第8話 仕切り直し
目が覚めると、とても気持ちの良い朝だった。
「おはようございます、お嬢様」
「おはよう、ミナ」
起き上がって、ベッドから出る。メイドのミナに手伝ってもらい、服を着替えた。その頃には、意識もしっかりと覚醒する。
「朝食を用意しています。こちらへ」
「わかった」
ミナに案内されて、私は寝室から食堂へ移動する。先を歩くミラは迷うことなく、まっすぐ進んでいく。昨晩のうちに、屋敷の通路は把握したらしい。かなり広い屋敷だけど、大したものね。彼女の案内がなければ、私は迷っていたでしょう。
かなり広い食堂に到着した。テーブルの上に、とても美味しそうな食事が用意されていた。私は中央の席に座って、食事を始める。かなり広々としたテーブルに、一人だけ。これからは、これが普通になるのかしら。
食べ進めながら考え事をする。今後の予定について。
進めてきた取り組みの多くを、一から見直していく必要がありそうだ。一晩で私の立場も変わってしまい、計画の状況が大きく変化したから。対処しなければならない課題も多そうね。
これから、忙しくなりそう。でも意外と、そうじゃないのかも。今まで悩んできた家族関係や婚約相手との関係、その辺りで悩む必要がなくなったから。
アーヴァイン王子の婚約者として処理しなければならない仕事も多かった。だが、今後はその仕事をする必要は無くなる。私が、彼の婚約相手じゃなくなったので。
ミントン伯爵家の令嬢として対処する仕事もあった。追い出されて、ミントン家の人間じゃなくなった私は、そちらの仕事を処理する必要もなくなった。
考えてみると、意外と活動する時間が確保できそうだわ。その分、余裕が生まれるかもしれない。
実家を追い出されたけれど、自室に必要な物は置いていたかしら。完了した施策の計画書や予定表、機密性の低い資料などを置いていた気がする。外に持ち出す必要のありそうな物は、あの部屋に置いてなかったはずよね。
あちらの屋敷に残っている執事にお願いして、機密性の高い情報は秘密裏に確保をしてもらおうと考えた。だけど、その必要は無さそうなので放置することに。残っているのは、既に価値のないものばかり。
それよりも、向こうに残っている使用人を、早くこちらに呼び寄せよう。希望者を募って、こちらに来たい者を連れてこよう。その選定については、向こうに居る執事に任せようかしら。
それから、他には――。
「お嬢様」
「あら、もうこんな時間なのね」
ミナに呼ばれた私は、食事と考え事を一旦止めた。かなり集中していたようで、気づいたときには随分と時間が過ぎていたようだ。
「お嬢様、マティアス様がお見えになりました」
「マティアスが? 分かったわ。執務室に通して。私も、すぐ行くわ」
「了解しました」
商人のマティアスが訪ねてきたらしい。私が、この屋敷に居ることも既に把握しているようだ。さすが、耳が早いわね。
マティアスと私は協力関係で、いくつか一緒に事業を展開している。色々な状況が変わってしまったので、今後の計画について彼と話し合う必要があった。
なので、屋敷を訪ねに来てくれたのはちょうど良かった。もしかしたら、向こうも何か大事な話があるのかもしれない。早速、会って彼と商売について話しましょう。
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