第2話 出来る愛竜

-side リアム-




「n……、んん……ここは?」

『起きたか!転生成功だぜ!主人』

「うおっ、しゃべった!?」



 みるとさっきまでいた神竜が目の前にいた。どうやら俺はベッドの中で寝ていたらしい。

 体も軽くて、小さい。5歳くらいだろうか。

 神竜の言う通り転生したみたいだ。

 さっきの押し売りのことを考えると夢であって欲しかったが。



『当たり前だぜ!』

「そ、そうなんだ。なんかわからないけど、すごいね」

『おう。俺はすごいんだぜ!……それは置いといて、ここがどこかと言ったよな。まずお前のことから、教えてやるぜ。俺はお前の世話係だからな!』

「た、助かるよ。(な、なんか勝手に話が進んでいるような。まあ、いっか)」



 転生直後だからだろうか。頭がぼーっとしているから適当に流してしまった。



『その前に、まずは自己紹介からだ。俺の名前はルーカスだ。いい名前だろ?光を運ぶものっていう意味があるらしいぞ!

 知識神ノート様につけてもらったんだ』



 どうやらノートは知識神らしい。



「う、うん。かっこいいね。(絶対2018年のアメリカで人気な男の子の名前ランキングからテキトーに選んでるな)」

『そうだろう!』



 ルーカスは得意げにいう。



『でな、主人の名前はリアム。生まれたのは、アインス王国という場所だ。伯爵家当主と側室の子で現在の年齢は5歳。母親は死んでいるし、実質平民と変わらないけどな。基本情報はこれくらいだな!』

「ありがとう。助かるよ」



 情報が簡潔にまとめて伝えてくれている。

 結構よくできるタイプのお世話係らしい。



『気にするな。主人に尽くすのは、従魔として当然だぜ!』



 そういうものなのか。



『あとは、主人が聞きたがってた、ここの場所は平民街の普通の家だ。お前はここに一人で暮らしている。3人の世話係がたまに出入りしているから、実質一人でいる時間は夜くらいだけどな!世話係は掃除やベッドメイキングをする人、料理を作りにくる人、お世話係の人がくる』

「う、うん」

『まあ、主人がここですべきことは特に何もないぞ。ノート様とエマ様はお前にピッタリの場所を用意したからな!伯爵家の援助と母親の遺産で無駄遣いしなければ一生安泰だし働く必要もないぞ』

「おー!それはいいことを聞いた!」



 神様たちは本当に気を遣ってくれたらしい。



『しばらくは、ゆっくりこの世界に慣れるのがいいぞ!』

「ありがとう。それにしてもよくそれだけの情報分かったね」

『当然だぜ!この5年間、主人が死なないように見張っていたからな』

「5年間も……、本当にありがとう」

『気にするな。こちとら寿命もないからな。

 5年なんて長い人生であっという間だ!』

「う……うん。それでもありがとう」



 その言葉に、ルーカスは目を丸くすると、『お前、結構いい奴だな!気に入ったぜ。ノート様に話を聞いていただけだったが、ついてきて正解だった!』と言って、俺の周りを嬉しそうに、パタパタと飛び周った。



「あはは。そういえばなんで転生成功かどうかとかわかったの?」

『ああ。昨日の夜にノート様から信託があったからな!』



 なるほど。神竜は信託を受け取れるらしい。何はともあれ、しばらくは楽しく過ごせそうである。



 こうして、俺はこの家でのんびり過ごすことにした。

 普通の家と言っても、5LDKに1人というのは俺にとってほとんど屋敷に近いのだが。



「本当にここに一人で住んでいてもいいのだろうか」とルーカスに聞くと、『別に大丈夫だ!いざとなればノート様がなんとかしてくださるはずだからな!』というとても不安な答えが返ってきた。

 やはり、この世界で信用できるのは自分だけらしい。



 ♢ ♢ ♢ ♢ ♢



 そこからしばらく、ルーカスと楽しく遊びながら引きこもって過ごしていたのだが、3日で限界が来た。……主にルーカスのだ。



 最初の方は、『なあなあ、主人ずっとゴロゴロしてるじゃねえか。外に遊びに行かないのか?』と言って俺を心配そうにしていただけだと思ったのだが、2日目、3日目とどんどんソワソワしていった。

 しまいには、『主人を無理矢理にでも外に連れ出す!』と言われたので仕方がなく俺も外に出ることにした。



 世話係さんたちとは顔見知りになったのだが、やはり知らない土地の外に出るとなると色々な準備が必要かなと思う。

 平民街とはいえ、そもそもここの治安のレベルはどれくらいなのかとかわからないからだ。

 もし経済的に貧しい人たちが多い方の平民街だったら、俺1人では危険だろう。



 この3日間の様子を見るに、世話係さんたちは1人で来ているみたいだし、昼間に女性が1人で歩けるくらいには平和だということはわかっている。

 ただ、子供一人で歩くとなると、攫われないかとか我が身ながら心配ではある。



 実際に世話係さんたちから1人で出かけていいかと聞いたのだが、渋い顔をして、「子供1人では危険ですけど、どうしてもと言うことでしたら……」と言う返答をされたので、子供1人では出歩かないのが普通なのだろう。



 その点、ルーカスを送ってくれたノートとエマには感謝している。

 神竜の戦闘力は分からないが、俺よりは全然強いだろう。心強い味方である。



「そういえば、ルーカス。俺がいない間どうやって食事してたの?」

『ああ、狩りをして獲物を取ってきて、丸焼きにして食ってたぞ』



 そう言うと、ルーカスは亜空間から豚人間や、牛人間を出してきた。

 ……結構エグい殺され方をしたやつだ。

 見るだけでも精神的なダメージを負ってしまう。地球では、加工されたお肉しか見ていなかったのだ。

 異世界転生してきた実感が湧いてきた。

 これから、この場所で生きていくのだと。



 それはともかく。



「……!!うげっ。だ、出さなくていいから」

『ん?そうか?って主人、顔色悪いぞ』

「いや、大丈夫。というか、ま、魔物っているんだね。魔物であるルーカスにいうのもどうかと思うけど」

『そういえば、主人が前いたところでは魔物はいなかったんだよな』



 そして、ルーカスは『ふふっ』と笑うと、『そうだぜ!全部俺が倒したんだ!強いだろ!』と自慢げに言った。



 とりあえず、これでルーカスの強さは保証された。今はそれでよしとしよう。魔物のことは考えないで一旦置いとくことにした。



「そういえば、魔物って町中で出たりするの?」

『ああ。たまに出るな。まあ、ほとんど、見回りの衛兵によって討伐されるけどな!』



 ………やっぱり、外出るのやめようかな。

 そんなことを思いながらも、ルーカスに急かされ外に出たリアムであった。



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