フレアとアズ 2

「えっと…。 つまりオリバーさんの店に来た、ある兵士から請求書をレティが貰う。 しかしレティは知らない事なのに、律儀に支払った後で思い詰めたレティは出て行った…と。」


「そしてオリバーの#甥__おい__#との話をした後に、その何とかっていう貴族に引き止められかける。 その時、あんたの護身用にあげた道具で時間稼ぎしながら森の奥に進んでいった。 …と。」


「そう…なりますね。 先に説明を切り出せば良かったですね。 すみませんでした。」


 外は明けてしまったが、室内のためか未だに気付かない2人は整理を付けながら、話を続けていた。


「いや。 こっちもレティのことで切羽詰まってたから、お互い様だよ。」


「ありがとう、ございます。 それで、えっと…フレア様の用事とは一体どのような事でしょうか?」


「ああ。 この陶器はレティが作ったらしいんだが、依頼者が誰か分からないようだ。 誰かがお忍びで来たようだが、忘れているようだからね。 王城とは言っていたらしいんだがね。 そこで、あんたの所に来たってわけだよ。 確か昔、持ち主や贈る相手を導き出すって魔法があっただろ?」


「ええ、はい。 確かに有りましたね。では少々お借りいたしま」


「ーーあぁ、ついでだけどさ。 この陶器を使ってレティの居場所を探ってほしいんだよ。」


 アズが納得し掛けたところで、フレアから唐突に聞かれて一瞬何と言ったか分からなかった。


 そこは長年の付き合いで言われたことを反復してみると驚きが先に呟いてしまっていた。


「…まさかフレア様っ! レティを追いかけるおつもりでしょうか?」


「当たり前だよ、わたしゃの孫娘だよ!? しかも帰ってみれば、土産と置き手紙だけって…」


「それはそうですね。 ではここに以前、レティから頂いたハンカチが2つあります。 保護の魔法を付与してあるので、今もハンカチの持ち主はレティです。 これを頼って探しましょう。」


「そんなものを持ってたのかい。 じゃあ…。 てか、あんたも行くつもりかい!?」


「そりゃ、そうですよ。 この研究所では既に後継を育て上げました。 王からの許可書も作成できております。 あとは後継に研究所を譲るだけですので。」


「手際が良いねぇ。 わたしゃは先に行くよ、オリバーが待っているからね。 今頃オリバーは店を畳んでいる頃かね。 …王には泣かれるかもしれないけど。」


「でしょうね。 私も許可書を貰うのに泣き付かれて、出て行くまでは研究所を存続させる事で引いてくれましたし。」


 アズはある時の思い出を思い起こしながら、フレアに遠い目をして語り聞かせた。


「はぁ。 それで贈る相手はわかったのかしら?」


「えぇ。 名義は財務卿の側近のようですが、依頼人はその財務卿の夫人のようです。 今は会議室に居るようですね。」


「それで、あの子はどこに居るの?」


「今は…。 えっ!?」


「…なんだい、いきなり。」


「その。 レティは魔の森の深部で野営して、いるようです。」


「はぁ!?」

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