95.お盆に感じた果物たちの香り

 青森から埼玉に出て来て7月にお盆の行事をする方が意外と多いんだなって感じたのが結構印象的で、私の中でお盆と言えば8月意外の概念は全く無かったんですよね。ねぷたまつりが終わって、夏の猛暑もほんの少しだけ落ち着いて、何となく物寂しさを感じる季節。それでもまだまだ夏は真っ盛りで青空が目に染みたりする中、部活も短い休み期間に突入したりなんかするのがお盆だったんですよね。実家にはご先祖様を祭るお仏壇が有って、盆提灯が飾られてお供え物も沢山供えられたりしてたんですが私はそんなことする事も無く、親不孝な毎日を過ごしております。


 で、その時期になると色んな果物の香りが家中に漂ってんですよ。特にすももの甘くて特徴的な香りを始め、桃の香りに似てるんですが果肉が少し硬いネクタリン。あと、父親が出先で貰ってきて家の中にごろごろ転がってた西瓜すいかの少し青っぽい香り。私の実家でのお盆の思い出と言えば果物の香りなんですよね。夏の果物は冷やして食べると押しなべて美味しいですもねぇ。


 特に好きだったのがメロンかなぁ。あの、マスクメロンじゃなくてプリンスメロンって言う奴。マスクメロンとアンデスメロンをかけ合わせた品種なんだそうで、両方の良いとこ取りをしたようなお味で種が少なくて実が少し黄色っぽくて私の実家でメロンと言えばほぼこれで、青森ではこれの方が作付面積が遥かに広かったんじゃないでしょうか?いまだどうか分かんないんですが、農業機械関係の仕事をしていた父が出先の農家からお土産って頂いて来るのはまずこれでしたね。西瓜と同様、冷蔵庫で冷やすよりもキリッと冷たい井戸水で冷やして食べるのがホントに美味しかったなぁ。自然な甘みと自然な冷たさは夏のたからに感じました。


 それと、李。これがホントに好きで有れば喜んで食べてました。甘酸っぱくて独特なむにゅっとした噛み応え(表現が違うかもしれませんが)あれが癖になるんですよね、そんでもって鼻に抜けて行く甘くてフルーティーな香りが良くてお盆の季節のおやつと言えばこれが定番でした。スーパーで売ってるのを見るとなんかお盆を感じてしまう果物に刷り込まれてしまっています。


 実家にいた頃、果物をお金を出して買ったと言う記憶が殆ど無くて、特に西瓜と林檎は自動的に家の中に転がってるって言う印象だったのは父親の仕事の関係が大きく影響してるんですが、なんかそれって物凄く幸せな環境だったんだなって今になって思い返してしまいます。果物以外にも野菜も結構貰い物が多くて、葱やら白菜やらも家の中に結構自動的に転がってたような気がします。時によっては、冷蔵庫の中に熊の肉なんて入ってましたからね。裕福な収入の家庭では有りませんでしたがこれってある意味究極の贅沢だったのではとこの歳になって考えてしまいます。私の部屋の中に農作物が自動的に転がってるなんて言う事は100%有り得ない事ですからね、ある程度収入が有る割には今の方が貧しい生活をしてるんじゃないかって思ったりなんかしますもの。


 昔の記憶は美化されて尾鰭背鰭おひれせひれが付いて錯覚を起こしているだけなのかも知れません、でも、なんだかあの時期の方が輝いている様に感じるのは、優しい家族と一緒に穏かに暮らしていたからかも知れませんね。今の私には望む事の出来ない環境です、取り戻せればとは思うんですが……ね。

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