第10話 これからは私の時代である ※アーヴァイン王子視点

 クリスティーナに婚約破棄を告げた。それは仕方のないことだ。彼女は最後まで、金遣いの荒い性格を直そうとしなかったから。


 ロアリルダ王国の民のために、私は何が出来るのか。それを常に考えていた。民の負担を減らして、豊かな生活を送れるようにするにはどうするべきか。色々な構想を練っている。


 それを実現するために、なるべく早く動き出すべきだということも分かっていた。クリスティーナとの関係を断ち切って、貴族達にも同時に周知した。彼女ではなく、エステルが新たな婚約相手であることを。


 まず最初の計画は、とても効率的に進めることが出来た。そして、無事に成功。


 やはり、パートナーとは理解し合える関係のほうが良いだろう。エステルは、私と同じように民のことを考えてくれている。だから、彼女が私の王妃になるべきだろうと確信していた。


 私の考えをエステルに伝えると、彼女は嬉しそうに微笑んだ。そして、これからは一緒に努力すると約束してくれた。私のことを支えて、頼りになるパートナーが居て幸せである。





 クリスティーナに婚約破棄を告げた翌日、私は王に知らせに来た。彼女との婚約を破棄したことを。どのような反応を見せるのか、予想はしていた。


「陛下、お知らせしたいことがあります」

「なんだ?」


 陛下の御前に膝をついて畏まる。父親の覇気があった頃の姿は覚えている。だが、今の衰えた姿を見ると面影はない。やはり、こんな人に王国を任せたら駄目だろう。早々に退位してもらわねば。


「クリスティーナとの婚約を破棄しました」

「なんだと……?」


 私の報告を聞き、王は驚いた表情を浮かべる。そして次に、顔を真っ赤にして怒りだした。予想した通りの反応だ。


「なんてことをしたのだ。ただ、彼女に任せておけば良いものを……ッ!」

「お言葉ですが。クリスティーナの考えは、私とは合いませんでした」


 理由を聞いても王は納得しない。クリスティーナの働きを異常なほど評価していたから。だけど、彼女の考え方だと貴族だけしか幸せになれない。民の負担が増加していくだけ。それは、とても不幸なこと。


「せっかくお前のために役立つ婚約者を連れてきたというのに、自ら捨ててしまうとは。そんなことをするのなら、ワシはもう知らん! お前の勝手にしろッ!!」

「わかりました」


 激怒する王のことを、私は冷めた目で見つめていた。前から思っていたが、なんて無責任な王だろうか。このような人物が、ロアリルダ王国に君臨していることは民にとって不幸なことだろう。


 だが、これから先は私の時代になる。今の王が放り捨てた責任を私が受け取って、国を治めていく。ロアリルダ王国の民は、幸せになるはずだ。皆が私を讃えてくれる未来を予感する。これから先が、とても楽しみだった。

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