死後ヘと歩むのは日常だ

部屋がひろくなる

私の消えた部屋から

ものがきえていく

なんと清々しいのか


死後よ、はやくやって来い

売り払え、焼き払ってくれ

この狂おしい感情も捨てて


そのさきにいくのだ


幼い日、

太鼓の音だけ

とんとことことこ

部屋の隅で転げて

聴く耳もなく

かたまって、

胸を打っていた 


           よく落とし物を

           する人でしたから

           破れた太鼓の皮が

           風にびょふびょう

           忘れたころに今日も

           何処かで走り回って

           いるでしょうね


いつか、もらい受けた

青い遮光カーテンで

寂しい夜を遮って

ほら、あの辺り

シミが島に成る

船が生地裏から

朝陽を受けて

カーテンの陰から

走る帆が伸びて、さぁ


カーテンが開かれた

部屋がひろびろと

私の消えた部屋から

ものがきえていた


           よい香りでしょう?

           線香は辛気臭いから

           皆んなで珈琲飲んで

           それだけがいいって


ベランダの縁から

アマガエルが跳んだ

私は死後へ蛙は生へ

やがて、同じ場所に

着地するとしても


アマガエルは広大な世界を

まだしばらく跳び回るのだ

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