第20話 急展開の裏で ※マティアス視点
アーヴァイン王子が婚約を破棄した。その話を聞いた時、僕は急いで正確な状況を知るために動き出した。どうして婚約を破棄されたのか。どういった状況で、どんな目的があったのか。婚約を破棄されたクリスティーナのことが、とても心配だった。
ミントン伯爵家の使用人達から、彼女が実家から追い出さたと聞いた時には、一旦落ち着くことが出来た。クリスティーナが、王都にいくつか拠点を構えていることを僕は知っていた。そこに逃げ込めば、おそらく大丈夫だろうから。
彼女が実家に軟禁されていたり、修道院送りにされていたなら手を出せなかった。そんな状況と比べたら、実家を追い出されたほうがよっぽどマシだろう。彼女は普通の貴族令嬢じゃない。たくましく、商人として生きていける力があったから。
更に状況を確認して、彼女が自由になったことを知った。それなら、貴族じゃない僕にも、チャンスがあるんじゃないだろうか。やはり期待してしまう。だけど今は、クリスティーナが落ち着いて行動できるようになるまで、サポートしてあげることが大事だろう。焦ってはいけない。焦ると人から信頼を失いやすくなる。
僕は商人だ。まずは、自分がしてほしいことではなくて、相手がしてほしいことを突き詰めることが大事だ。その事を忘れないようにしないといけない。
そして再び、情報収集に専念する。とにかく、アーヴァイン王子が何を考えて婚約を破棄したのか突き止める。そして、ロアリルダ王国で何が起きるのか予測する。
なんとなく嫌な予感があった。だから僕は、より慎重に動くことにした。そのためにも、情報を知ることが大事だろう。
アーヴァイン王子が、婚約を破棄した直後に別の女性と婚約したことが分かった。エステルという、ワイルデン子爵家の令嬢と。しかも、貴族が大勢居るパーティーの最中に、皆の前で宣言したらしい。
その時の話を聞いて、僕は頭が痛くなった。無駄遣いがどうのこうの、民のために倹約が必要だということを訴えていたらしい。新劇場の完成を祝うパーティーで。
本心は、どうか分からない。他に何か目的があったのかもしれない。だけど、その話だけで判断するならば、アーヴァイン王子は商売に対する理解が足りないようだ。
彼は王族なので、商売人のような知識は必要ないのかもしれない。しかし、王国を治めるためにも、ある程度の知識はあるべきだと思うが。
おそらく今まで、婚約者だったクリスティーナが彼の手綱を握っていたんだろう、ということが分かる。彼女の活躍を間近で見ていると、それは明らかだ。
ここ数年、ロアリルダ王国が発展してきたのはクリスティーナが実施した数多くの計画や商人との取引が成功してきたおかげ。それで王都は活気づいていた。つまり、彼女が居なくなったら――。
クリスティーナの居場所も判明した。少し前に、彼女が購入したが利用していない屋敷に避難しているということが判明。すぐに会いに行った。
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