ドライ王国王宮編

第19話 王宮にて

-side リアム-




 王宮までの距離は、ドライ王国で俺たちがいたエッジ町から3日くらいだ。アインス王国脱出の時とは違い、道が綺麗に舗装されていたから快適な旅だった。



「いらっしゃい。リアム。レオンさん」

「おう」「お、お出迎えありがとうございます」



 王宮に着くと、人払いしてくれた応接室で、ノアが豪華な衣装で出迎えてくれる。

 一緒にいる豪華な衣装を纏った、30代くらいの黒髪黒目のダンディなおじさんは誰だろうか?気になり、恐る恐るそちらの方向をみる。



「ぶはっ。確かにノアが言った通りいい子そうだ」

「でしょ。あ、2人に紹介するね。この人はヘンリー=ルイス公爵。僕の叔父にあたり、Sランク冒険者だ。今回の戦争で指揮をとる人だよ」

「お、あんたがヘンリー公爵か。噂は聞いているぜ。この国最強の冒険者だとな」

「こちらこそ。レオン君が史上最年少Sランク冒険者ということは耳に入っている。リアム君もよろしくな」

「よ、よろしくお願いいたします」

「あはは。リアム。そんなかしこまらなくて大丈夫だよ。この場に他の人はいないから敬語とかもいらないし」

「う……うん(みんなのオーラが凄すぎて、自然と敬語になったんだよね)」

『それについては同意する。ここは俺にも眩しすぎる』



 それから、しばらくレオンがノアとヘンリー公爵と一緒に談笑していた。



「(リアム。だからと言って俺だけにこの2人を相手させるのも、どうかと思うぜ)」

「(まあ、ほら。レオンは俺の師匠だから、師匠が弟子のために犠牲になるのは当然ということで)」

『そうだな。俺もリアムが犠牲になる必要はねえと思う』

「(え、もしかしなくても四面楚歌かよ?)」



 珍しく静かにしているルーカスも同意見のようだ。あちこち、飛び回っている。



「おや、ふっ。確かにこれは化け物だな。

 リアム君がとんでもないと言った噂は本当だったのか」



 すると、見えていないのに的確にルーカスを目で追い観察するヘンリー公爵。



「……!見えているのですか?」



 今の言い方、オカルトの言い方になってしまった。いや、実際そうなんだけど。



「いやいや、流石にそこまでは。ただ、これだけ強大な力を持っている魔物など今までほとんど、会ったことないからな。どこにいるのかくらいはわかる」

「(他に誰もいないし、姿を見せても大丈夫そうだね)」

「(ああ。隠してても意味なさそうだしな)」

『お、いいのか?』



 ポンッ……!



『よお。ヘンリー。これから、リアムがお世話になる』

「ちょっ。こら、いきなり呼び捨てはだめだろ」

「ははっ。別に構わない。それよりも、凄まじいな。昔、会ったエンシェントドラゴンと同等くらいの圧力だ」

「……!!エンシェントドラゴン。伝説上の魔物ですね」

『おいおい。確かにエンシェントドラゴンは強いが、俺の方が強いぞ。なんせ、俺は神竜だからな!比べるまでもねえ』

「本当……、だろうな。こちらの味方になってくれたら、凄まじい戦力だ」

「それについては、もう決まっているみたいですよ」

「ああ。ノアの言った意見が本当ならな。俺は悪くないと思ったぜ」

「父上には書面で許可は取ってある。後で会う時に確認するだけだよ」



 流石ノア。10歳にして、大人顔負けの実務能力だ。



「あ、ありがとう。それとこれ。クッキー焼いてきたんだ。よかったら」

「……!!本当か。リアムの作った飯は美味しいからな」



 今回作ったのは、プレーンクッキーだ。

 プレーン(plain=簡単な)と言う意味だから、ただのクッキーをお洒落な言い方で言っているだけである。バター、グラニュー糖、塩、卵黄、薄力粉を粉っぽさがなくなるまで混ぜて、ラップで包み一旦冷蔵庫で冷やす。

 その後クッキーの形にし、オーブンで焼いたら完成だ。



 サクサクサク……。



 みんながその場で食べる。

 事前にルーカスにも美味しいと言ってもらえてはいたが、緊張する。



「……!!美味しい!こんな美味しいクッキー初めてだよ」

「確かに。これは美味しいな」

「うまっ」



 ホッ。どうやら好評のようだ。

 スキルを得た後でも、自分の作った料理を他人に食べてもらうのは、緊張する。

 前世でも作ったご飯が、不味いとは言われたことはないけど、美味しくないという反応は見ただけで分かるしな。

 だから、今回みんなが、本気で喜んでくれているようでよかった。



「ありがとう」



 ギーー、ガチャ…。



 その時、ドアが開いた。場に緊張が走る。

 ルーカスは透明になった。



 ♢ ♢ ♢ ♢ ♢



「ここですわね。美味しそうな香りがするところは」



 見ると、金髪青眼の美少女がいた。

 それはもう、思わず見惚れてしまう程の。

 年齢は俺と同い年で、5歳くらいだろうか?



「なんだ。ミラか。誰かと思って、驚いたよ。一応人払いしてたから」

「お、お兄様。それに、ヘンリー叔父様まで。えっと、そちらのお二方は?」



 どうやら、ノアの妹みたいだ。

 言われてみれば、似ている。



「はじめまして。レオンと申します。以後お見知り置きを」

「(……!レオンって、そんな丁寧な挨拶もできるんだ)」

『なんつーか。似合ってねえな』

「(わかる。イメージ崩れるよね)」

「(聞こえてるわ、お前ら。ほら、リアムもさっさと挨拶しろ)」

「はじめまして。ミラ様。リアムと申します。

 よろしくお願いいたします」



 軽くお辞儀をして笑顔を作る。



 ジーーーーー。



 すると、ミラはしばらく俺の方を見てきた。……っと言うより、ぼーっとしているのに近いだろうか。頬も赤い。大丈夫だろうか?この子。



「こら、ミラ。お客様にご挨拶」

「あ、そ、そうでしたわ。私はミラと申します。ノア兄様の妹でこの国の第一王女です。

 よろしくお願いいたしますわ」



 ミラは優雅にお辞儀をする。



「「よろしくお願いいたします」」

「あの……ところで、美味しそうな甘い香りがしたのですが」

「ああ。それはリアムが作ってくれたクッキーだよ。1枚いる?」



 そう言って、ノアはクッキーを差し出す。



「あ、ありがとうございます」



 俺とノアにお礼を言ってから、ミラはクッキーを食べる。クッキーを食べる所作も優雅だ。



「……!!美味しいですわ!」



 ミラは満面の笑みを浮かべた。



「もしよければ、余っているクッキーもありますが、いかがですか?」

「まあ、いいんですの?お願いしますわ」

「こら、ミラ。お礼。はしたないぞ」



 ノアが兄の顔をしている。少し新鮮だ。



「あ、そうでした。心より感謝申し上げますわ。リアム様」

「あ、う、うん。(正直餌付目的だからね。貴族のご令嬢は甘いものに目がないって話だし、媚び売っといて損はない)」

「(お前……幼気な少女の気持ちを弄ぶなんて。サイテーだな)」

『人の心がないよな。こんな可愛い子目の前にして、そんなこと思えるとか。もしかして、真の化け物はこいつかもな』

「(それな。悪魔よりも悪魔だとおもうぜ)」

「(おいこら。言いたい方がいいやがって。この化け物ども)」



 何はともあれ、こういう形でノアとの再会を無事果たしたのだった。

 明日には、国王との謁見らしい。

 無事終わると良いなあ。



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[2018年女の子の名前ランキング]

 14位 ミラ(意味: 親愛なる、愛しい、可愛い、贈り物)←ヒロイン

[他]

 レオン(Leon)は、男の子の名前ランキングに入っていませんが、同意義のレオ(Leo)が50位にランクイン。

 (意味:ライオン)←師匠、兄貴。

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