第22話 とにかく節約 ※アーヴァイン王子視点
「こんな高額な値段では、許可することは出来ないッ!」
「し、しかし……」
無駄に贅沢な劇場の建設を中止して確保した土地に、民に開放して生活するための新たな住宅の建築を命じた。つい先日、新たな劇場を建てたばかりだというのに。その記念にパーティーまで開催して、あの女は贅沢していた。
劇場なんて、街に一つあれば十分だろう。既に何箇所にも建っているのに、さらに増やして、それでも飽き足らずに次も増やそうとしていたなんて。そんな計画など、当然中止した。これ以上、無駄に浪費したくない。その金は、民のために使われるべきなんだから。無駄に多い劇場や意味のない施設は、いつか解体する。残念ながら、今はその余裕はないので後で。
とにかく、民のための住居を増やすことから。衣食住を充実させていくために。
民のために建てる住宅の担当者が持ってきた予算案を確認してみると、ありえないほど高い価格が提出された資料に羅列されていた。ひと目見ただけで分かる、無駄の多すぎる見積もり。
こんなもの、速攻で却下する。担当者は、とても不満そうな表情。納得していないようだ。こんな案を持ってきて、よくそんな表情が出来るものだ。
「言い訳をするな。とにかく、費用を計算し直せ。特に、この資材費はなんだ!? 高すぎるだろう」
「お言葉ですが、殿下! 現在、王都では物価が高騰しております。建築するために必要な資材の価格は、どんどん上がっております。ですので、このくらいの価格でも相当に無茶な……」
「だからといって、この金額はおかしいだろう? こんな高価な材料を使っていては、いつまで経っても建設を始めることは出来ないぞ?」
「それは……、っ!」
「いいか、お前たちは資材を安く入手するために商人と交渉するんだ。そのために、高い給料を払って雇っているんだ。ちゃんと、役目を果たせ」
一から予算の見直しを命じて、担当者を部屋から追い出した。今度こそ、私の納得する見積もりを提出させるように伝えて。
しかし、なかなか思うようにいかない。
クリスティーナを追い出し、無駄な計画の中止を命令して、無駄に支払われそうになっていたお金を回収することに成功した。ここまでは、良かった。
確保したお金を有効に使うための計画が、なかなか上手く進まないのだ。それに、回収したはずのお金は、実はまだ回収することが出来ていなかった。そんな馬鹿げた報告もあった。意味がわからない。計画を中止させたのに、なぜ費用を回収することが出来ないのか。
支払う必要のない金は、残らず全て回収するように強く命令している。回収の失敗や、横領なんて絶対に許さない。
全て完了するまでは、私が厳しく目を光らせておく必要があるだろう。
とにかく、そんな状況だから新しい計画で無駄に浪費するわけにはいかないのだ。削れるところは、とことん削っていく。無駄をどんどん省いていく。
それが、私の仕事だから。
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