
「おはよう」、今日も何一つ変わらない1日に。誰からもかえってくるはずもないのに、空っぽの部屋で一人呟いていた。今日は少し、体が軽い、とてもとても長い夢を見ていたような、そんな感覚だった。でも、あくまで夢。もうすぐ、学校に行かなければ。早く、身支度をしよう。きっと、良い日になる。今日も、僕は幸せ者だ。大丈夫だ。理椿(りつ)。
高校2年生の冬。もうすぐ高校3年生になるため、先の進路を考える友達も少なくなかった。僕にはまだまだ遠い先のことのようだ。
「おはよう!!」
「おはよう優太(ゆうた)、今日も相変わらず早いね」
「また、朝練でさー。真冬だって言うのに、寒すぎだろ」
「ははっ。お疲れ」
優太はいつも明るくって、好きなことには物凄く熱が入るタイプだ。そんな優太が僕はうらやましく想うし、自慢の大好きな親友だ。
「理椿は相変わらず、何かしないの?」
「とくに僕は良いかな…」
「理椿って、自分のことになるとクールだよな。俺も理椿みたいにクール系目指そうかな」
「また、冗談言って。優太は今まで通りで良いと思うけど」
「ありがとっ」
いつも通りの会話、でも僕にとってこの日常が幸せな時間だ。この時間を、一生の物に出来たらどれだけ幸せなことか…。本当に、一体何度同じことを考えたことか…。
ーーキーンコーンカーンコーン
チャイムの音とともに僕の時間も終わりを迎える。
「じゃあ、また明日。部活頑張れよ!」
「ああ。ありがと。また明日」
僕にはとくに夢もなく、自分の好きなことだってない。優太みたいに、好きなものが出来たら僕も変われるのかな…。いや、優太はいつだって努力家でだからこそ本格的にプロのバスケット選手だって目指せる。僕にこんなにも努力できるとは思えない。僕は僕らしく生きよう。今日も、楽しかった。でも、そのまえに今日は、少し胸騒ぎがする。やっぱり、朝の夢のせいだろうか。いやきっと、最近、考えすぎてて、きっと疲れているんだ、さっさと寝て早く忘れよう。
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