修学旅行 旅館にて晩メシ編

午後十八時零分。


旅館の晩メシの時間だ。


俺は翔とABくんと食堂『大海』へと向かった。


「おお~。おいしそう!」

「な。バイキングじゃねえかあああぁぁぁ‼」


俺が喜びを漏らすと、翔が「フォー‼」と叫んだ。


うっせえ。そりゃまあ、気持ちはわからなくはないが。


「じゃ、俺はお先に」


まだ叫んでいる翔を置いて、俺はバイキングを始めた。


いろいろあるので、かたっぱしからあさって食べたいものをよそう形式でよそっていった。


「こんなもんか?」


お、おおおおおいしそう‼


プレートは揚げ物とスウィーツばかりになってしまったが、しょうがない。バイキングだからな??(野菜は一切入っておりません)


「じゃあドリンクドリンク♪」


俺がドリンクバーに向かってるときだった。


ヒュッ。


…………。


「ぎゃあああ‼」


我を忘れ大絶叫した俺の声攻撃を間近で受け、ビクッと縮こまる小さな体。


こいつこそが、俺の大絶叫の犯人、いや、俺のプレートにほうれん草の胡麻和えをおいた犯人だ‼


「もう、びっくりしたじゃん、神宮くん。女の子を驚かせちゃダメだぞ!」


自分が犯人だというのに、あざとく俺のせいにする犯人、如月さん。


「俺のプレートに勝手にほうれん草の胡麻和えを置かないでくれるかな??」

「だって……神宮くん野菜ないんだもん。体調管理は大事だもん」


如月さんはすねているような顔、声で反論をしてきた。


「如月さん今すぐこれを戻して‼アスク頼む‼」

Noノー!とりあえずそれ食べてね!Forgive me if I don't eat(食べないと許さへんで)!」


如月さんは「べーっ」といじわるな笑みを浮かべながら自分のをよそいにいった。


くそぉ、如月さんめぇ……!


最後なんて言ったかもわからなかったし!


俺はドリンクバーに行ってメロンソーダをくむと、向き合って座る席に一人で堂々と座った。


ここさ、豪華だし、景色もいいし、あんまり人目も少ないし、最高なんだよなあ…!


うん、揚げ物たちはみなおいしいのう。


サクサク、じゅわ、カリカリ。


最高の音。


そうして俺は揚げ物をバクバクと食べ終えると、軽くよそったプチシューを一口で食べ、しゅわしゅわと音を立てるメロンソーダを少し飲み、また席を立ちあがった。


今度は主食とデザートをよそおっと。


俺はお盆だけ持ち、またバイキングのところに行く。


「えっと、ラーメンがいいかな……ラーメンください!」

「はいよ!」


目の前で料理人さんらしき人がミニラーメンをつくって、それをくれる。


あとおいしそうだからオムレツももらった。


デザートは小皿にどんどんおいていき、気づけば全種類一個ずつ置いていた。


アイスは溶けるからおあずけ。


人目につかないあの席へと戻ると、俺の向かいの空席だったところに誰か座っている。


あれは。如月さんではないかっ⁉


「やほ。神宮くん席もらいましたー」

「あ、うん」


普通のように座っている如月さんにおどろきつつも、俺はお盆をおいて座り、ミニラーメンを食べ始めた。


ずるるるるっ。


ラーメンを吸い込む音がなる。


「うっまー!」


なにこれマジでうまい‼


あれ、もうない。


一瞬でなくなったミニラーメンのどんぶりを置いといて、オムレツを食べた。


とろとろほかほかでおいしかったぜ!


「うわ~。デザートだ~!」


デザートパラダイスを前に瞳がキラキラ輝いてあるだろう俺に、如月さんはクスリと笑った。


「神宮くん、子供みたい」

「っ⁉」


急な赤ちゃん扱い発言に赤面する。


「あ、赤ちゃんじゃないよ!」

「赤ちゃんって言ってないよ? 子供だよ」

「同じでしょ!」

「違うよ」


数秒の沈黙のあとに、二人して「「ぷっ」」と笑った。


「じゃあ、改めていただきます!」


俺はケーキを食べた。


ロールケーキを食べた。


プチシューを食べた。


ヨーグルトを食べた。


食べるたびに満足感というか、幸福感があり、とても幸せでおいしい。


そんな俺をみながら頬杖をついていた如月さんは、爆弾発言をした。


「ねえ神宮くん。そのケーキ、あーんしてよ」

「⁉」


プシュウ、と俺はともかく如月さんまでもが赤面する。


「ほら、はやく」


口を開けて目をつぶる如月さん。


いや、俺ちょっときついんですけど……?


「わ、わかったよ」


俺は仕方がなく如月さんのフォークを借りて、ミニロールケーキをさして、如月さんに近づけていく。


「はい……あー、ん……」


俺は震える手で如月さんにあーんした。


ロールケーキが如月さんの口の範囲に入ると、如月さんの口が閉じ、もぐもぐとし始めたので、俺はフォークを抜いて如月さんに返す。


「おいしいよ♪」


余裕ぶって飲み込んでいる如月さんであったが、残念だったな。


その顔がゆでだこみたいになってるぞ。


俺はダッシュでアイスを二つもってきて、如月さんに差し出した。


「熱いの? アイス、食べる?」

「あ、うん、もらうね……」


そのあと、俺と如月さんは無言で大量のアイスを食べたのであった。


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