第18話 王からの呼び出し
-side リアム-
家に帰って、冒険者ギルドで言われたことをみんなに話をしたところ、さまざまな意見が出た。
「そんな。危険です。レオンさんはともかくとして、まだ5歳のリアム様は」
「そうだな。いくらリアムが精霊使いだからと言ってまだ5歳の子供に戦わせるのはどうかと思うと、王家に直訴するべきだろう」
リサとアレクは猛反対。他のみんなも概ね同意見と言った表情をしている。
「だ、大丈夫だよ。前にノアが言ってたけど、精霊使いは丁重に扱われるらしいし」
ルーカスがいて負けようがない俺にとっては、ノアが圧倒的に有利な条件をもぎ取ってくれたことはわかっているので、戦争に参加しない選択肢はなかった。
むしろ、屋敷メンバーを説得する方が戦争で勝つよりも大変なくらいだろう。
「戦争もそうですが、クズガー様の動きが心配です。おそらく、アインス王国と戦う時、絶対に出てくると思いますし」
「父上がどうかしたのか?」
「ええ。クズガー様はSランクの冒険者なのです。アインス王国内だと、レオンさんが冒険者になるまでは最強だったと聞きます」
「実力はあるから横暴を行っても周りの人が逆らえなかったという感じ?」
「おっしゃる通りです。それに、あの方は旧体制派。つまりフィーア寄りの方なので、おそらく、今回の戦争では敵側の指揮官を任されると思います」
「へー」
「それだけではありません。もし、クズガー様が戦争に参加されるとなれば、間違いなく真っ先にリアム様を狙うでしょう」
「俺が?」
「ええ。クズガー様はリアム様を執拗に暗殺しようとしてました。アインス王国では、奇跡的な幸運により、リアム様は死ななかったのです。噂でしかありませんが、リアム様のお母様を殺害したのもクズガー様なのではないかと言われております」
「……。ふむ。(ルーカス、何か知ってるか?)」
『暗殺理由も、お前の母親についても、よく分からねえな。お前の体については、普通の人間に殺すことはできないぞ。俺を従魔にした影響で体は普通の人間とは比べ物にならないくらい丈夫になってるからな!毒も効かないし、素手でミスリルの剣を叩き破れるくらいに肌も強い』
「(それは、もはや強いっているレベルなのか?化け物じゃねえか)」
『強い従魔を従えている人間は、人間やめてる奴がほとんどだ。もっとも、俺が強いって認めるレベルの魔物は、この世界で10もいないぜ。だから、従えている人間はこの時代だとお前1人だな!』
Sランクを“そこそこ”と断じたルーカスが強いと言う魔物。碌でもなさそう。まだ死にたくないし、絶対会いたくないな。
「(ってことは、やっぱり、今回の戦争、クズガーが俺を狙ってきても死ぬ可能性はほとんどないと)」
『最初っからそう言ってるだろ。安心しろ。そして早く説得しろ!』
ルーカスに、急かされたので、再度説得を試みる。
「……。そうは言っても、この戦争にドライ王国が勝たなければここにもこれ以上住めないし、お前らの身の安全も保証できない。だから、戦うよ」
俺は真っ直ぐみんなを見つめる。説得するためではあるが、本心だし、情に訴えるというのが1番合理的な選択肢だと思ったからだ。
「……わかった。そこまでの覚悟があるんだったら、俺はお前が戦争に参加するのを賛成する」
アレクはそう言った。
「……!!お兄ちゃん!」
「考えてもみろ。どっちにしろ、ここで俺らが駄々をこねたところで、リアムを戦地に送り出すために王家は裏で手を回すだろう。今はまだ、俺らの、この国での安全を人質にしているが、今度は俺らを物理的に捕まえて人質にするかもしれない。そうなると、リアムにもっと迷惑がかかる」
流石、年長者のアレクが言うと俺が言うのとでは説得力が違う。周りも悔しそうにしつつも納得しだした。戦地に行くのも仕方がないとみんなが思ってきたところに、ハンドベルが鳴った。どうやら、来客が来たようだ。
リサが応対してくれ、手紙持ってこちらにやってきた。
「どうやら、国王陛下からの招待状のようです。3日後の朝に迎えに来るそうなので、それまでに準備して欲しいと。招待されているのは、リアム様とレオンさんだけのようです」
「え?全員ではないんだ」
「そりゃそうだろう。国王だって暇ではないからな。戦争がなくても2人しか招待はしなかっただろうぜ」
「そうですね。基本王宮に平民が招待されることはありません。なのでこのメンバーだと、他国の、上級貴族の息子であるリアム様と、Sランク冒険者であるレオンさんしか呼べる人がいないのです。国王陛下がどう思っているかはさておき、招待経費の書類上、肩書きは必要だからだと思われます」
ああ……。招待経費削減と無駄遣い防止のためか。
「リアム様の衣装選びや礼儀作法の教育は、お世話がかりとして僕がやらせていただきます。今日からみっちりいきますよ」
レルが自信満々に言う。うげ……。レルの礼儀作法教育って、確か厳しかった気がする。
♢ ♢ ♢ ♢ ♢
そのあと、すぐに衣装選びをする事になった。幸いにも前の家から洋服を全て持ってきていて、そこの中にいい洋服が沢山あったようなので着て行くことにした。
着ていく洋服は俺の価値観からすると、超ド派手だ。中世ヨーロッパの肖像画でしか見たことない洋服の雰囲気である。
全体が、淡い青の高そうなシルク生地の布で作られた洋服な上に、所々高い技巧が施された金色の模様。所々ひらひらしてるのもすごい気になる。これに、アクセサリーも身につけるらしいから貴族っていうのは凄い。
レルと相談して、当日の大体の衣装が決まった時、レオンが帰ってきた。
「おお。やってるな」
「レオン!」
「お!リアムか。流石に生まれながらの上級貴族は違うな。似合ってるぞ」
「あ、ありがとう。そういえば、3日後に王宮にお越しくださいって招待状が来てたよ」
「あー。俺も準備しなきゃな」
そう言って、やる気なさそうにレオンはその場を去る。
あんな調子で大丈夫かなと心配そうに見つめていると、「レオンさんは、王族からの呼び出しには慣れているでしょうし、心配しなくても大丈夫です。それよりも、これから礼儀作法のレッスンをします」とレルに言われた。
「え……?これからご飯の時間だと思うんですだけど。ほらあれ、ラルがご飯を運んできてくれてるし!」と、俺は、ラルのことを指差しながら返事をする。
するとラルがこちらを見て、「大丈夫です。
リアム様の分はまた別でご用意しておりますから、後でお申し付けください。礼儀作法のレッスン頑張ってくださいませ」と、非情な返しをしてきた。
「もう、時間もないですからね。これからビシバシいきますよ」
「そ、そんなあ」
こうして、俺は3日間みっちりレルに鍛えられ、レオンと一緒に王宮へ向かった。
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