最終章

リストカットっていう言葉すらしらずに、

そんなことをしている人が他にもいるとも知らずに、

ただ、切りたくなって、切っていた

初めは、怖くて、血が出ない程度に切っていた

けれども、初めて血が出るくらいに切ったとき、すごく嬉しかった

左腕を掲げてベッドに寝転がってみた

血がゆっくりと腕を伝った

綺麗、と思った

さっきまで苦しくて気持ち悪くてならなかったのに、スキップしたい気持ちになった

錆びだらけのカッターではろくに切れん

やっぱり100均のデザインナイフだよ

生きてゆくために切った

度々訪れる自殺願望に負けないため……、いや、死ねなかったのは単に勇気がなかっただけか。

ずっと得体のしれない心の痛みに追い回されていたのに、それが少しだけ可視化された

誰にも邪魔されない至福が誕生した

誰かが家に帰ってくると、慌てて水で流して止血して、

長袖の下へと隠した

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赤裸々備忘録 かみつき @kusanoioriwo

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