第7話 不穏な出発
-side リアム-
『おい、起きろ!日が明けたぞ!』
翌朝、ルーカスが何か言っている。
まだ、寝足りない。
『今日はこの後、商業ギルドに行くんだろ?そのために昨日用意したじゃねえか!』
はっ……。たしかにそうだった。
重い体を無理やり起こす。
「ありがとう。ルーカス」
『おう!そんなことより、俺は腹が減ったんだ!飯をくれ飯を!』
「………」
ジトーー。
『な、なんだよ?』
「いや、別に」
朝から、騙された感半端ないけど、仕方なく、飯を作る。手抜きでいっか。
胃もたれしないように、明太釜玉うどんにした。
異世界でうどん食べれるの安心するー。
しかも、うどんは冷凍讃岐うどんをレンジでチンするだけ。
明太子と卵は冷蔵庫に入っていたので、手間がほとんどかかってない。
『うま。なんだこれ、ツルツルしてて、めっちゃうまいな!』
もはや料理と呼べるレベルかはわからないが、喜んでくれている。俺も一口食べる。
「うまい!文明の利器に感謝だ」
『俺はお前のスキルとノート様に感謝だ』
「たしかに」
[テイム]がなかったら、ルーカスという有能な従魔がいなくて、もっと苦労しただろう。
[絶対食堂領域]がなかったら、地球上の食事を食べれなかったので、ホームシックになっていた可能性もある。
海外で生活していると、日本食が原因でホームシックになるケースも多いからな。
似たような感じのことが起こったかもしれない。その点、押し売りされて良かったのかもしれないな。
あの神様達も意外と、信頼できそうだ。
『さて、飯も食ったし、出発するか』
「ああ。ところで、ノート様から、神託もらってないの?」
『あ!そういえば、昨日、“ほんとにごめん先に謝っとく”って言われたぞ。急いでたみたいだから、それだけだったがな!』
「……」
前言撤回、やっぱり信頼しすぎない方がいい。というか、何が起こるかくらい、前もって言ってくれたらいいのに……。
「何が起こるのかな」
『それは言ってなかったから、わからねえな。いざとなったら、俺が守ってやるからあんしろ主人!』
「ありがとう。頼りにしてる。さて、悩んでいても仕方がないし、行くか!」
『おう!その意気だ!』
♢ ♢ ♢ ♢ ♢
こうして、1週間くらい住んだ家を離れ、商業ギルドに出発した。商業ギルドに着き、中に入ると、既にみんな揃っているようだ。
アレク、リサ、双子の姉ラルと弟レルだ。
「おはようございます。アレクさん」
「ああ。おはよう。……ところで、ちっと悪いんだが、俺のパーティメンバーも一緒に同行してもいいか?昨日あの後、話をしたら、一緒に同行するって言って聞かなかったんだ。もちろん、ギルマスにも話を通している」
そういえば、そもそもギルマスに、俺以外が同行するって言ってなかったな。話を通しているってことは大丈夫ということなのだろう。
「ああ。いいですよ」
「助かる。おい、お前ら、良いってよ」
みると、アレクの後ろに、冒険者風の格好をした男性と女性が2人いた。
金髪に茶色い目のチャラそうなお兄さんがこっちに向かって挨拶をしてくる。
年齢は20代前半なのだろうか。
「はじめまして。俺がリーダーのレオンだ。ランクはS。オールラウンダーだ。同行を感謝する。もっとも、お前が許可しなくても内緒で同行してたと思うがな」
「こら、レオン。初対面で、何を。全く。すみません。私は、サリーと申します。ランクはA。ヒーラーです」
「あたしはマリー。ランクはB、魔法使いだ。うちのバカがすまない。後でしつけておく」
「あはは。大丈夫ですよ」
そこで、ギルド長が出てくる。
「これだけ、凄腕の、冒険者様たちに同行していただけたら、安心でしょう」
「え、ええ。あの、失礼ですが、すごいんですか?彼ら」
「おいおい。俺はこの国に3人しかいないSランク冒険者のうちの一人だ。護衛としては、これ以上にないだろう。あいでっ」
「まったく。すまんな」
アレクがグーで頭を殴りながら、謝る。
「い、いえ。(痛そー)」
「だが、やつの実力は本物だ。おそらく、この国では、一番の魔法剣士だろう。多少性格に難はあるが、味方にいると心強い」
「ほえー」
『なんつーか。人は見た目によらないんだな!』
「(たしかに。ただのチャラついた、兄さんだと思ってたのに)」
顔合わせがひと段落したところで、「皆さま。お話のところ、申し訳ございませんが、さっそく行きましょう。」とギルドマスターが言った。
「ええ。ところで、どうやって、誰と行くんですか?」
みたところ、このギルドには、ギルドマスターと他5人くらいしかいない。
「ここにいる商人の格好をしている者達と同じ格好をして行商人見習いとして、紛れていただきます。裏の出口に、売り物を運ぶ馬車は用意していますので。レオン様とアレクさん達は護衛の冒険者なので、そのままの格好で大丈夫でございます」
「わかりました」「おう」
♢ ♢ ♢ ♢ ♢
というわけで、俺らは渡された服に着替えて、裏の出口にきた。
するといきなり、声をかけられた。
「はじめまして。リアム様。私、ノアと申します。本日同行させていただきます。隣国のドライ王国の商人でございます。よろしくお願いいたします」
幼いが、金髪青眼の顔立ちの整った少年がいた。年齢は10歳くらいだろうか。
商人には顔が整っている者が多いが、そういう次元ではないような感じだ。
吟遊詩人とか、芸能関係者とか言われた方が納得がいくレベルである。
「よ、よろしくお願いします。ノアさん」
少し驚いたが、なんとか挨拶する。
その後テキパキとしている、ノアに案内され、みんなは荷物を置いていく。
「あれ?お前そういえば、荷物それだけか」
俺は、ルーカスに荷物を預けていたのだ。
「ああ。はい。大丈夫です。マジックバックを持っているので」
「おお。流石、伯爵家」
「いえいえ。(実は持ってないしね)」
そんな時だった。何処かから一瞬鋭い視線を感じた。そちらの方向を見るが、そこにはノアが穏やかにギルドマスターと話しているだけだった。
「……?気のせいか?」
『……あいつ』
ルーカスがノアを睨んでいる。
「(どうかした?)」
『鑑定できねーぜ』
「(……!!どういうことだ?)」
『多分、鑑定阻害系の魔道具か何かを使っているんだろうな。殆どの奴は鑑定できないから、そうする意味がわからない。怪しいから、一応見張っておくぜ!』
「(わかった。助かる)」
俺とルーカスがそんなことを話しているうちにみんなが準備を終え、出発したのだった。
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